集結する仲間
ーー鈴の居る家屋ーー
美優は再び銃を取り辺りを見廻していた。
「私、やっぱり諦めない、ハクの様に生きる為に
考える、真美さんの言う大人には……なりたく
無い」
「それに私には鈴が居る、私が諦めたら、この子
に先は無い、私だけ諦める訳には行かないの、私
の命は今、私だけのもんじゃない」
俯き高鳴る感情を抑え想いを真美に伝えようとす
る、その健気な気持ちは真美を振り向かせた。
「真美さんだって家族を探しに行くから勇気出し
て此処まで来たんでしょ」
真美「……」
鈴の頭を優しく撫でる真美。
真美「まだ生きてるか解らないじゃない……」
美優「解らない、だから?生きてるかも知れない
じゃない、生きてたらどーするのよ」
突然部屋の外から、物音が聞こえてきた。
『ガタ、ガタガタ』
美優が音のする方に向け銃を構えた。
美優「誰っ!!」
男「……」
男「敵じゃ無い、ハクの仲間だ、美優ちゃんに鈴
ちゃん、そして真美さんだね」
タンス等で封鎖したドアの向こうから話しかけて
くる男の声。
真美「どうせ、あいつらよ……名前なんて捕まっ
たハクが自白したに過ぎないわ」
「所詮、人は自分が大事だからね……」
美優「……信用出来ないわ、撃つわよ!此処から
出て行け!」
男「お前ら、ハクが居たらマイナス思考全開だなっ
て毒吐かれるぞ」
美優(?ん……確かにハクなら言いそう)
男「俺の名前は稲森晴、晴れと書いてハルだ、俺
の話を聞け、ハクとは昔からの幼な馴染みなんだ、
アイツ、とぼけた所あんだろで、『人が嫌いで人
が好き』が座右の銘にしてな、笑えるだろ、実は
俺達さ、大学も同じでサークル作ってさ、その集
まりのキッカケがハク以外『人が好きで人が嫌い』
なんだわ、笑えるだろ」
美優「……」
晴「ハクとは真逆だろ、アイツ本当はメンバーの
中でも一番情に厚くてさ、なんせ最後に人が好きっ
て言ってる位だし」
「それにアイツ応用力がハンパなくて、色んなも
ん作ったりアイデアでなんとかしていったろ、俺
らもそれには色々助けられてんだわ」
美優「真由さん、アイツが言ってる事、全部ハク
の特徴と当てはまる、座右の銘も聞いた事がある」
真美「……」
美優「待って、開けるわ」
真美「守りたいモノがあるんでしょ……貴方開け
たら終わりよ……」
美優「守りたいものが……有るから開けるのよ」
真美「……好きにしなさい結果は」
「……同じだから」
美優はドアに手を伸ばす、鍵を開け、ユックリと
ドアノブを回す……しかしドアが開く寸前、その
手を離した。
晴も状況を察し鍵の空いたドアを開けず外で待っ
ていた。
美優「……真美さん」
「貴方が開けて」
真美「いやよ、私は破滅のドアなんか開けたくは
無いわ、貴方が開けて」
美優「いや、貴方が開けるべきだわ……」
真美「そうね、私が開けて捕まって後悔する罪悪
感を私に背負えって言うのね、酷い人ね」
美優「……生きてると信じて、真美さんを心配し、
今でも生きていて欲しいと願うご両親の顔を思い
浮かべて」
「真美さんの命も、真美さんだけのモノじゃない
わ、それに、私も真美さんには生きて欲しい!も
う関わっちゃったから、本当にそう思う、それに
外にいる人が敵だったら……」
「……私が真美さんを守る」
シッカリとした目で真美を見つめる美優。
真美「お父さん……」
「お母さん……」
真美は両親の事を思い浮かべていた。小さい頃、
転んで血を流して帰って心配させた母の事、私が
上京する事に反対した父が母の電話でいつも心配
そうに母に私の状況を 聞こうとしていた事。
何かと諦め癖のついた私を勇気付ける父、そんな
私をいつも見守って味方になって、くれた母の事。
走馬灯の様に溢れるばかりに思い出す、日常にあ
る当然の様にあった当たり前すぎて解らなかった
溢れる愛情……
喧嘩もした、わがままも沢山、言った、それでも
家族はいつの間にか、また思い合う。
真美「……」
鈴の頭を優しく撫でる真美
(この子はまだ少ししか貰ってないのよね親の愛
情……)
ユックリと立ち上がる真美、
フラフラとドアへと近づく、手を伸ばし、ドアの
