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現実


ヒロ「いたた……」

落ちる場所の目標物、ツリーの真下に

設置してある子供が遊ぶ大型遊具の上に落ちた

ヒロは勢い余り地面へと放り出された、

這いつくばる彼の体に着く塵等が呼吸を妨げる


「ケホケホ」

ゆっくりと身を起こし自分の体に異変が無いか

指から少しずつ体を動かしながら点検をする。


「骨……大丈夫、関節、痛いが大丈夫、

よし行ける」


擦り傷はあるものの立ち上がると姿勢を

低く保ち、身を隠しながら辺りの様子を伺う

柱の影、耳も澄ませ、至る所に神経を配る……

土砂崩れは収まったものの、辺りは細かい

コンクリート片や埃が舞い上がり視界は悪い

だが正面切って子供達がいる場所に行くことは

安易には出来ない、

辺りを凝視し観察するのだった。


蠢くゾンビの声はかなり少なくなっていた、

瓦礫に埋もれ上半身しか出てない者や、

恐らく足が折れているのだろう、

這いつくばっているゾンビも多く

視界に見える範囲ではゾンビの機動力は

ほぼ奪われたと言っていい程、

数は激減していた。


目にツリーが入る……天井を見上げるが

自分が飛んだ位置を見て鳥肌が立つのだった

だが同時に何とも言えぬ高揚感も彼は感じた。


ヒロ「……よく飛べたな」

誰も見ていないのに少し気恥ずかしくも

小さくガッツポーズをとるヒロだった、

だがグズグズしてる暇はない、同時に慎重な

行動も必要不可欠だ、何せ1人だ、

仲間は居ない、心の中に不安を感じながらも

彼は瓦礫の落ちる危険な場所を避けながらも

子供達が居る方向へと急ぐのだった。


時折、薄明るい塵霧の中に灯が見える……

レイダーだろう、見つかれば終わり、敵の数も

わからない上に装備が全く無い、ツリーから

飛ぶ時に武器は重みになる上に落ちた際の

危険に繋がる事から上に全て置いてきた……


『ドサッ!』

時折ゾンビが降ってくる、これはクリス達が

戦闘に入った証拠だ……

上に仲間が戦っている状態は

彼に不安を軽減させていた。


中央を突っ切ると予測地点への到達は早いが

当然ゾンビが降る上にレイダーに確実に

見つかる事から出来ない、

端からインナーショップ側を通り、目標地点を

目指すべく動き出す。


1店、2店、3店……破壊具合から壁に人が通れる

場所も多く存在する、4店目に差し掛かった時、

人の話し声が聞こえ、薄暗い日差しの入らない

場所へと身を隠す……


震えが止まらない……自身は緊張している事に

自覚は少ないものの、やはり動物的本能だろう

生命の危機という状況に体が自然と反応している

事に自覚する。


「はは……そりゃ怖いか、だよな、

あの子達助けるまで何とか今は耐えてくれ、

震えは反応を鈍くする、体力も奪う、

な俺、わかるだろ?」


本能に語りかけるように震える体に語り、

