迷いなし
少しずつ動き出す可能性の高まり、それは微々たる
成功率だった、少人数での脱出は大規模に変化し
確率を絶望まで落とし光に対しての希望、
それにすがるかの様にハクを中心に
動き出していた。
近藤「ハクさん起きてくださいよ、もう仕事の
時間んですよぉ……」
金沢「コイツ本当に今日の仕事も昨日より
楽になるんだろうな……嘘だったら俺はコイツ
許さねぇぞ」
近藤「いやでも実際楽になったじゃないか、
都合良く木こりの知恵なんて知ってる奴、
早々居ないからな、同じ重量の物を運ぶにしろ
片側を浮かし片側を体重を使い支えるのは
一つの物体に存在する加担する重力と言う力を
一つであっても分散させる事により重さの質量を
変える、体重をかける方の力の重さを
(ーーー定の重さーーー)
軽い( )体重分の重さ=重くなる
垂直になれば端の重さは反対側の加担する重さが
木の重さを超えると0になる
それは重力が下に働くので角度により垂直より
下になればそちら側に重さが加わる。
片側が力持ちだとして、「俺がいっぱい力入れて
持ち上げてやる!」といって持ち上げたとして
持ち上げる角度を大きくすれば、その重さは逆側に
加わり重くなる。
三木「同じ重さが角度により重さが変わる?
んな馬鹿な」
近藤「じゃ持ってみろよ、俺も試したぞ」
三木「物体の重さが変わるなんて事考えた事も
ないぞ……」
「特に女子の仕事率が上がったのは紛れもない
事実だからな」
三木「だがよく考えてみろ……それでも強制的に
成績の悪いものはC棟送りは免れないんだぞ、
いくら仕事が楽になったからって同じだろ」
現実的にそれは免れない事実、いくら作業の効率化
をはかろうが逃げれない壁は容赦なく人の運命を
勝手に決めるのだった。
ハク「寝もい……」
近藤「やっと起きた……行きますよ」
ハク「うーん……誰かおぶって行って……」
三木「俺はやはりコイツを信用できないし
真似た口きくコイツを今すぐ殴りたいぞ……」
ハク「……殴りたいって聞こえたけど?じゃぁさ!
おぶってくれるならさ、次のC棟送り僕が行くよ
このまま成績が均等に順当なら皆は行かず
僕が悪くすれば、しばらく凌げるでしょ?」
何を口走ったのか近藤はしばらく理解ができない
現実の厳しさにこうも簡単にそんな事を口走る
ハクにイライラするように言った。
近藤「あ……アンタ馬鹿なのか?現実が
わかって言ってるとは到底思えない!」
ハク「あーいいのいいの、気にしない気にしない
その代わり……成績悪くしなきゃいけないから
僕は作業場で寝るよ……ムニョムニョおやすみ」
三木「……やはり馬鹿か、まぁいいじゃねぇか、
行ってくれんなら次の査定までは
ビビらねぇで済むからな」
ハク「はい決定……じゃ三木さんご指名で
おんぶ、よろちく~」
三木「……チッ、有難いやらムカつく野郎やら
訳わかんねぇ野郎だ、ほれ」
近藤「この人……なんでこんなに自分を保って
られるのか……」
三木「おい!こら!涎垂れんじゃねぇ!」
近藤は現実とのギャップが凄まじいハクの行動に
安堵感を感じるのだった。
近藤「状況なんて関係ないのかもな、この人に
とっちゃ……」
やり取り後、作業場でハクの指示で作業は
開始された。
近藤「じゃ今日は加工済みの丸太を運ぶよ、
えーと、じゃタイヤ二本しかないから、
真ん中に丸太入れて運ぶ……車の車軸と同じ、
成る程転がせばいいって事か……
更に一本見つかれば3輪車の様に、車の回転軸が
作る暇が無いのであればタイヤの下に滑る物を
入れ方向転換、更に2本見つかれば荷台にして、
