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誠戦2 絶望への時間



楠が指原を止めクリスに近づく

一歩近づく度にクリスも1歩近づく……

冷たい視線に灼熱の魂と黒い目をしたドス黒い魂

互いが種の違う冷たい視線の中、相手を見つめる、

クリスの射程内に入った瞬間、彼の鍛え上げられた

無駄の無い腕の筋肉から血管が膨張したその時、

それを体ではなく言葉で楠が遮った。


「慌てんなよ、お前もその方が都合が良いだろう?

そこで……一つ提案だ」

動きを止めたクリスが口を開く

クリス「黙れ……虫と会話する程、俺は人間辞めて

るつもりは無ぇ」

殺気に怒りが爆発寸前のクリスは落ち着かない様子

肩を小刻みに揺らしながらリズムを取り獲物を狩る

野生動物のように襲いかかりそうな雰囲気である。

楠「なら来いや」(少しガス抜きさせてからかにす

するか……)

クリス「あーそうするさ!」


凄まじく槍の様に鋭く伸びる前蹴りを楠はワザと

大袈裟に後方へと大きくジャンプしながら避けた、

正面切って戦おうとしない敵の攻撃は当たりにくい

フットワークを避けるべく使う戦法に変えた楠は

クリスの周りを練り歩くように会話を続けた。


「体調が悪いんだろう?」

クリス「……何の事だ」

クリスはハッとした表情で純衣達の方を見た。

純衣は誠が気にした事に責任を感じ、懸命に気丈に

振る舞う姿をしていたが仲間や戦闘経験が豊富な者

には隠しきれなはしない、その状況に妙に納得した

クリスだった。


クリス「……おかしいと思ったぜ」

楠「何がだ」

俯き腹を抑え笑うクリス

クリス「ハハハ納得だ!だってそうだろ?誠が、お

前らみたいなクソ虫野郎に良い様にやられる誠じゃ

ねぇよ」表情は変わり冷徹な目で楠を見た。

「筈は無ぇ……」

楠「酷い言われ様だな、言っとくが奥の手は最後

まで取っとくもんだ、俺はまだ実力を出しちゃい

ねぇぜ」


間を見極めクリスの背後に陣取った指原が後方から

勢いをつけ殴りかかる、だがクリスもまた華麗に、

攻撃を避けるのだった、だが彼等とは一味違う、

得意技の一つ、交差法により攻撃した指原の頬に

剃刀の様な鋭い肘が指原の頬をかすめ捉えていた。

「もはや、避けるのすらも勿体ねぇ」


尚も指原と2人で執拗に囲み、前後で対峙する、

楠「指原、まだ殺りあうな、話は終わって無ぇ」

ジロジロとクリスの体を見た楠は語りかける、

「相当鍛えたようだな、肩から胸にかかるアザか、

お前、本職は狙撃手って所か……」

クリス「……それを日本人が知ってると言う事は

実践経験がある奴か、大方、海外での特殊部隊」

楠「まぁそんな所だ、で敢えて助言だ時計を見ろ、

今は3時半だ、途中参加ぽいから説明してやるよ、

近く台風が来る予想がある事から試合が早く済めば

第二試合はこの後すぐ行われることになっている、

まぁ極端に進路がコロコロ変わるみたいだから

来るかどうかも怪しいけどな、

故の早期決着の為の抽選ありきの祭りとなった」


クリス(そう言うことか……)