自身が自身を抱きしめるように語りかけた。


彼の隠れる場所から手の届く範囲で、

レイダーは止まり談笑している。


レイダー「しかし遅ぇな……」

レイダーB「ガキを攫う所は確認済みだ、

瓦礫が崩れてる上に抱えたとしても

そりゃ重いだろ、もう少ししたら来るだろう、

上も奴ら踏ん張ってはいるが、なんせあの数の

ゾンビだ、時間の問題だろう」


レイダーC「そういえば聞いたか?今回の祭

の意味をよ、冬の家畜奴隷の餌代減らすために

全員処分するとはな、少し可哀想な気もするぜ」

レイダーA「噂では奴隷商人から定期的に供給する

予定があるから問題ないらしいぜ、だがそれでも

春には俺らも人攫いに忙しくなるだろうけどよ」


レイダーB「だがこんな噂も得るぜ……

ボスはあの奴隷商人のコミュニティーも

取り込むつもりらしい、強欲な人だからな、

仮にコミュニティーの規模が少なくても

子供は資産になる、大きく育てば奴隷、

餌代も少なぇ、反乱を起こす心配も無ぇ

子を人質にとれば親や関係するものの反乱、

メリットだらけだからな」


レイダーA「特に若い女の子は需要が高いからな

倫理が外れりゃ昔からな、俺は普通がいいがな」

レイダーB「そういえば日本も過去ドイツ兵に

子供にそういうことされたと聞いたな」


レイダーC「そうだな、親を人質に銃向けられて

子は親を親は子を同時に人質に取るんだ、

親は戦争が終わって船で帰還する時多くの者が

船から飛び降りて自害したそうだ」


レイダーA「いつの世も世紀末時代が来ると

やる事は同じってわけか、

まぁ先人がやってんなら俺らもやらなきゃ

損だわな、今は法律も警察も無ぇからな」


ヒロはその言葉を聞いて子供の行く末を知った

彼に懐いていたマヒロも武も風華も先に未来は

無い、力なき子供の行く末を想像すると心が

張り裂けそうに痛んだのだった……


何で何もしてない子供がそんな目に

遭わなきゃならない?だが現実から目を背けた

真実を知ろうとし無かった、見たく無いもは

目を伏せた平和だった頃の異常さに腹が立った。


ー人は平和になり心の豊かさを勘違いし

余計、稚拙に進化した究極の愚かな怪物と

成り果てたー


温川さんが言った言葉を思い出した……

先程の恐怖の震えが怒りに変わるヒロ

それはハクが彼に責任と言う逃げられない状況を

与え、自分と向き合う場を作った、

そしてクリスが彼を信頼し、ツリーに飛び込ませた

事実が自信となり生まれたものだった。


人間は意図しない言葉や行動をしたり見た事で

何も感じない時も多いが、その一言や不意の

行動で簡単に変われる時もある、それは事が

大きくなれば成る程に見合った成果として自身に

宿るものである、だが多くは此処で挫折し諦める、

事の大きさにやる前から諦めるものも多い

ハクはそれに勝てる人物の選択をしたのだった、

彼には一つの意思(自分)のみならず

