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傍観者



レイダー達が項垂れるヒロを2人がかりで起こすと

一際いかつい男がヒロの顎に手を当て顔を近づける

余りに鋭い眼光と威圧感に本能なのか身をすくめる

怯える姿を見て一層声を荒げる男だった。


いかついレイダーは赤の衣装を纏い

他も白い衣装を身に纏い

大きい男は緑、他2人も緑の衣装で

腕には鬼の紋章が見えた。

いずれも不気味な片面だけが顔を露出する

仮面を被っていた……


レイダー「おい……あの紋章ボスの直属部隊の

証だよな……」

レイダー「この作戦に混じってたのか、

裏切り行為防止に重要な作戦の前は談合を防ぐ為

ミッション開始直前までメンバーは解らないのは

今までと同じだ、今まで直属部隊は影で動き

正体は明かされなかったからな、

俺も初めて見たが」


レイダー赤「どうした、どうした、どうした!

元気がぇなぁあ!惨めに諦めたか?

諦めるんなら最初から抵抗するんじゃねぇよ、

あのな、鼻っからお前みたいな弱い人間は

強い人間様に虐げられるのが定めだと思うだろ

世の中を見ろ、金のある者に人は群がり、

食べ物が無い場所では食い物を持つものが

支配権を持つ、上に逆らえばお前の

たった一つしかない命をこうして無駄にしてしまう

お前はそれにハイエナの様に付き纏い、

また自分より弱い存在の隙を、心の弱さを突き

漬け込み奪う勇気すらない中途半端な存在だ

今此処でしっかり弱者の気持ちと謙虚さを学べ」


外野レイダー達「ヒャハハ正論だ!無駄な事をする

人間は正義という幻に現実を見失っまうからな

後でこうやって後悔してもお前の言う正義感が

全てを悪くしていくんだ」


レイダー緑「……お前はいじめられっ子でも無い

いじめっ子でも無い、その中途半端な位置に

居る奴、悪い事と理解しながら見過ごし、

常に自分の保身を一番に考えてしまう、

痛みによる傷は無い、そして自分に嘘を吐き

誤魔化し楽な方法を取る、ある意味全てに

おいての堕落者であり傍観者、

挙句、自分で悩み、自分で苦しみ、

良き人であろうとする自己から未だ抜けれない

適応しようとしてない

愚かと言わざるをえない……」


確信をつく言葉に心の葛藤が今、心を裸にされた

気がした……


レイダー白「子供が攫われたって、

お前には関係が無いし、何で喋らないかな……

そのガキ、別に血縁って訳でもないのに

痛い目にわざわざ遭ってな、ご苦労さん

滑稽だね、アンタが命を賭けて今守ったつもりでも

何にも守れてないのにねぇ

それに万が一、此処から生き残れたとしてもだ、

このガキ共達の記憶何て、ほんの一年もすりゃさ、

お前の記憶は薄れ、簡単に消えちゃうよ?

そんなありふれた存在じゃないか?

まぁ今度同じ事があったら今まで通り

ほったらかして、自分の事だけ考えて生きてきゃ

……あ、でも次もう無いか」


外野レイダー達「ヒャハハひでぇな、

期待持たせて上げてから落とすんかよ

この場で終わりなんだからよ、もう少し優しく

してやってもいいんじゃないか、ククク、

いや待てよ、地獄があるとすりゃ

向こうで役に立つかもな」


何も出来てない自分に彼等の言う通り

忘れ去られる事柄に一つしかない命をかける

意味があるのか……疑問が沸々と湧いてきていた

が……反発する何かが胸をざわつかせてもいた。


レイダーC「話は此処までだ、まずは歯を抜いて

耳を削ぐ、そして指の爪を剥がした後は、

顔の皮を剥いで行く、冷たい風が剥がれた皮膚に

当たりそりゃ逆に火傷のように痛いぜ?

