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仲間


監禁されてしばらくが経った。元々、いい加減な

集団が集まった事もあり、見張りは部屋の中を見

る事は無かった。


5階という事もあり出口は一つ、無駄にドアを開け

ない事が脱走出来ない工夫でもあったからだ。


ドアに耳をあて様子を伺う、大音量で音楽を聴き

酒を飲んでる様だった、銃の所持は解らないが油

断は出来ない、建物内はゾンビに対しても安全、

さらに人質は部屋の中、通過しなければならない

隣の部屋には6名。


油断するわけだ。

いや、そもそも油断では無い位にちゃんとしてる

とも言える。


時間が経つ……旧型の簡易鍵に落ちていたOLがよ

く使う様な安全ピンを拾う、開け方は説明しない

が、開けようと思えば開く。


慣れない作業に戸惑うハク……

彼の脳裏に顔のボヤけた人物が思い浮ばせる

(こんな時、彼奴がいたら)


1人事の様に呟く自分にも驚いたが今は時間が無い、

手を動かす。

「カチャ……」

(開いた……)

(声の違いが、1、2、計6人か……)

(1人じゃ無理だな……)


ドアの鍵は開いたがドアを開けず悩む、武器にな

りそうな物を倉庫から探す。使えそうな物は……


厚みのある本一冊

ほぼ空のリッュク

後は散乱する固そうな細かいゴミ


「……」

腕に紙をくしゃくしゃして入れた、そしてそれを

固定するように紐でリッュクを左手に巻きつける。


本は右手にシッカリと持つ、ドアの隙間からタイ

ミングを図るがななかな無い、するとトランシー

バが鳴り、男が出た。

「こちらアジト、問題は無い、其方はどうだ見つ

かったか?」


「ガー……」

聞き耳をたてるハクに緊張が走る。


トランシーバーから聞こえる声は剛田だった、捕

まる時も尋問の時も、女に執着心がある男性、性

格は猪突猛進タイプ、現状を把握せず、感情が先

に来るタイプだと判断していた。


「あー大体、目星は付いた、辺りの見張りに連絡

して5名揃ってから2班で攻め込む予定だ、今その

家の前に居る」


「リーダーには連絡はしたが反対側に居るゾンビ

駆除に今、忙しいみたいだから俺達で入るわ、銃

もあるし、5人いれば余裕っしょ」


仲間「おい、確かリーダーは待てと言わなかった

か?」


剛田「言ってたケド、物資や獲物は毎回リーダー

に取られるから待ってたら、また無くなるぜ?帰っ

たらオメーらにも少し分けてやるから黙ってろよ

な、それに女がいるんだろ、リーダーだけいつも

美味しい目に合うのは割があわねぇ」


仲間「……わかった、リーダーが来たら向こうが

外に出ようとしたから、仕掛けたと言っておけよ」


剛田「恩にきるぜ、お土産はちゃんと持ってくか

ら、上手く、つじつま話しといてくれ」


会話を聞いたハクは激昂し、ドアを勢い良く蹴り

開け、すぐさま、一番近くに居た男の顔面を狙い

本の角を渾身の力で突き当てた。


「うぎゃ!」

1人目を後ろから殴り倒す、手には小銭を握り締め

パンチに重さを乗せる、布で巻いた手は殴る事に

よる歯等から拳を守る為だ、後のゾンビ戦も踏ま

えての準備だった。


中に居た1人がバットでハクを襲う、防護クッショ

ンにしたリュックで、バットの攻撃を受け、敵の

腹目掛け、蹴りを喰らわす、悶絶し腹を抱えて倒

れ込む男のバットをリュック越しに受けたが衝撃

はゼロとはいかず腕が猛烈に痺れる。


がーー瞬間、彼の目に入るこの中にいる統括する

者を判断し、飛びかかるも2人の男がハクの背後か

ら背中向けて攻撃、呼吸が出来ず統括らしき男を

掴もうとするも寸前で倒れうずくまるしか出来な

くなった……


統括らしき男「てめー何してくれてんだ!」