他人の気持ちに大きく左右される心の持ち主

だからだ、今まではそれがヒロを苦しめ

彼を小さくしていたが、その苦しみの側で

人を嫌いになった理由が奇しくも同時に人の

気持ちを思いやる気持ちも同時に大きく

していったのだった。


レイダーが去り、身を低く隠れていたヒロは

ポケットからハクの手紙を出すと読んだ……


手紙を読む彼から徐々に震えが止まる……

まだ半分しか読んでない手紙を大切にしまい

すぐ様、近くを冷静に見渡し、鉄パイプを拾った

その中に湿った土を詰め込むと、一回り小さな棒で

ぎゅうぎゅうに詰め込んだ土に石で蓋をする、

地面に鉄パイプを逆さにし、トントン叩く、

勢いよく振ると、鈍い音を立て空気を切り裂く。


ヒロ「これなら……充分対抗できる」

重さの加わった鉄パイプは凶器の度合いを深める

レイダーの武器に対抗するには一撃必殺並みの

力が必要と感じたからだ、

何回も叩かねば倒せない棒は複数の人数では不利だ


棒を腰に入れ、再び彼は動き出した。

レイダーの後を追う、彼らが向かう先、それは

子供達がいる場所の方向を示す。

だがそれだけでは無い、方向が分かれば何とかして

先回り出来る事を視野に入れる。


歩きながら話をするレイダー

レイダーC「あと六時間後か……俺も試合見てぇな」

レイダーA「早く済みゃ戻れるさ、俺も多額の金

賭けてるからな」


レイダーA「ボスも用心深いぜ、温川を人質に

取れば奴は手出し出来無ぇ、今までは捕獲しない

事を条件にこの場所を攻める事は無かったが、

今回ばかりは不安要素を消す為にわざわざこの時期

を待って攻め込むとはな」

レイダーB「出来れば捕獲という話だからな、

殺してもいいって事だろ?」

レイダーA「あぁ、殺した後でも生存している

フリも出来るし、このカメラで動画を取り

生存しておくフリは出来るからな、

子供を人質にとれば温川も言う事を聞く筈だ、

奴は雪丸同様、危険人物の1人だ、

アイツを生かしておくと後々コミュニティを

大きくし争いの火種になりかねんからな、

いつまでも生かしておきたく無い人物だったが

雪丸の枷の為に生かしておいた様なものだからな」

レイダーC「せっかく此処も安定して

きたってのによ」


ヒロ(……安定?どう言う事だ)

レイダーA「そうだな、もったいない」


話はこうだった……このコミュニティに限らず

施設近くに存在する少数規模のコミュニティは

真実は彼らの『餌場』だった。

食事代も入らず、放置しておけば管理無しに人は

生活し人を徐々に増やす、ある程度増えた所で

生活に支障が出ない程度に人を攫い、

グリマンに実験台として差し出す、

いわば金のかからない彼らの奴隷養育場所と言えた

主要なレイダーを取り込み成長するまで餌場である

小規模なコミュニティーを攻め込ませず放置させる

意味もそこにあった。


ヒロ(今まで本格的に攻めてこない理由は

其処だったのか……)