気絶すらささねぇ、水ぶっかけて直ぐに起こして

永遠に思える苦痛をさせてやる」


ヒロの顔は青ざめた……これから起こる惨劇

辺りを囲まれ増えるレイダー達、既にクリス1人が

ここに来れたとて、この人数では現状を

打破することは叶わない絶望感……孤独

泣き叫ぶ子供達の顔が目に入る……


子供「ごめんなさいごめんなさい!」

泣き叫ぶ声に彼等は悪くないと……

謝りたいのは出しゃばっての、このザマな僕だ……

ありきたりな人生を振り返る余裕もなく責め立てる

彼等に刺し違える覚悟も無く、

右腰に隠し持ったナイフだけが静かに冷たく

皮膚にその感触を残す。

それでも時折来る覚悟と言うべき決心も

勇気も未だ怒号が飛ぶ声がする度に

それを壊し脳は言い訳と逃げ道を探す……


レイダー達「甘やかされて育ったボンボンて所か、

情けねぇ、お前の親も似たような

もんなんだろな!」

その言葉に逃げていた意識が戻る……


ヒロ「親は関係ない、言うな……」

無意識だった、ただ怖かった……

けど僕の口からは自然と声が……

出た……

レイダー「あん?なんだなんだ?」


ウチの親は世間じゃ全く普通だ、厳密に言えば

立派だったと言う表現は当てはまらないのかも

知れないが、世間の尺度なんてどうでも良い

僕にとっては立派、その共有した時間に

詰め込まれた沢山の思い出も、ありきたりな

毎日のご飯も僕の心や体を大きくしてくれたのは

間違いなく親だ……

限られた生きる時間の中で、自分の世話に

一体どれだけの時間や労力、気持ちをくれたろう

特別偉いわけでも無いし経済的にも貧乏って訳でも

なきゃ金持ちとは言え無い、

そして特別親の仲の良い夫婦って訳でもない……

喧嘩は頻繁だし、それでも僕の思い出の中で

育った家族への愛情は最大限と言っていい

これは言葉では言いようもない感覚だ

多くの家族はそうであろう、子供を真ん中に

別れず繋がっていられるのは……


今まではそれが悲しくもあった……

だけどそれでも繋がってる事が嬉しかった。

子供の僕にはわからない事なのかも知れない

そうやって真ん中に伝達するように愛があるのかも

知れない、都合のいい風に考えすぎかな……


僕にとっては家族に危険が及んだ時に

真っ先に脳ではなく本能で助けられる自信が

あるとすればそれはやはり家族だ、

これだけははっきり言える……

僕の家族も言葉や態度、関係性に隠れる

本心や行動はそうなのかも知れない。


頭が交錯する……

いろんな思いが胸の中の血管を脈打ち

心を動かしていく

言葉じゃない

感じる心が話のにまとまりのない感情を

言葉に乗せて溢れ出して来ていた……


同時に参観日に来てくれた両親

公園でキャッチボールをした父親

幼き日に抱きしめられ安心を覚えた僕だけの

絶対的な安心する母の胸……

戻れるものなら戻りたいあの日の大切な

ありふれた日常が胸に溢れこぼれていく。


大抵の子供は幼い日心の何処かに薄ら覚えてる

自分への愛情……大人になっても感じる無限の愛


「僕に……残された感情」


今この環境下で僕は思い出した……

親への冒涜はその思い出を汚されてる気がした。

それは同時に戻れ無い過去、そして幼い自分にもだ

今は何も自信がない僕……だけどあの頃の僕は

家族に守られ、気づけば近隣の大人にも守られてた

1人の人生を否定する……

だがそこには繋がったいろんな想いと愛情を否定


「……否定?」


僕は思わず独り言を呟いた……


「僕は僕を否定……あの頃の僕に?両親の愛情に?

それだけ絵じゃない、迷惑かけてしまった人達に?