楠「時間の制限は午後4時、1秒でも過ぎれば試合は

明日に持ち越される」

クリス「何故、俺に教える、このまま俺が知らずに

虫ケラを倒せば次の試合は結果的に、お前達の陣営

が有利に事が進む筈」

楠「次の試合なんかどうでもいのさ……

勘違いすんな、俺達は所詮、雇われだ、自分の報酬

それが全てであり、それが最優先だ、ここで良い

所見せた方が利は高いって事だ」


そう言うと顎で東のコーナーの方を見させる、

そこに、いつから居たのか隠密が何やら手に小瓶を

持っていた。

クリス「成る程な……クソが考える保身か」

楠「って訳だ、俺も忙しかったからな、隠密部隊か

ら報告を受けたのが指原だったからな、ついさっき

知った訳だ、でだ……

「虎」が仕込んだ薬もわかった、大方、予想はつい

てるだろうが30分、お前には俺達の玩具、肉の

サンドバッグにでもなって貰おうかと思ってる訳だ

断れば解毒剤は無し、受ければ薬に相棒への暴行も

無しだ、まとめてお前が全てを背負い受け止めろ、

クリス「お前らを倒しそして解毒剤を奪う」

楠は外人がよくする両掌を返すアクションをした。


楠「馬鹿か?お前、冷静になれ、お前は狙撃手だろ

周りをちゃんと見て、状況を把握し立ち回る、

狙撃手の基本だろうが……」


クリスもそれは考えていた、

だが、いくら腕が上がらない状況であったとしても

誠がそう簡単に殺られる訳は無い、一旦リング側に

いる隠密から薬を奪い純衣に投げる手もある、

ましてこれは一応試合形式であり、一撃で人間を

始末する方法など首を折るか刃物でも無い限り……


指原の方を見ると服に仕込んだ小さな投げナイフの

光が見えた、

クリス「テメェら……」

楠「理解したか?無論、俺も所持してるぜ、だが

幾ら俺らだってバレちゃマズイからな、だが動脈を

切ればイチコロだ、それにお前はスーパーマンでも

なったつもりじゃ無ぇよな?あ?離れた2人を同時

に相手には出来まいて」


クリス「見た目通り薄汚ねぇ野郎だ……」

楠「だから最後まで話を聞けって言ったろ?」

クリス「それが、お前の戦い方、つまり奥の手か、

だが、その薬が本物かどうかどう証明する? 次の

試合の為に更に毒を盛る可能性も否定出来ない」


楠「疑り深いねぇ……さすが傭兵って所か、敵、

味方、どれが味方なのか傭兵出身のお前にとっちゃ

それが当たり前か、疑り深いのも無理は無ぇな、

だがな証明する必要も無ぇ、お前は受けるしか手が

無い、だが特別だ、迷いの中、トチ狂われてもいけ

ねぇからな、渡すメリットは此方もあるから信用し

な、仮にだ、黒田が負ければ俺は次期幹部だ、だが

俺がこの試合負けたら降格もあり得る、何方にしろ

この試合は落とせないどの選択も俺にはメリットが

ある、人間は得になる動機に嘘は無ぇ、だろ?」


クリス「欲張るとろくな事は無ぇぞ」

楠「欲張るさ、その為に生きてる」

クリス「……約束は守れ」

楠「当然だ」


殺気が消えたクリス、楠が頷くと指原が動いた、

クリスは防御に徹っしガードを深めにするが2人の

猛追に到底、捌き切れる訳も無く誠と同じく、

まるでオモチャのように痛ぶられ始めたのだった。


裕太「何かおかしい……急に形勢が逆になるなんて、

小声で会話してた様に見えたけど、それが原因か」

純衣「……」


楠「ひゃっはは!弱ぇ弱ぇ!いいか言葉ってのは、

こういう風に使うもんだ!」

相葉を指差し、舌を出しながら得意げな顔で罵る、

殴る蹴るのリンチと言う名の惨劇が再び始まった。


口が切れ、白い顔のクリスの顔がみるみる赤く

染まり始めた、指原が倒れるクリスの肩の手をやり

地面へと押し付けた瞬間、嫌な音が辺りに響いた。

『ゴキ!』

腕を抑え藻搔き、リングの上をのたうち回るクリス


指原「おいおい、倒れるの早くねーか?」

楠「こんなんじゃボスへのアピールが出来ねぇじゃ

ねぇか、よし!やる気が出るように、とびっきりの

呪文をかけてやろう」

クリス「……クソが」

楠「お前が膝を着く、倒れる度に俺はお前の相棒に

近づく、到着したら俺が奴をボコる担当だ、

どうだ!気を失ってる奴は防御出来ない、その状態

で暴行を受ければ……」


言った側から楠が立ち上がるとクリスの元を離れ誠

の方へと静かに歩き出した。

クリス「テメェ!話が違うじゃねぇか!」

楠「なら立てや?」

フラフラになりながら腕を抑え立ち上がった、楠が

頷くとまたも指原が殴りつける、今度は執拗に足を

中心に狙いをつける、幾度となく膝を着きそうにな

ると楠が一歩、誠に近づこうとする、それを止める

為、震える体を全身の魂で抑え立ち上がらせた……