人数が増え過ぎれば人は反乱を起こす武力を

手に入れる、そこを計算し、常に貧困程度で

押さえ込み、自らのコミュニティーを成長させる

そういう人物だからこそ、相葉の事業計画書を

理解し今回の商談に至ったとも言える、

ハク達や普通の命乞いの為の無計画なただの案では

この計画は実現出来なかった、そこは相葉の手柄と

しか言いようがなかった。


レイダーA「だが何故今なんだ?」

レイダーB「言うなよ……これは噂なんだが、

奴隷所人が来ただろ、今度は組織を乗っ取るらしい

元々ボスに商談持ち掛ける事が馬鹿だな

あの人は全てを取り込む、怖い人だぜ……

ただ今回はボスも油断はしてないらしい

計画性に信憑性が高いらしい、相手の規模を把握

する為の時間稼ぎと主要人物の割り出しと人員削除

も目的らしいぜ、仮にその組織が嘘だったとしても

脅威を取り除き、ついで目の上のタンコブな

雪丸抹殺、更にはそれに失敗しても今回ばかりは

特殊な祭りだそうでどう足掻いても向こうには

勝てないように仕組まれてるらしい、

俺達にも抑止力として権力と力を見せつけるつもり

だろうな」


レイダーBは壁に武器を置きタバコに火をつけると

話を続けた。


「今回の祭りはかつて無いほど大規模なのは

知ってるな、それにも意味がある、

今回は噂を聞きつけた他の組織レイダーも

多く集まる、奴らを新しい奴隷として奴隷人員を

補うらしいぜ、まぁ連日の労働でだいぶ奴隷達も

弱ってるからな、粋の良い人材と交代って訳だ」


レイダーC「ボスもエグいぜ……だが招待した

他の組織レイダーが帰ってこないと、それはそれで

争いになるんじゃねぇか?」


レイダーA「馬鹿か、こっちにはバックに

グリマンがいるんだぞ、軍隊でも歯が立たない

相手に今の時代、まともな兵器も無い状況で

攻めてくる馬鹿は居ねぇだろ」


レイダーB「攻めてくる馬鹿は居ないだろうな

グリマン自体は俺らを守ろうなんて思ってない分

此方から進行する援助なんて期待出来ないからな

規模をデカくするには奴等を引き込むしか手が無い

後300人ほど増えりゃ兵隊に使える奴もそこそこ

居るだろう、使えない奴は奴隷、従う奴は兵隊に、

祭りの目的はそこにあるからな……

ボスは祭りの事をスパイダーカーニバルと

呼んでいる位だからな」


レイダーA「しかしそんな事繰り返してたら

祭り見にくるレイダーいなくなるんじゃねぇか?」


レイダーB「馬鹿か、入ったものは出さない

家族の居る奴は人質に、また取り込んだ奴には

俺らみたいに高待遇の上に安全が、

少なくても異星人からの補償される、女も抱ける

飯も食える、カツカツの生活してる奴等にとっちゃ

此処は天国みたいなもんだ、その数名を戻す、

そしてスパイとして行動させるから祭りの評判も

作為的に良い評判となる訳だ、民衆なんて昔から

そうだろ、メディアが取り上げた情報が全て正しい

と勘違いする奴らばかりだ、自分で考えて行動する

奴らなんて居ねぇよ、ネットも今は無いからな」


レイダーC「そして規模のデカさと評判は

他組織への牽制の意味も含まれてるって事か……

最初に異星人との交渉を成功させたボスの采配、

いや交渉術が凄かったと言うことか」


レイダーB「だな……会話一つで町に近い規模、

いや今後、日本で一番成長するコミュニティに

成長するだろう、敵対勢力とも言えないだろうが

現在わかってるだけでも横浜の自衛隊居留地以外は

元総理、栗栖率いる裏組織とその息子ら3人、

まぁ警戒するに値するのは長男だけらしいがな、

後は行方不明と聞いているが……

まぁまだ大きな組織が無いとも限らねぇが……

グリマンを味方につけたボス程じゃ無いだろう、

本当に出来た人だぜ、

俺らみたいに筋肉馬鹿には到底為し得ない力だと

言う訳だ、まぁどう転んでもボスには

メリットしか無い仕組みだ」


レイダーA「ちょっと待て……

俺雪丸に全財産賭けてるぞ!」

レイダーC「こりゃ早く終わらせて掛け金自体

キャンセルしたほうがいいな」

レイダーB「金は残したほうがいいぞ、

なんせ冬には餌代がかかる奴隷は全て供給を止め、

言った通り招待したレイダーとの総入れ替えがある

今の奴隷達は供給が止まれば皆、めでたくゾンビに

なり春にはもうゾンビですらなくなるミイラ

だろうからな、それでも越冬の為の備蓄食料の

高騰は免れないからな」


ヒロ(なんて酷い奴等だ……アイツら自分達以外の

人間を人間なんて思って無い、コイツらの計画が

今後も上手くいけば、それこそ人の世界は終わる、

この事を皆に伝えなければ)