全ての思い出が?」


僕は幼い頃……電車で居合わせた柄の悪い大人に

合った……側には母親がいた

小さい頃、力なき助ける事なんておこがましい

勝てない大人に敵意を向いていた。

そこに脳で考える計算は無かった

だとしても僕は母親を守ることしか考えて無かった


体をジロジロ見ていた白レイダーが体に負った

傷口をジロジロ見ると笑みを浮かべ懐から瓶を

取り出すと僕の目の前に持って言った。


白レイダー「いい傷があるじゃないか、

これはな……ふふふ、あれだ、塩水だ

楽しいなぁ、痛いか?痛いか?」

そう言うと傷口にそれを塗り込んでいく

痛みが針のように感じ……体をのけぞらせるが

それすら抑えられ叶わない、

慣れなのか既に感覚が無くなってきてる……


更にそれで濡らした布を僕の口に放り込むと

髪の毛を掴み激しく上下に振るのだった。


「ケホッ!ゴホゲホ!」


どうせ此処で終わりなら……辺りを見渡し

心で最後を覚悟し始めた……

交錯する『現状』と『想い』

理屈では無い断片なる思い

彼の中で小さな無数の数の相反する

感情がぶつかり合って行く


親……僕はこんなちっぽけな存在だけど

親を愚弄したことだけは許さない……

ふと思った、僕がここで無様な逝き方をすれば

それこそ僕自身が両親をも愚弄する事になる?

子供の頃、そう言えば本当に怒って喧嘩した時

その発端は親を馬鹿にされた時だった……

小さい頃のそんな自分を思い出した。


外野レイダー「こいつブツブツ何言ってるかと

思えば親?ギャハハ何言ってんだ、

そういやガキの頃地味な奴ほど、親を馬鹿にされて

突っかかってきやがった奴がいたな

そんな貧弱な身体で産んだ両親を恨むんだな

俺達は恵まれた体型だったからな、わかるか?

生まれ持って勝ち組なんだよ」


(親のせい……?)


小さな、忘れかけていたような誰もが一生のうちに

思い出すかもわから無いような新たな

繋がりの無い小さな、でも大きな想いが今、

彼の中で大きく騒めきと共に心に響き……

そして細胞が繋がるように心の中で

一つ一つが繋がっていく……


そしてそれは少しずつ大きくなり、その実態は

嘘紛れもない感情の正体というべきか

自身の本当の気持ちと譲れ無い感情

子供の時に体型さ等関係なく体の大きい者にも

立ち向かったあの日、真っ直ぐに正しい事を

する事に恥じなかったあの日、

いや反対もあった、自己のわがままから人を傷つけ

だがそこに力の優劣などの概念は無かった。

そしてそれは譲れないものの為に行動した時

絶対に引かなかった……


ただ忘れていたーー


いつから僕は……


いつから人はそう言った気持ちを忘れ、感じ、

言葉にするにも恥と感じるようになったのだろう

大切な感情、そうして想いは薄れやがて心の

奥底に沈んでしまう……


反する気持ちが胸から言葉になって行く

「だが消えた訳ではない……」


白いレイダーは倒れるヒロの朦朧とした意識の

独り言をわざと手を耳のそばに置きニタニタと

聞いていた……


レイダー白「お前は親を馬鹿にされて怒る方か?