だが5分もすると指原はニタリと笑い、わざと倒れ

るように飛び蹴りを放つと体重の乗った足技に大き

く吹き飛びそして倒れた……


楠「はい残念」

クリス「や……やめてくれ!」

這いずりながらも肩を抑えた手を床につけ片足が

動かない状態で誠が横たわるリングのコーナーへ辿

り着く姿を堪能するかのように満足そうな表情で笑

う楠だった、

楠「おい、見ろ! まるで足をもがれたバッタだ

ギャハハ! 虫はお前だろうがヒヒヒ、腹痛ぇ」


クリス「誠……待ってろ、今行く、守ってやる、必

ず、お前が守った全てを今度は俺が……俺が」

コーナーで地べたに座し、意識のない誠の体を全身

でその身を盾に庇うかのように血で滑る手でロープ

に両手を大きく拡げ、握りしめた、その無防備な背

を敵に向けたままで……


楠「ほぉ、まだ守るか……軍に居た割に甘ぇ、なら

何処まで耐えれる試そうじゃねぇか!」

クリスの背後から静かに耳打ちする様に囁いた。


楠「オラオラ!」

クリス「グッ!」

暴行中も囁きを辞めない楠

「お前が倒れた時、お前の友はこの世から消える、

目が覚めた時、お前はコイツを守れなかった事を

一生後悔しながら生きていけ、そして目を覚ませ、

甘い考えじゃ、この世は生きて行けない事をな」


「ハクは……その理想を現実に変えてきた、こんな

俺を目覚めさせてくれた、何が現実だ……理想は夢か

違う、叶うための目標だ、それが無くては未来は、

未来に何が残る!ハク……お前が望む未来が」

クリスは意識がいつ飛んでもおかしく無い状態で気

を失う事も許されず懸命に耐えた、肋骨はヒビが入

り片腕は動かない状態のまま、痛めた関節と足を

中心に容赦ない打撃が加わる、不敵に笑うクリスが

意識の無い誠を凝視し続けた……


クリス「大丈夫だ……相棒、守るぞ、友だからな……

もし俺が倒れても、この世界にはハク達や、お前が

居る腐った世界で……生きてて良かったと、お前達

が居るこの世界にいられ、触れる事が出来ただけで

俺は……」


指原「しつけーな倒れやがれ!」

楠「諦めが悪ぃな!その分お前は苦しみ、戦いが終

わった後も後遺症に悩まされ、本当に終わりだ」

クリス「そんな事より、お前が生きてる方が……」

頭を殴られ白目を剥くクリスだった、だが瞬時に燃

えるような目が強烈な光を放ち、この世界に戻る。

クリス「俺は、俺は……嬉しい」


クリスの耳から殴られる音が遠ざかって行く、

まるでステレオの音が小さくイヤホンから聞こえて

くる音に感じるように徐々に小さく……


相葉も俯いたまま動か無い、誠達から目を逸らせ、

拳を握りながらも見当違いの方向をひたすら見つめ

ていた。いつしか騒いでいた勝木達も会場から姿を

消していた……


勝木「おい急げ!これが役に立つかどうかは時間が

それを決めるんだ!俺達がやれる事はこんな事しか

出来無ぇ、だがやらずにはいられ無ぇ、やるんなら

何としてもやり遂げるんだ」

植木「間に合うわきゃ無ぇ!」

大崎「無駄な努力になるから、ヤラない、それでも

やらなきゃ何も始まらねぇだろうが」

江頭「俺らも変わるんだ、人任せに生きるのは本当

は辛かった筈だ、お前達も、だから今ココで足掻い

てんだろうが!」

勝木「ギャンブルも賭けなきゃ始まらねぇ、金だけ

じゃない人生もギャンブルだ、だがこのギャンブル

は負けようが俺達の先の未来に投資する事に繋がる

筈だ!だが勝負時、この時に全力ださネェで勝ちは

ない、価値も無ぇ」

江頭「株とか投資信託みたいだな」

江頭「んな事言ってる場合か!手を動かせ」

確定は揺るぎ一つ一つが今繋がろうとしている……

だがそれでも現実はそれを拒むかの様に時計の針は

進む……早くても駄目、遅くてもダメ、時の間で、

運命は彼らに苦しみと絶望と言う結論に向け、今も

尚それに向け修復していく……


ーー会場ーー


執拗な攻撃の中、観客の1人が酒瓶を楠に向けて投

げる、明らかに、それを意図して渡すかのような緩

い軌道を辿り、リングへと到達、楠は瓶を拾いあげ

るとコーナーである丸太にそれを打ち付ける、瓶は

割れ剥き出しになった切れ味鋭どい先をクリスの

背後から首を狙い腕を振り上げた。


その姿を目にした裕太と純衣が同時に立ち上がった

2人がリングに同時に上がろうとする、その時。

司会「手を掛ければ反則で終わりですよ」

純衣「知るか!」

裕太「知るか!」

2人は同時にロープを掴む寸前の所で、その動きは

ピタリと止まった。



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