責任が更に彼にのしかかる……

分散してる今がチャンス

僕は人への恐怖を感じないコツとして書かれていた

事を読み返した……

恐怖の原因と状況、相手への観察を頭の中で

具体的に表現し言葉に出してみると言ったものだ

復唱すると手紙をしまい、近くにあった石をわざと

投げつけ、降参する用に彼らの前へ両手を広げ

出て行った。


レイダーA「止まれ!どこから湧いてきやがった」

レイダーB「丁度いいじゃねぇか、

お前、上のコミュニティの者だな

居場所吐かせてやれ」


話を半分聞きながらも書かれていた通り

観察を重点に視野を広げる……

人が会話、敵は3人、出口は二つ……

改めて思ったが……漠然とした恐怖を

今までは感じていたが、こうやって状況を頭の中で

ちゃんと言葉にしたり考える事で自分が

何に恐怖を感じ、それが自分の中でどれだけの負担

が掛かっているかよく理解できる。


一人一人の様子を冷静見る……

歯の抜けたレイダーCどうも昔のヤンキーみたいな

行動をする、相手つまり僕みたいなタイプには強く

出るタイプだ……安易に近寄って来る、隙だらけだ


そしてレイダーB、後で腕を組みながら様子を

伺ってる上腕二頭筋が半端ない、腕力に自信あり

という事は予測の域ではあるが、上半身からの

攻撃は気をつけねば、僕と距離を取り、

後ろに居て腕を組む、腕を組む仕草は警戒心の現れ

武器は長いナタか……


そしてレイダーA、見事にデカい、肉は脂肪、

素早さは無さそうだ、近づかなければ

怖い事はないだろう……


距離が一番近いCコイツを叩き、すぐさまBに

駆け寄る……いやダメだ、いくら動きの鈍そうなA

としても彼の横を安易に通り過ぎるのは危険だ

その太い腕で掴まれ力任せに投げられてもアウト

掴まれても逃げることは安易ではない

その間にBが傍に置いたマチェットで僕はもれなく

真っ二つ、

ともかく勝つには勢いを止めない事、一つ一つの

動きが止まれば相手も人間だ、素早く反応し

僕は終わる……更に増援が来る事も考えられる。


だがどうだ……先読みを深くしていくと此処で

僕が捕まればどうなる、子供たちは?

居場所を吐く?それは無い僕は何の為に

降りて来たか、まず目的を見失わない事、

それ以外の考えは邪魔だと言う事をハクは言った

これが実際僕の心には響いた……


考えるのは大事だ、病気も心と体のバランスが大事

つまり僕は考えすぎる傾向が高いが故に思考が

強すぎると行動が遅く、また出来なくなる事を

示唆しているのだろう、迷った時、考え、

行動できる範囲になれば後は行動だ

そこからまた新たな道、考えなければならない事、

そうやって一歩一歩、その時の変化に対応する

ごちゃ混ぜにしてた僕の欠点が徐々に露わになる、

以前は答えが出ない訳だ……考えてただけで

考えてなかった、数学で言うと、数字を無作為に

バラバラに置き、

答えを見つけようとしてた様なものだ。

誰かのアドバイス、今までの経験、見たもの

感じたもの(数字)に観察(+-)

そして今は次の段階だ

そう(=)タイミングである……


居所を吐かない(決断)=終わり

増援(不安要素だが確定ではない)=

(来たとする)終わり

戦う=先が進む、未来がある、

そして不安要素は時間が経てば

予測ではあるが確率は増える。

なら、今やるのが決意の=イコールだ。

意思は固まった、今度は先程の行動の数式を

割り出せ……


距離は一番離れているが、用心しなければ

ならないのはBだ……彼に時間を与え武器を

構えられると厄介だろう、幸い武器は側に

あるとは言え腕も組んでいる。

ただ飛び込んだだけではダメだ


作戦は決まった……


位置

     レイダーA△


ヒロ △ △レイダーC △レイダーB


理想

   レイダーA△

       レイダーC ヒロ△ △レイダーB

           

ヒロ「すいません……上手く聞こえないんですが」

レイダーC「は?」

レイダーB「お前、前歯がないから

聞こえにくいんだってよ、

ハハハ確かに俺達も聞こえ難いけどな」

レイダーAもクスクスと笑った、


ヒロ(いいぞ……掛かった、観察1、相手の特徴を

把握し、作戦を練る、Cの怒りが伝わる)

レイダーC「あ?何だとテメェ!お前の前歯も

無くしてやらぁ!」

ヒロは口を閉じ両手で隠すと怯えた表情で

ドスンと腰を落とす仕草をした、更に後退りを

利用して徐々に位置を変えるのだった。


レイダーC「歯が無ぇとジジイみたいに空気が

抜けるんだよ!そうだ、お前はこのペンチで

全ての歯を抜いてやろうか?みんな抜いたら

ジジィみたいなシワシワなおちょぼ口になるぜ?」

汚い上着の内ポケットを無造作に探ると

ペンチを取り出し、見せつけるようにヒロに

近づくのだった。


ヒロ(観察2、破壊工作にはペンチ位持ってると

予測、性格の悪い奴らだ、同じ目に合わせるなんて

事は安易に予測できる、威嚇度合い、短気な見た目

から近づいて恐怖を煽ろうとする……

そしてペンチを持つ事で武器である棒をCに

預けた、これは嬉しい誤算だ、安全が増えた)