なるほど、弱っちいお前がとち狂って

俺らに逆らって地面這いつくばってる姿を見たら

産んだ事も後悔するだろうなぁ

幼き日の自分に今はこうなんだって

タイムマシンがあったら言ってやりな

幼き日の僕よ、僕の将来に期待しないで、

僕はこんな立派に色んなことに忖度で

生きる人間になりましたってな

生きていてすいませんってな」


全身に電気が走った……もはや心で感じている

恐怖なのかすらわから無い。

手が震える、身も震える……


横から見ていたレイダーが割り込みヒロの顔を

おもむろに殴った、赤レイダーが持ったヒロの襟が

グンと伸びるもその手はヒロをしっかりと握り

倒れる事すら許されはしなかった。

だが赤レイダーの蹴りが同時に割り込んだ仲間の

腹に抉り込むように放たれソイツは倒れた。


赤レイダー「でしゃばるんじゃねぇ!」


ヒロの意識は殴られた事により意識が飛んだが

赤レイダーがヒロを再びグイっと自分の方へと

引き寄せるとおもむろにボディに拳をめり込ませる

「オエ!ゲホゲホ!」

ヒロは胃液を嘔吐し悶絶、意識を取り戻し

再び体は地面へと横たわり踠き這いつくばった。


ヒロ「オエ……」

地面の埃の匂いが鼻につく……

胃液が舌に残り酸っぱい味がした。

強烈な拳に意識は逆にハッキリした

歪んだ景色に下から見る光景は新鮮さと

懐かしさをを感じた。


外野レイダー「もういいだろうが時間がねぇんだ、

試合も始まるしよ、さっさと終わらそうぜ」

1人が斧を持って這いつくばるヒロに

向かい頭をかち割ろうとするも赤いレイダーが

それを受け止めるとソイツに頭突きを喰らわした。

レイダー「テメェ!調子にのんなよ!何しがる」

赤レイダー「お前達こそ人の獲物に

さっきからチョコチョコ何さらしてんだ?」


そう言うと再び強烈な頭突きを仲間に喰らわせると

受けたレイダーの巨体は大きく揺らいだ後、

地面に倒れ蟹のように泡を口から噴いていた。


レイダー「な、なぁ、あいつ絶対薬やってんな……

時間は無いが逆らうと面倒だな」

緑レイダー「そこのお前……何か文句でも

ありそうだな」

言うが早いか言ったレイダーの顔に拳がめり込むと

拳の後が付く程の顔面陥没を起こし

またも仲間レイダーが地面へと倒れた……


レイダー「いくら直属とはいえ酷ぇ、

気が狂ってやがる、チッ今しばらく様子を伺うか、

とばっちりはゴメンだぜ……

この調子じゃアイツ(ヒロ)見てもられねぇ

殺され方すんだろうな、俺見たくねぇな……」


ざわつくレイダー達はしばらく様子を伺う雰囲気だ


白レイダー「五月蝿いねぇ、ようやく大人しく

なったな、ヒロとやら待たせたな、

喜べ、拷問はまだ始まったばかりだぞ

精神的に追い詰めてから絶望を味わうがいい

なぁ、お前ら?レイダーになった経緯は生活よりも

こういう事が出来るからだろ?」


外野レイダー「ま、まぁ……そうだな、

大概は前科者や人間を恨んだことのある奴、

それに社会への恨みもあるが、自由に何でも出来る

この生活は願ったり叶ったりと思ってる奴が

ほとんどだろうな」


レイダー「欲しけりゃ奪い、欲望のまま犯し、

たらふく食う、そして快眠だ、

これぞ自由!楽しくて仕方ねぇな確かに」


白レイダー「だ、そうだ、と言うわけで

邪魔しないように、

続きだ、どうだ、地面の味は?

這いつくばる景色はどうだ?気持ちいいか?

冷たいだろう、埃の匂い、

お前は味わった事があるか?

傍観者なら無いだろう?

底辺を今まで見た景色では無いだろう?

強き者は上から見下ろす光景、

下から常に見る光景は弱者の目線

お前の見た景色はそのどれでも無い

ゲームの世界と同じ離れたフィールドである

安全な距離からだった筈だ」


ヒロ「目……線」

白「そうだ目線だ、お前は生意気にも逆らい

俺達と同じ目線でここに来た、故にこうなった

今ここでお前の目線を記憶に焼き付けておけ」


レイダー「ひでぇ……そこまで言うかよ

こいつら鬼か……何か可哀想になってきたぜ」


白レイダー「ここ痛そうだな」

痛めた腕を持ち上げると、肩を壁に打ち付けた

激痛が脳に針を刺したかと思う痛みが襲う。

ヒロ「ぎゃぁ!」

ヒロは殴打に環境も入り、逃げたい現実から

引き戻される執拗な問答と攻撃に無意識に

意識を飛ばしたい本能なのか頭はハッキリ

しているが同時に緊張はピークにある事から

痛みをだんだん感じなくなった感覚が襲う

顔はどんどん白くなり手や指が痺れ冷たくなる。


「僕は……」

両手の拳を握り、固め、それでも尚、心にある

傷つけられた心が奮い立たせようとする

這いつくばりながらも地面い着いたその手を

無情にも白レイダーが足で払う

力なく再び地面へと這いつくばるのだった。

白レイダー「慌てんなよ……ゆっくり、

そうゆっくり最下層の景色眺めて感じ、

この天国をたっぷり味わえよ」


不思議な感覚だった……視点が変わり

辺りを見回すと今までにない景色が広がっていた

異空間……こんな世界が僕の側にあったのか……


白の視線は変わり指差す方向に従いヒロが顔を

向けると、そこには子供達が見える。


白レイダー「おいガキ共!この姿を見ろ!