顔を赤らめ、手の持ったゴルフクラブをハクの頭

上に振りかざし言った、

統括の男「ほな、さいなら」


振り下ろされたゴルフクラブがスローモーション

の様にハクの目に映る。


頭上からユックリとクラブヘッドが空気を切り裂

く様に見え、あぁ……当たると思った、しかしゴ

ルフヘッドはハクの頭上から顔面の横を通り過ぎ、

鈍い音をたてながら床へと落ちていった……


ハクのスローモーションは続き、敵ボスが倒れ込

む背後から男の姿が見えた、そして思いもしない

言葉を聞く。


男「おう!久しぶりだな!ハク」

ハク「……」


男「おいおい……話は聞いてたが本当かよ記憶喪

失って」

ハク「……」


男「俺だよ俺、てめー忘れるとはどーゆーこった!

新木誠だよ!お前の友人で、青葉大『サバイバル

サークル』のメンバーの1人だよ!」


ハク「サバイバルサークル……」

誠「まぁ話は後だ、おう、オメーら俺の仲間にし

た仕打ち、2倍所じゃ済まねーからな!おいハク!

起きろ、っても1人じゃ無理だ、オメーも参加しろ」

ハク「わかった……」


敵「1人増えた所で問題はねぇぞ!銃も持って無い

ようだ、刃物も無い、獲物はバットだけだ!かか

れ!」


誠「来たぜ……」

2人は敵を倒していく、妙に息が合う感じでのコン

ビネーションは隙が無い。


敵「こいつら……強い」

誠「たりめーだろ!こっちはいつも体はって生き

てんだ、うだうだ強盗しかできねーおまえらとは、

よっとっ」

バットを余裕で避ける誠、

「基本性能が違うんだよ!なっハク」


ハク「今は感謝するが僕はまだ君を信じちゃいな

いよ……」

同じくバットを避け、敵の顔面に拳を当てた。


誠「んな事はどーでもいいんだよ、信じようが信

じまいが、お前は俺の仲間だ、仲間が危険な時な

ら、お前がどう思おーが俺は助ける、そういつで

もだ、俺の仲間はお前含め皆んな同じだからな」


会話する誠の背後から敵が襲う、拳を固めたハク

が誠の顔面目掛け正拳を放つと誠はしゃがみ込む、

拳は敵顔面を捉え、鼻血を吹き出し手からバット

が離れ敵がユックリと倒れ込むのだった。


今度はハク目掛け横からバットが襲う、ハクは避

けれない、しかし空中に浮いたハクが倒した敵の

そのバットを誠が空中で握り、そのままハク目掛

け襲うバットに当て攻撃を防いだ。


(この感じ何だ……懐かしい感じ、それに彼の行

動が読める、いや読める所か、シンクロする)


誠「懐かしいなぁ……」

ハク(確かに……感覚が覚えてる、懐かしい感じだ)


男の1人が立ち上がる

男「糞が……だがそこまでだ!」


銃を懐から出そうとした瞬間、ハクと誠は銃を出

す仕草をする男目掛け、バットを顔面に両サイド

から振り上げた、男の顔寸前でバットを止める2人


バット風圧が男の髪を後ろになびかせる。


男「……」

男は手を上げ、降参する姿勢を見せた。


ハクがユックリと男の懐に忍ばせた銃を奪う。

男「今は降参しといてやるよ、だがな、女が手に

入ればこっちのもんだ、人質取られたらぁ、そん

な態度俺達に出来るのかなぁ?」


「しかも時間の問題だぜ?ああー!聞いてんのか

ワレら!」

誠「あぁ?人質だ?てめーくさってんな」

男「どうせ、おいお前、ハクって言ったか

銃を撃つ勇気もねーんだろが!今、折れといた方

が身の為だぜ?」


誠「馬鹿が……言っちまったよ」

天を見上げ手で顔を隠すような仕草をする誠、


ユックリと銃を男に向けるハク……

「あー!ビビリが!撃てるもんなら撃ってみろよ!

必ず後悔させてやるぜ!俺達に何かあっても浅井

はお前らを生かしちゃおかねーからな!」


「そして女は俺達のもんだ!アヒャヒャ!」

「甘ちゃんが!手が震えて引き金引けね……あれ?