ヒロ「い、言うもんか……

居場所を吐くなんて……

吐いたら僕は仲間に殺される」


レイダーC「いい度胸だ、決まりだな、歯を何本

抜かれて居場所を吐くか楽しみだ、ヒャヒャヒャ

そうだ知ってたか?口腔はな歯を2本も抜かれたら

もう次の日は口は腫れて開かないんだぜ?

消毒薬も簡単には手に入らない、抗生物質も無い

痛み止めもない、やがて感染症を起こし

高熱が出る、口はおたふく風のように腫れ上がり

食べ物を口に入れる事も叶わず、お前は飢餓と

高熱に苦しみ最後を迎えるんだ」


ヒロ(まだだ、位置が遠い、話を引き伸ばせ……

僕の背後にレイダーBが居る位置取りは出来た

後は距離を詰め一気に襲撃出来る範囲、

更にレイダーAに掴まれない程に通り過ぎる

必要がある、だが不用意にAに近づくのも危険だ

Cの為に腕でも掴まれ抑えられたらBに近ずく事は

不可能だ、全てが無駄になる)


ヒロ「しっ知ってますよ、ソレくらい

そ、そうだ!条件があります……

僕のグループは二手に分かれています、

片側の情報なら……

その代わり僕が密告した事を口止めと、

僕を見逃す条件で事が済んだ後、

貴方に差し歯を作ることが出来ると思います」


レイダーC「……さ、差し歯だと?」


ヒロ「僕は歯科で助手をしていた経験が

あります、差し歯も何とか出来ると思いますが」

無論それは嘘である、真実に見せる為

知ってる情報を頭で整理しさも出来るかを装う、

絶妙に聞いた事のある言葉を巧みに出す。


レイダーA「嘘クセェな、セラミックなんて

加工できるもんが今あるとは思えねぇが」

ヒロ「アマルガムはご存知でしょうか、昭和に

歯の詰め物として使われた水銀を加工したものです

有害であるには間違いないですが当時は普通に

使われたものです、抗菌作用もあり、虫歯に

なりにくい性質もあります、この時代虫歯は

病気と同じく生命に関わる程危険なのはご存知

でしょう」


レイダーC「アマルガムなんか聞いた事あるな……

差し歯?本当に出来るのか?」

この時代の歯は命に関わる、更に見た目が良くなる

条件は彼にとって相当のご褒美的な甘美なる

条件だ、興味を持つことは自然である。


レイダーB「嘘に決まってんだろ、差し歯ったって

んな代替えの歯どこにあるってんだ」

レイダーC「んなもん、そこいらの人間から

抜いちまえばなぁ?出来んだろ」


ヒロ「あ、はい、ドリルで穴を開ければ出来なくは

ないかと」

レイダーC「……おい、その話本当か?」

レイダーB「待て、インレーとは何だ?」

ヒロ「インレー……」

レイダーB「決まりだな、コイツにってる事は

嘘だ、これは歯医者が使う用語でな、詰め物の事だ

こんな簡単な言葉を知らないとなれば

口から出任せだ」

レイダーC「あ?何だと!このクソ野郎!

人の弱みにつけ込んで淡い夢見させやがって!」


焦るヒロ、嘘がバレたが焦りは策であった

既に配置は理想に近い、


怒った目で猛然と近寄るレイダーC、

僕は片腕を頭の上で防御する形で怯えながら

後退りする、状況が変わってもそれを更に

利用する、冷静さが彼を正しい判断に導いた。


Aの位置を通り過ぎチャンスは来た!体を捻り

右足でCの体を足刀蹴りをするタイミングで

自身の腰に刺した鉄パイプをしっかりと握ると

Cの体を押すように的のデカい胴体部を蹴った、

壁の役目をCの体で補い、勢いをBの方向へと

差し向けると加速のついたままで鉄パイプを

Bの頭上へと勢いよく振り切った!