お前達を助けに来た男の無様な姿を、

勇気だ?んもの力の前では何の役にも

立ちゃしない、希望は待っても来ない

弱者は常に強者の奴隷となり

体でその忠誠を尽くせ」


怯える子供達に外野のレイダーは言った

「大体親なんてこの世に生んでくれた事なんか

感謝どころか恨みはあっても、

んな愁傷な感情、考えたことも無いな、

金は無い、クソだらけの世の中に勝手に

生みやがってよ、迷惑甚だしいわ

だから好き勝手やったら刑務所だ」


子供達を見るヒロの目に哀しいこの子達の未来が

見える……人生に諦め、人を恨み、欺き、

そうコイツらの様な人間になるのか……

お父さん……お母さん……僕に何が出来る……

何とかしようと努力はしたけど

やっぱり何も出来やしないよ……


レイダー「古いものは去り、新しい者がこの世を

席巻する、今、時代は俺達の自由を謳歌する時代だ

力こそ全て、国も人も力さえあれば全てを奪える

地位、体、思考、食料、自由、その一つしか無い

命もだ!」


白レイダー「だって、辛いねぇ……

そうだ居場所教えたら仲間にしてやろうか?

そしてコイツらガキどもの世話係に任命してやろう

そうなったら身の安全や食料も確保されるぞ

今までお前を虐げてきた人間を配下に置く事も

出来る、コイツら家畜を育て売るんだ、

お前の手で、そしてお前は立派なレイダーだぞ

どうだ!素晴らしい案だろう!」


家畜?人間が?子供達が?

潤んだ目で泣き叫ぶ子供達を?


ヒロ「そんな力や権力なんか……僕は欲しくない」

声にならない震える声でヒロは呟いた

身を起こし膝がガクガクしながらまるで子鹿の

様に立つと拳を固め構えた……


ヒロは白レイダーに向かい言った

子供達に向かい言った。

「僕はもうダメかも知れないけど……

誰かが守らなきゃ誰も守れない」


子供達「嫌だ!ヒロ兄ちゃん、居なくならないで」

白レイダー「わがまま言うなよ、世の中には

どうしようもない事ってあるんだよ

この人数で玉砕覚悟であろうが無駄、

それだけは言えるぜ?」


ヒロ「……」

泣き叫ぶ子供達を見て何かが彼の中で弾け飛んだ

幼い日の家族、思い出、数多くの言葉、友情、

自分の想い、全てが今、シンクロする様に

彼の中で繋がりのない糸が絡み彼の心を

覆う中でその中で輝く光

それは想いが発生する核……

つまり彼の心そのものだった……


ヒロは不敵な笑いを浮かべたのだった……

白レイダー「おっとと、覚悟ができたか」

ヒロ「そうだね、見えたよ……

考えすぎて今まで大事な物を、

心ではいつも側にあり感じていた筈の本心が

ようやく見えた……

視点を変えた……匂いを嗅いだ……想いを感じた

痛みを感じた……恐怖を味わった

後悔もした……


白レイダー「その答えは?」

ヒロ「僕は僕のやりたい様にやる、僕が育った

環境や託された想い全てに正直に生きる」


ー僕は僕の答えが彼等の意味に繋がるー


白レイダー「それが答えか、意味のない答えの中に

答えを見つけた、そう言う意味だな」


「僕は諦めない……この子達も、

そして託された意味」


『そう僕自身も』


赤レイダー「どう言う意味だ……」

ヒロ「最後の最後で気づいた、

矛盾し交錯する思いの前に考えても答えは

出なかった……その答えは心の奥にある譲れない

ものだって事に、それは口で説明できる簡単な

事でもないし簡単なものだった……

僕はもう傍観者にはなりたくない

逃げてた……誰も傍観者じゃない、

そこに存在してる人間なんだ、僕は僕である為に

それを望んでくれた人がいるから

僕は今初めて僕になる」


レイダーの1人がヒロの背中から襟を掴む

もういい!ムカつくぜ!殺してやる!」


赤レイダー「何回言わせりゃわかるんだ、

俺の獲物だ、横取りすんじゃねぇよ!」

ヒロを掴んだ手をいかついレイダーが掴むと徐に

頭突きをかました。


レイダー「テメっ!さっきから勝手すぎるぞ、

くそ鼻血が止まらねぇ!」

赤いレイダー「はは男前になったじゃねぇか

人の獲物に手を出すからだ」


ヒロ(仲間割れ?)

