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女達2



エリを人質に取られた豹のメンバー

残虐橋に集まった先に複数のレイダーが

集まっている、その中心に居るのは豹と同じく

女レイダー達の集団がいた、その容姿は大胆にして

華麗、大きく胸元の空いた服、手の甲に虎と描いた

タトゥーを描き衣服には象徴する虎模様をどこかに

取り入れた大胆な装い装いをしていた、

それを一層強く感じるリーダーは大きくスリットの

入った服に鋭く切れるような眼光を放つ女が立つ。


菅「此処に呼んだ意味はわかるな?」

夏帆「施設内ではレイダー同士の喧嘩はok、

だが殺しはご法度、あんな施設でもルールはある、

だが外なら話は別、まぁアンタらが支援する

黒田や幹部、警察の役目を果たすアイツらは

無差別殺人もお咎めなしだがな」

菅「理解してんならいい」


夏帆「しかしまたアンタらか……」

菅「当然だろう?アンタらが動けばあたし達が動く

以前からそうだったろう」


夏帆「いつもいつも目の敵にしやがって……

アタイらの何が気に食わないのさ」


菅、率いる女チーム『虎』は夏帆率いる『豹』とは

敵対する組織だ、構成員は豹より大きく、

何より『黒田』を崇拝するチームだ。


菅「アンタ達、黒田に逆らうとどうなるか

わかってやってんでしょうね」

夏帆「……此処は黒田がボスってわけじゃねぇ」

菅「彼は此処での幹部だ、すなわち彼の言う事は

ボスの言う事と同じだ」

夏帆「ハッ知らないね……私達は誰の指示も

受けない、そしてそれはボスも受け入れての話だ」


菅「相変わらず社会がわかってない乙女の集まりか

それがムカつくんだよ、この汚い時代に

染まりきって無いお前らが元々目障りなんだよ

この交渉だってそうだ、仲間の1人とチーム全体が

危険に晒されるのとどちらが正しいか

私だったらその女を匿う事はしない、

冷たいようでそれが正しい答えだ、

女は生きるので精一杯だ、誰もが自分の命や生活を

脅かされてる、汚い事は山ほどした、

そして行き着く先の答えは……自分が一番、

そうだろうが、この時代に今更、人の情だとか

ぬかしてんじゃねぇよ、ガキの発想にうんざりだ、

まぁいい其処の女渡せ、エリは返してやる」


顔に麻袋を被せられたエリが複数の女達に連れられ

姿を見せた、体には複数のアザ、

更には女2人に両脇を抱えられ酷く痛そうに

足を引きずられながらもまるでゴミでも扱うような

エリを地面へと無造作に放り投げた……

夏帆「おい……何故足を折らなきゃならなかったか

説明しな」

鋭い眼光で菅を睨む夏帆を横目に戯けた様に

ニヤけた嫌な顔で飄々と答える菅


菅「あーあコレね……暴れられたら厄介じゃない?

アンタもウチらと同様、見た目や体で

生き抜いてきた商売だ、暴れた際に体や顔にでも

傷つけられたら、商売上がったりだ、そうなると、

この女殺すしか代償は取れ無いだろ?

いや殺しても足らねぇ位だ、

ウチらの売りはこの顔と体だ、故に優しさだよ……

お前らが大好きな情ってやつだ

知れに足が動かなくても商売は出来るだろ

奴隷制度があった時代は女はアキレス腱

切らされた位だからな」


表情を一編も変えず目線を菅から離さ無い夏帆、

夏帆「この女渡してどうするつもりだ」

菅「どうもしやし無いさ……ウチらだってボスに

逆らう気はねぇさ、ただ少し薬飲んでもらうがな」


夏帆「……黒田の命令か」

菅「って訳でも無ぇよ、ただな試合で負けて

もらわないと、被害が此方にも及ぶんでな」


由美「被害?……成る程、噂は本当だったんだな、

お前らの体や顔の傷、黒田にやられたんだろ、

あいつの噂は聞いてる、人を物としか思って無い、

暴力に興奮を感じる変態野郎だ、

特に弱い存在には容赦しないって噂だからな」


乙音「……アンタ達の仲間、年に10人は惨殺

されてるよね、ウチらも危険は同じだが施設内で

商売してるにしては多すぎる、黒田だね」


菅「……だが奴のお陰で生き延びてこれている

それに男の暴力性は生まれ持っているものだ

故に黒田は最もそれに忠実、今の時代には

恐怖で統治することにより更なる被害を防いでいる

とも言える、そして奴が実力者でありそれを

受け入れる器が私達て訳だ、女は男の暴力性を

抑える役目を持つのも真実だろう?