震えてな……」


ハクは容赦なく男の左足に発砲した。

男「いてあぇ!う、撃ちやが……」

『パン!』

言い終える前に今度は無言で右足に発砲するハク、


男「ひっ!いてぇえ!!」

誠「お前ハクの事、勘違いしてっけどよ……

コイツ、敵には容赦しないからな、限度を越えた

糞には特にな」


ハク「敵の場所と配置、何でも知ってる事を

話せ、そして協力してもらう……」

誠「おおー怖ぇ、顔が怖いぞハク」

ハク「……」

返事が無い……手に向け男に発砲するハク、

男「あぎゃ!わ、わわかった!何でも協力する、

するからもう許してくれ」


誠「もういいだろハク、ここまでにしとけ、お前

の事だ、此処に医者がいるから発砲したんだろう

が、出血がヤバくなるからな」


ハク「動脈は避けた……」

誠「怖っ」

こうして敵は見事、全員のされた。


立ち会う2人……

ハク「……まだ俺は信用してない」

誠「だから言ったろ、されよーがされまいが

俺の中では、お前は仲間だ、嫌がろうが、

なにされようが、お前は俺達が助ける、

かつて、お前がそうした様にな」


指でハクの胸を突つく誠

ハク「……」

誠「信用できねーなら銃で俺を撃て、俺が敵なら

今、殺っとくのが得策ってもんだろ」


ハクの持つ銃を誠は自分の額に押し当てた。

誠「お前が撃っても俺はお前を恨むなんて事はねー

ぜ、安心して撃て」


ハク「……」

誠「だが、おめぇは撃てねぇ……」

男「やめとけ!さっきのコイツ見ただろ!コイツ

見た目と違って平気で人を撃つぞ」


誠「オメーわかってねーな、コイツは撃たねーよ、

本当の仲間ってのはそーゆーもんだし、仮に撃た

れても俺はいいからな、記憶なんて俗っぽいもん

より、こーゆー奴は態度で示すんだよ!」


「なぁハク」


ハク「……」

ユックリと銃を下ろすハクが居た。

「君は撃ちたく無い、確かに、そして僕も君に撃

たれても恨む気が起こらない……」


辺りを見回す誠「しっかしオメェらしくねーな、

何、焦ってんだ……あれだろ女達が心配なんだな」


誠の胸グラを掴むハク、

「なんで知ってる!」

誠「たく、助けに来たっつたろーが、今頃、仲間

が彼奴ら助けに行ってるよ、現状から見て、お前

らしくねーぞ」

胸ぐらを振り解きハクの頬を鷲掴みする誠、


「いいか、お前はのんびり過ぎる位がベストだ、

何を焦ったかはわからんが、お前は……」


    『お前らしく居ろ!』


「そんなお前だから俺達は集まった、恩返しじゃ

ねーぞ!んな安っぽいもんじゃねぇ、俺達は来た

いから来た、そして何度でも来る、そして、それ

は、お前もしてきたことだ」


ハクは訳も解らずに涙が出た。

訳わからない状態に鈴達の安全の確率も上がった

安堵なのか、こいつへの懐かしさからか、言葉に

心が答えたのかハク自信にもわからなかった。だ

が彼の言葉はハクの心に素直に受け入れられた、

誠の手がハクの頬を更に強く握る。


ハク「痛ふぁいぃ……」

誠「はい!ボーとする!!」


ハクの顔がみるみる穏やかになっていく……

ハク「君を信じるよ、うん何故かめちゃめちゃ信

じれる」


何故か素直になれる自分がいた……


誠「まぁ話はここ迄だ、お前が守るもんの所まで

急ぐぞ!見張りは俺と明で、ふん縛ってある、下

にバイク停めてあっから急ぐぞ」


【今日のポイント】


生きてきた証は後になって現れる事もある。

誰かになにかしようとする時、見返りを

求める事は自分の為、見返りのない行動は

人の心を動かす。


予期せぬ見返りがなくても、それは自分が

したかったからする行為であって、見返りを

求めた時点でそれは自分の為だけの結果と

なる。


本当の絆は言葉では無く、行動で示される

モノである。


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