レイダー達が騒ぎ出す、殴られたレイダーの仲間

数人達は武器を置き赤レイダーの仲間入り乱れての

殴り合いが始まった。


レイダー「おい止めなくていいのか?」

レイダーF「ほっとけほっとけ、

殺し合いではない限り巻き添えはごめんだ、

それに俺達には日常茶飯事だろ、

こうやって序列が決まり縦社会は強固になる、

それに直属部隊には逆らわないのが得策だ」


レイダー「でも……既に5人倒されましたケド」

レイダーF「おいやりすぎだ!作戦中だと言う事を

忘れんじゃねえ!おい止めろ!」


その場でレイダー同士の乱闘が収まった、

事が収まるまでに既に半数が

赤レイダー、レイダー白、緑によって

倒された後だった。


赤レイダー「いいか、強さが全てだ!

逆らった者には制裁を加える、統治下のある

お前達も然りだ!」


赤レイダー「待たせたな」

ヒロ「……」

緑レイダー「目が蘇ったな……」


レイダーC「もういい!作戦だろ、時間が無い

当初の通り俺がこいつの歯を全て抜いて、

さっさと終わりにすんぞ!」


レイダー緑「諦めるべし……」

一瞬の隙を突きヒロは動いた、

自分に足りないもの、それは覚悟を持ち

全てを救う、子供達の、親の思い、全てを

受け入れるには自らの命にも責任があると言う事、

それは自身も含めて、覚悟とは逃げる事ではなく

立ち向かい捨て身では不可能を可能にする事を

自らが行う事だと。


ヒロは残すと厄介そうな一番強いと判断した

赤レイダーの背後から側にあった棍棒を握ると

勇猛果敢に襲いかかった。

だが殴りかかるヒロの棍棒を振り向きざまに

軽く振り払うと棍棒は無惨に地面へと転がる……

が直ぐに予想出来ない出来事が起こった、

なんと赤レイダーが自らの手に持ったナタを

すかさずヒロの手に棍棒の代わりに勢いよく

手のひらに押し込んだのだった。


ヒロ「……へ?」

一勢に赤、白、緑レイダーが外野レイダー達の

方へと振り返えり無防備な背後をヒロに見せ

まるで彼を庇うように威風堂々と立った。


赤レイダー「ヒロ、よく言った」

白レイダー「ヒロ、君の勇気ある行動が

僕達に時間をくれた、一見無駄に思える勇気こその

結果が今、此処にあるよん」

緑「少年!よく言った、そして耐えた、

あらゆる苦悩の中、見事立ち上がった!

そして、この美しい少年少女達を

よくぞ守ってくれた!

仲間に変わって礼を言うぞ!」


仮面を皆が一斉に外すと

レイダー達はハク、誠、孝雄、孝雄率いる

仲間2人だった……


ヒロ「ま!誠さん?」

ハク「やはり知り合いだったのね、試合あるから

誠抜きの作戦だったけど行くって聞かないからさ、

困ったモンだよ、でもこの人数に誠が居なきゃ

レイダーのフリも成り立たなかった」


孝雄「うむ、これほどレイダーが似合う男を

我は見たことがない!」


誠「……」

複雑な顔をして笑う誠だった。


誠「……なんか哀しいけど俺そんなに人相悪いか?」

ハク「にゃはは、ままっ褒め言葉、褒め言葉!」


誠「まあいいか、それにヒロはあの侵略の日

共に行動した仲間だからな、話を聞いた時、

特徴が酷似してたからな、確証はなかったが

それでも友のピンチに休憩してるだけなんぞ

俺は落ち着いてネェからな」


ヒロ「僕かもわからないのに……

こんな危険な場所へわざわざ

……来てくれたんですか?

…えへへ、馬鹿ですね」


誠「お前の両親の価値はお前が一番よく知ってる

お前が大切に思えば、それは他人がどう言おうが

世界一の両親だ、他人がどう思おうが

お前自身がその全ての価値を決めるんだぜ?

それに立派だったぜ、俺も親は大好きだ」

ハク「親を大切に思えない人間が他人に優しく

できる筈は無い、人の基本は家族、

底辺に落ちた時、人の本性は出る、その土壇場で

家族を大事に思えない人間の本性は

自分を常に優先する」


レイダー達「くそ!いつの間に!コイツら敵だ!