慌ててナタを取ろうとするBも不意を突かれ

なす術も無く地面へと倒れた。


そこから一番近いAがヒロに襲いかかるも

身を翻し、Bが側に置いていたナタでAの棍棒を

受けるも力の強い腕力に力負けし腕ごと弾かれる


Aは左手でヒロの腕を捕まえたが彼の左手も同時に

Aの腕を巻き込むように絡めると固技で肘ごと

一気に腕をへし折った。

「ぎゃぁ!」

腕を折られヘタリ込むAの顔面にサッカーボールの

ように蹴りを顔面にぶち込むと白目を剥いて

Aも仰向けにその巨体を沈めた……


C「なっ……」

何が起こったか、しばし呆然とするC

ヒロ「あんたよく喋るね……」

C「お前……わざと弱いふりして誘導したのか」

ヒロ「弱いふり?僕が弱いと思ったのは

アンタ自信でしょ?まぁ弱いけど」

C「……クソが、卑怯者め!」


ヒロ「僕はね、クラスでもいたでしょ、力が強い

だけで人をいじめる輩が、僕は過去、その友人を

見捨てた事がある、その事は今でも

ハッキリ覚えてるんだ……」


C「それがどうした?」俺は逆の立場だから弱虫の

気持ちなんか話からねぇぞ」

ヒロ「解ろうとしないからしてたんでしょ……

解らないんじゃない、

偉そうなこと言って僕も屑だったけどね……

見てる者も同罪だとはわかってる

だけど僕はあれから2度とそんな事はしたくないと

武道を習い始めた……努力して強くなったんだ」


C「努力?んなもん俺も実戦で鍛えたぜ」


対峙し構えながらも対話する2人

ヒロ「実戦?アンタのは弱い者を虐めてきただけ

でしょ……」

C「弱いものは強い者に従う、自然の事だろ

それに人と喧嘩するにはいじめであろうが経験には

変わり無ぇだろうが、ソレに負け後のことを考え

行動に移せない弱い奴が悪いとは思わないのか?

俺達だって本当は条件は同じだ、より強い者に

負けた時、従うのが鉄則だ、変わらんぇんだよ

だが俺たちは行動してソレを実戦に変えてきた

違うか?あ?それすら出来ねぇもんが、

語るんじゃねぇよ」


ヒロ「……」


C「言い返せないか?ギャハハ、あんま弱い奴が

正義振りかざして説教たれてんじゃねぇぞ」

ヒロから力が抜けていく……

彼の言葉に言い返すことが出来ない現実に迷いが

出始めたのだった……


すかさず怯んだ隙にCはヒロの胸ぐらを掴むと

一気に壁際まで押し込み、腕を絡める隙と距離を

無くすと頭突きをヒロの顔面に叩き込んだ。


膝を折るように壁にヘタリ込み身を沈めたヒロ、

時間をかけ過ぎた、騒ぎに気づいたレイダーの

仲間が3人またこの場に増えたのが

視界に入るのだった……


ヒロ「……駄目だなぁ僕は」

髪を鷲掴みされ無理やり起こされた体を

Cの拳がめり込む、悶絶しゲロを吐きながら

地面へと這いつくばるヒロは腹を押さえ鼻水を

垂らしながらも痛さからではない涙を流す。


Cの蹴りが腹目がけ飛ぶ、

「おらっ!どうした!今の蹴りはお前が

習った武道の弱さの結果だ!そうだろ?