アンタ達に被害が及ば無いのは私達の存在が

あっての事とも言えるんだ、

それにな、幹部には手はださねぇって約束は

守ってくれてる、

それに、ただ暴力に耐えているだけではない

下のもんは這い上がり幹部になる事で地獄から

解放される、そうやって縦社会でウチらの組織は

規律と統制が作られ、組織は成り立ってるんでな、

お前達甘ちゃんと違ってな」


菅「……喋りすぎたな」

そう言うと懐から銃を出しエリの頭部に当てる

地面に這いつくばるその姿に興奮を隠せ無いのか

白い美しい青の顔に殺意と興奮が滲み出ると

感情が昂りエリの傷ついた足に高々と右手に挙げた

ナイフを一気に突き立てた。


エリ「ッ痛い!」

何も男だけが暴力性を持つ訳ではない

現代においても女性による残虐な事件は後を

立た無い、それは男女という垣根ではなく

誰しも持つ人間の資質と言ってもいいだろう

更には時代や環境により暴力への寛容化は変化する

例えば戦争時など人を簡単に殺める事が出来る

環境ではそれこそ現代では問題になりそうな

殴られた等、それこそ、それで済んだと

胸を撫で下ろす事だろう……

またこういった社会では麻薬に心を誤魔化す者も

圧倒的に増えるだろう、それは過去の歴史を見ても

否定はでき無い、それは心の弱さ、恐怖、快楽、

罪悪感、痛み、苦しみから簡単に逃れられる物

そう言った人間の心は暴力に頼る人間と同じく

問題から目を背ける、命を削った弱さの象徴だ。


由美(どうする……あいつら薬やってるぞ、

いつにもまして凶暴だ、このまま純衣を渡したら

それこそ何されるか……)

夏帆「……一か八か、人質交換ですぐ様殺るか」


夏帆は後ろにいるメンバーに指で合図を送ると

各自隠し持った武器の確認を行う、緊張しながらも

自然と陣形を整えるように動き出すが

純衣が1人全体の前へ出た。


由美「な、アンタ!」

その言葉を遮るように夏帆が由美の動きを止めた。

由美「いいのか!アイツの飲まされる薬は恐らく

試合に影響を与えるものだ、

そんなもん飲まされたら……

それこそもうアイツに勝ち目はないぞ」

夏帆「……だが全て悟った上での行動だろう

私は……リーダーとしてアイツに感謝する、

此処で戦ったら皆タダでは済ま無い、

それを察しての事だろう」

由美「アンタ……今更」


だが由美は気がついた、彼女らの背後に

隠れるように様子を見ていた男衆に、

彼等は秘密裏に行動するボス直属の部隊の証である

耳に鬼の紋章を施した刺青があったからだ、

彼等の強さは本物だ、豹のメンバーは全て女

幾ら足掻こうがこうなっては勝ち目はない事を

夏帆は此処にきて認めざるをえなかったのだ、

それに奴らが絡んでいる理由……

それはボスが絡んでる証だ、

となると更に安易に行動は起こせ無い状況だった。


由美「黒田だけじゃないのか……

ボスが裏で仕切ってると考えると、やはり何か」

夏帆「……」


エリは解放され純衣は菅の前に立った瞬間

腰の入った往復ビンタを食らわす

だが純衣は怯む事なくただ真っ直ぐに

菅の目を見ていた。


菅「度胸あんね、アンタ、

その目が気に食わ無いねぇ……跪きな!」

そう言うと隣にいた女レイダーが持つナイフを

手に取ると膝めがけ振り下ろした。


由美「クソ女!」

だがそれすら軽く半身を描く動作に

女のナイフは虚しく空を切るばかり、

周りから見ても当たる筈はないと思わせる程に

華麗で余裕があった。


菅「……誰が避けろっつった?」

純衣「あら?私の身体はね傷つけたく無いの」

菅は冷静な目でナイフを数回純衣に向けて切るも

全てが空を切った。

その立ち位置は変わらず、足元の砂利は円を描き

その軌道に後から舞う髪が美しく靡いていた。


菅「……なるほどね、(ボスが言う念には念をか、

こいつ本物だ)まぁいい薬呑むんだろ?

解いてやれ、どちらにしろアンタに

見える傷を残すのは私らにも都合が悪い、

あくまでも見え無い傷を残すのが目的だからな」



大きな胸の谷間から小瓶を取り出すと純衣に

それを放り投げた。

縛った紐を解かれると純衣は盃を躊躇いもなく

一気にそれを飲み干すのだった……


純衣「不味っ……」

菅「……あはは面白い子だね、アンタ、そりゃ

神経毒だからね、今日の試合は第一、そして

アンタの第二試合、明日の朝までは屈強な男だって

まともに動けやし無いさ、今日1日は立ってる

事もままなら無いが安心しな、試合の日には、

なんとか出場出来る位には回復してる

まぁ……戦いになるとは思え無いけどな

だが欠場は出来無い、あれはどんな体調でも

生きてればokだからな

そして周りにはイカサマだとも思われず

苦しみながら捥がくがくんだよ

お前に出る症状は目眩、頭痛、吐き気、痺れ

その中で黒田と対戦祭だ、あははは!」


「黒田に狙われる発端の経緯は聞いた

その偽善、状態の良い場合のもんだろ?