手をかけユックリとドアノブを回す、しかし途中
で手は止まる……
美優「今度は真美さんが大切なモノを守る番よ」
居るか居ないか解らない両親、だが生きていたら、
諦めた私に助ける事は出来ない。
『助けるには私が生きなきゃ』
最後の一回しを一気に回しドアの扉が開く、眩しく
階段になった窓から雨な筈なのに日差しが入る。
彼女にとってドアを開けた行為は生きる強さと、
前向きなイメージがそう見せたのかもしれない。
美優の目にもドアの向こうが視界に入る。
美優「……」
美優の視界に入ったのは顔を黒く塗った身長180
近い、体躯のいいガッシリとした男の姿だった。
美優「きゃーー!」
思わず銃のトリガーを引く、光線が男の顔の脇を
通り過ぎたのだった。
美優「キャアアー!!」
真美「キャアアー!!」
晴 「キャアアー!!」
3人同時に叫んだ……
雨は真由の行動に呼応するかの様に止んだ。しかし
降ったり止んだりする、天候はこの日は激しく移
り変わる。
誠のバイクに乗り、ハク、誠の2人は鈴達のいる場
所から1キロ離れた場所でバイクを降り、徒歩で向
かうのだった。
視界に入り難い様に、家から家へ中をつたいなが
ら、ゾンビは数体いたものの男2人、そしてハクと
誠の実力もあり、素早い動作で鈴の居る民家近く
まで一気に来る事が出来た。
雨は再び降り始めゾンビが急速に増え始めた頃だ。
倒れていたゾンビも起き上がり始める。
誠「敵が集まって来てるな、ゾンビも数を増やし
ている、こりゃ悠長な事してる暇はねぇな……」
「アイツだ」
指刺す方に1人の男、そして女、2人が双眼鏡片手
に周りを見渡していた。
誠「おい裕太!純衣!」
裕太「おー来たか!ハク久しぶり!」
純衣「ハク!会いたかったよぉぉ!」
抱きつく純衣、
【森裕太】大柄な少しポッチャリ系の力自慢
中学、高校と相撲部に入っていた。
【成川純衣】スタイルのいい女性
ハクが好きなようだった。
運動能力は高い、中学で器械体操、その他
弓道、古武道(薙刀や槍術)日本武術が得意。
誠「おい、晴はどうした?」
裕太「中を攻められたら、どうしようも無いから、
俺が中を守るからって、顔に泥塗って見つからな
い様に裏から回って行ったよ」
ハク(うっマジか気性が激しい美優に撃たれなきゃ
いいんだけど……)
ハク(……ゾンビも増えて来ている)
ハク「この町、詳しいかな?電気屋さんある場所
行きたいんだけど」
悪い顔をするハク。
誠「おっおっ調子出て来たな!この野郎!今来た
道の最後の十字路を東に行った所にあるぜ」
ハク「オッケ、じゃ俺ちょっと行ってくる、後、
1人誰か一緒に来てくんないかな」
純衣「はいはい!私行く!ハクの側にいる!
元気よく手を挙げる純衣、
誠、裕太、ハク「しーっ!」
慌て口を塞ぐ純衣。
純衣「ゴメン……」
ハク「えーと……この人何?」
誠「あははは。まーいーじゃねーか、格闘好きの
棒持った女ゴリラだ」
純衣「殺すぞ、てめ……」
棒を誠の顔につけ凄む純衣。
裕太「まぁまぁ落ち着いて、ハクは何時ものアレ
でしょ、なんか使う道具的な、なら俺が行くよ、
荷物なら沢山持てるよ僕なら」
ハク「うん、多いに越した事はない、じゃ裕太君
ついて来てくれる?」
裕太「裕太でいいよ僕達は仲間だから遠慮なくい
こうよ」
ハク「……有難う」
裕太「……何か大人しくなってるねハク」
誠「まぁ色々あって、まだ記憶も曖昧だからな、
その内昔みたいに人使い荒くなるから俺はこのま
までもいーがな、なんちゃって」
純衣「えー私行きたかったのに……」
誠「ボケ、お前は戦闘の要じゃねーか何かあった
ら突っ込む時、動きの速い、間合いが大きいお前
がいた方がいい、残れボケ!」
純衣「いつか殺す絶対殺す、確実にコロス!
【今日のポイント】
何かに戸惑った時、新しいドアを開けるには
勇気がいるね、しかしドアを開けないと
後ろに振り返った時、今までの作り出した
自分の世界しかないぞ、
開ける勇気は自分の力だけでは開けれない
1人では開けれないなら仲間を作ろう
家族でも友達でも飼ってる犬でも
そして世界は開かれるのだ。