紛れ込んでやがった!おい!子供ら人質に取れ!」


だが既に後で子供を保護し武器を構える

豹チームの女レイダー達が居た。


ハク「時間稼いでくれたからねヒロが

君が諦めたら其処で終わってた、人の本質は早々

変わらない、彼の未来も含め僕は君を信じた、

だから僕は君を選んだ」

レイダー「……クソがコイツの拷問も時間稼ぎか

だがテメェらも仲間を傷つける最低野郎じゃねぇか

偉そうにごたく並べてもよ」


ヒロ「……違う、僕の意識が飛びそうになった時、

僕に考える猶予を与えるために誠さんは僕の

腹を殴った……」


誠「悪かったな……」

ヒロ「お陰で……僕は……ありがとうございます」


レイダー「だ、だがそこの奴は傷口に塩つけて

拷問してたじゃねぇか!飛び散った水は

確かに塩が入った水だったはずだ!」


ハク「あぁアレ?生理食塩水だよ、

聞いたことあるでしょ手術とかに使うやつ

怪我してたからついでに治療してたの

脱臼した腕も上がってるの気づかない何て

お馬鹿さん達ですねぇ」


ヒロ(あ、僕も気づいてなかった……

そういえば腕上がってる……)

その表情を見て誠が笑う

誠「安心しろ俺も気づいてなかったぞ!」

クスクスと笑うヒロの笑顔が輝いて見えた。


ハク「もう大丈夫だね、人は追い詰められて

覚醒するタイプもいる、追い詰めてごめんね

そうでもしなきゃ君の優しさは

いつか己自身を破滅に導く、だが反対に本当の

意味で覚悟ができた時、君は大切なものを

本当の意味で救える、そしてそれは最も君が

望んでいる事だよね」


ヒロ「……はい」


レイダー「ち……治療?だとぉふざけやがって!」

ハク「しっかり治療完了っですっ!

だけど揉めてる最中にもう少し人数

倒しときたかったけどなぁ残念」

レイダー「くそ!演技か!あざとい奴め!

あの環境すら利用したってのか!

俺達はむざむざこの人数が居たってのに、

やられ放題に治療だったってのか!」


孝雄「うむ、残念だったな、お前達の当初の

人数が揃い援護も間に合わなければ俺達の人数でも

勝てたかどうかわからなかったからな」


誠「で?どうするよ?」

夏帆「逃げようたってそうはいかないよ」

相葉って奴が裏を読んで情報収集してくれた

お陰だ、それに言ってたよ

言われたことをやるだけでは上にはなれない

どう言う意味かわかんないけど」


誠「おっさんらしいな……うまく繋いでくれた時は

ほんと居てくれてよかったと痛感したぜ」

ハク「道を極めると全てにおいて応用が出来る

そう言った意味で相葉さんもプロだね」


レイダー「くそ、こうなったら子供と

女達を狙い突破するぞ!」

その瞬間ロープが垂れ勢いよく1人の男が

上から降ってきた、

クリス「甘いねぇ、そうはいかねぇな、

確か攫い組?ダセェ名前の奴らは俺が始末した、

恨むなら俺がその相手だ

こいコラ、遠慮すんな……」


更に後ろから仲間達も駆けつけた。

その中には温川も居たのだった。

温川「ヒロ助かったぞ、この人達が助けてくれた

菱の野郎の仲間だってな……話は聞いた、

あの馬鹿者め、わしが頑固?まぁその通りだが

わしも年老いても男、友の心の願いを聞けない程

男で生きてきた年数は無駄にはしとらんちゅうに」


誠「でどうする?形勢逆転ってとこだけど?」

ハク「今度はアンタらが拷問受けて見る?

塩の濃度はマックスだけどね」

孝雄「許すまじ!少年少女の儚い美しさを汚そうと

した罪、身をもって地獄に叩き落としてくれる!」


誠「おっさん……少し言ってることが危ねぇぞ」

ハク「にゃはは、さて後にお客さんが来てる

このまま簡単には帰れそうにないけど」


そう其処には『虎』が居たのだった

そして隠密部隊も含めた人数が増え

混戦は免れない状況だった……


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