苦しみの中に他人の為に戦う愚かさに存分に

後悔するがいいさ、恨むならコイツら豹を

恨むのが筋だと気づけ、お節介にお節介が招いた

事態だ、アンタは豹を助け、豹はアンタを

助けようとした、そして今度は赤の他人の人質の

為に今度はアンタがその犠牲だ、甘さの招いた連鎖

そして今アンタは毒を飲み明日殺されるんだ

苦しみと後悔、愛する者を置き去りにしてな、

だがまともに戦える状態ではない、目眩、頭痛、

吐き気、そんなかであの黒田と対戦祭だ」


執拗に煽る菅、純衣に恐怖と不安を与える為だ

あえて言葉で伝える事により絶望の中で

生にしがみつく姿が見たかったのもあるだろう

ここで懇願するもよし、恐怖の中に偽善を装い

明日後悔し生にしがみつくのもよし

菅の真意とは裏腹に微動だにしない純衣。


菅「……なぜ今の話を聞いた上でそんな目をする」

純衣の表情は話を聞いても眉一つ動かなさない

それどころか、その目は一層輝いて見えた。


自分の筋を通した純衣に、迷いは無かった

彼女にとってそれを曲げる事こそが自分に落胆し

戦うことはおろか全ての人生を否定し

ハクへの愛をも否定する事になるからだ、

彼女の強さは真っ直ぐさ、そういう事なのだろう

本人はそれすら考える事なく出した答えに

その全ての意味が込められていた。


菅「ムカつく目だが懐かしい目だ

アンタがどうやって殺されるか楽しみだよ」


純衣「じゃ賭けしよっか、もし私が勝ったら

アンタ怨恨なしで豹と仲良くして仲間になりな」

菅「は?ありえねぇよ、何を言い出すかと思えば

この後に及んでまだ甘い事言ってんのか?」

純衣「じゃ試合で私が勝つ事もありえ無い?」

菅「ありえねぇだろ、まともに戦っても黒田の

勝ちは目に見えてる上での保険だ」

純衣「ならありえ無い同士、不可能な事を

正当化するくらいの価値はあるってことね」


菅「……いいだろ、この世の最後の遺言として

聞いてやる、お前こそ覚えとけ、血みどろになり

苦しみの中に痛みを抱え、羞恥の中に

心を荒ませ恨みを全てのものに抱いた時に思いだせ

今の言葉を心の中で何回も」


純衣「ほーい」

乙音「菅、怖っ!純衣、軽っ!」


菅はしばらく純衣を見た後、その場を去った

それを見届けたボスの部隊もいつしか

姿を消していた……


夏帆「……引き上げる、半分は此処に残り

半分はアジトの警護だ、子供の世話も頼む

由美は此処に残ってくれ話がある」


由美「わかった」

夏帆「乙音、さっきアジトで言った用意を

明日の朝までに必ず頼む」


乙音「わかった」


そう言うと半分のメンバーは

急ぎアジトへと向かった。


夏帆は凛として立つ純衣の横へ行くと腕を取り

自分の肩に回す、同時に反対側に由美も居た。


夏帆「すまん守りきれなかった……もういいんだ

皆の姿は見え無い」

その言葉を聞いた瞬間、純衣の体は倒れる様に

夏帆と由美にもたれかかった。


由美「無理しやがって」

夏帆「皆に心配をかけまいとしてだろ、

もういいぞ、この近くに私らの休憩所の小屋がある

そこで休め、今アジトを守ってくれてる

アンタの仲間の裕太には、こちらに来るように

伝言は頼んだ」


純衣「お願い、私は大丈夫だから温川さん所に

行って……子供らが危ないんでしょ、早く

裕太が私を守ってくれるから、ね……早く」


声がどんどん小さくなる純衣に夏帆は心を痛めた

結果匿う所か、現状を悪くしただけのこの状況に

そして仲間の為に薬をためらう事なく飲んだ

純衣に由美もまた心を痛めた。


元々白い顔が蒼白に、いたたまれず夏帆は純衣を

抱きしめたのだった。

純衣は意識が朦朧としている……

「暖かい……お母さん、苦しいよ」

夏帆の胸で苦しむ純衣を強く、そして優しく

抱くしめる、見た目より小さな肩や腕を持つ

彼女の気丈な強さとは真逆のその小さな震える体に

また普通の女である事を彼女はその胸で泣く

純衣を見て痛感した。


由美「こいつ試合で菅が言った様に苦しんで

後悔して私達を恨むんだろうね……」

夏帆「本当にそう思うかい?」

由美「……無いだろうね、いっそ恨まれた方が

楽にすら感じるよ」

夏帆「そうだね……菅は勘違いしてる、薬を飲んだ

時点で既にそんな思いが出る訳は無い」

由美「思わ無いから余計苦しいね……」

夏帆「だけどこいつはそれだけじゃ無い

迫る未来にたじろぎもせず菅に言った言葉の意味

そして恐怖より、それすら愛に満ちた言葉で

私達を繋げようとする気持ち」


由美「未来を変えれる心の強さだね」

意識を失なった純衣を小屋のベットで休ませると

夏帆と由美は互いの目を見ると小さく頷き、

仲間2人を小屋に残し残りの仲間を連れて

武器を手にモールへと出立するのだった……

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