現実には俺が結局勝ってこうしてお前を

蹴飛ばしてんだからよ!」


更なる拳が今度はヒロを容赦なくぶっ飛ばした。

C「今のはな、お前の中の人生で褒められたり

良かったと思えた事柄が間違った事への報いだ

だってそうだろ?結果間違ってるからそういう

判断をしてきた結果が今殴られてんだから」


殴る度に理由と心を人生を否定していくC

その言葉一つ一つ発せられる度にヒロから

生きる力をも奪っていく……彼に抵抗する力が

抜けていくことを実感したCはいやらしい目で

彼を蛇のような目で責め立てていく

彼の左腕は脱臼し戦える状況でも

なくなっていた。


ゾロゾロと増えるレイダー達

「おいおいどうした、2人倒されてる

じゃねぇか、まさか……このモヤシにか?

ギャハハなっさけねーな」


C「ケッ不意打ち喰らってな、汚ねぇ野郎だ、

やるなら正々堂々とやれってな」

ヒロ「……」


レイダー達「まぁいい、ソレより攫い組みが遅い

何かおかしい、さっさとコイツから居場所

聞き出して退散するぞ」

そう言うと今度は2人がかりでヒロを無理やり

起こすとCが手に布を巻いて殴り始めた。


レイダー「おら早く吐け!ボケ!2人も

やりやがって、逆らう事も出来ねぇ弱虫が!」

執拗に倒れても殴る2人のレイダー、そしてまた

増援が増えるのだった、意識が朦朧とするヒロの

耳に子供達の鳴き声が聞こえる……


レイダー5人組み「おう、見つけたぜ、子供3人共」

「ようやくか、遅いから何かあったと思ったぜ」

C「これでコイツも用無しか、逆らった報いは

受けさせねぇといけねぇから殺しとくぜ」


絶望的だった、レイダーの数は総勢30名、

内3名はクリスに殺され27人がこの場に集結

していたのだった。


ヒロ「ごめ……ん」

子供達の方を向きながら謝るヒロに子供達の声は

更に大きく泣くのだった……


ヒロ「僕には無理だった……最初から無理だった

平和な時も……今も、あの時も、いつもいつも

ごめん……ごめん」

子供がヒロの側に駆け寄ると横たわるヒロの体を

抱きしめた……


マヒロ「お兄ちゃんごめんね、ごめんね……

私達の為にこんな怪我して!えーん」


一際いかつい鋭い目をした男がレイダー群れから

割って入りヒロに近づく、

鋭い目のレイダー「おう、どけ、俺の仲間に

ひでぇ事しやがって、許せねぇ……」

意識の無いレイダーBの前で腰を落とし、

拳を怒りで握りしめるのだった。


鋭い目のレイダー「弱いもんがイキがりやがって

強いもんに逆らった報いは必ずする」

強烈な気に一同が恐怖を感じる程の怒りだ……


レイダー「お、おう?BかAの連れか?

えれぇ殺気だな」


「手伝うぜ」そう言うと全身筋肉の塊のような

男も前へ出て来た……


そしてもう1人……


都合の良い話が転がっている訳ではない

全てがうまくいくなんて事は有りはしない……

あの高揚感に満ちたツリーに飛べた時から

自身が変われたと感じた

だが現実は一階部分には1人

そう1人で事が成し遂げられる程甘くもないし

敵だって作戦にのりチームも組んでいた、

無作為に1人で動いた愚かな行動が招いた事態

そうたった1人で何人いるか解らない場所に

降りた結果だった……

上からは未だゾンビが降る……

僅かな希望は常人離れした強さのクリス

だが彼は今も上で戦うからこそゾンビが降る……


そして残酷なショーが始まろうとしていた……



レイダー談

戦争時、国の争いで犠牲になったものの話は

本当だぜ、倫理が無くなるとな、映画や

作り話より酷い現実は起こるんだぜ

俺の言った話がびっくりするようなら

本当の歴史を知って見るといいぜ


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