だってさ……その辺応用して自分で考えてだって」
三木「あ?考えろ?てか最初のタイヤのやつなんて
1人しか楽にならねぇだろが」
それを聞き思わず吹き出して笑う近藤
近藤「……誰か文句言ったら次の文
読んで、だってさ」
三木「誰がって誰だ……ぐぬぬ」
近藤「行くぞ、今日はとりあえず、紐があるから
纏めて丸太を積み上げて複数の丸太を一本の
丸太にする、形状が○なので積み上げる際紐の位置
を考えて積み上げると、あとは纏めた丸太を複数で
転がせ運ぶ……要は一本の丸太をまとめ上げて10本
纏めて運ぶようなものか、それ相応の太さの紐が
いるな、形状は普通に積み上げる際、確かに一つの
形状になるように縛るのは簡単だ、転がせれば
ここにいる人間の数なら余裕で
20以上はは纏めて運ぶことが出来る」
三木「待てよ、綺麗な筒状じゃないのにそんなの
上手く運べないだろ、途中、引っ掛かったり」
近藤「その際は板を地面と丸太に左右から挟み
てこの原理で動かせと、読まれてるぞ、
お前の言う事しっかりと」
三木「うぐぐムカつく奴だ……」
「ん?……先があるな……これから先は
自分で考えて、だってよ」
三木「あぁあ?やっぱコイツ詐欺師じゃねぇか!
よし今度こそ奴を叩く起きしてくるわ!」
近藤「……いや、待て、最後まで聞け、ふむふむ
話を要約するとだな……」
「無いなら作れ、紐がないなら紡げばいい、
1を10にしても大きさが変わるだけ、
荷台がないなら作ればいい、車輪が無いなら
作ればいい、この先、何があっても対応する力を
身に付けないと状況が変わってしまえばそれで
終わり、基礎は『考える力』小さい頃工作で遊んだ
事を思い出せ、押してダメなら引いてみな
引いてダメらな斜めから、力が必要なら今ある
ものを利用しろ、人に等しく与えてくれる力は
目の前にある見えないだけで……
『火』『風』『水』『熱』『土』『摩擦』『重力』
重ければ重力を派生したり重ねればそれは無限の
力になる、木こりさん同様、同じ力、重力でも
自分の体重を利用する手もある、力は
見えないだけで、そこら中に存在してるよ、だと
今は簡単に重さは摩擦を軽くする事から
考えてみて、だとさ」
「人がいれば人の力は数の多さだけ力になる
個々が動けば足し算、頭脳や連携が加われば
掛け算以上になる、
『人に頼るな、人を頼れ』個々の自立した意思が
重なりあってこそ人の力は生まれる』
だってさ……」
三木「……なんか難しいが、馬鹿な俺にも何となく
わかる気がした、だからか、わざわざ最初は
便利加減が微妙な理由は……」
近藤「追記がある、馬鹿だと思ってる
あなたへ……だと」
近藤が三木を指差し笑った、
三木「……」
近藤「最後にまだあるな」
三木「……なんかまたディスる気か……コイツ」
近藤『何となくわかれば天才だってさ』
少し照れた三木、だがやはりムカつくようで
三木「くそ、やっぱ、最後まで見透かされたようで
ムカつくな、やっぱ起こしてぶん殴ってくる」
そう言いながらもハクの寝顔の前で拳を固める三木
だが世界が変わっても自分が変わる訳ではない
純衣が言ったように、ハクの仲間たちが共通して
言うこの言葉を表すように、こんな状況下で
あってもハクの寝顔は平和を象徴した昔の頃の様に
安らかで馬鹿ズラであった事が三木の心にも
怒りよりも安堵感を強く感じた。
三木「……まぁいいか」
そういうと風邪を引かぬように自分の上着を
そっと優しくハクにかけてやるのだった。
近藤「ハハハ、お前もやられたか、不思議な人
だよな、あの人見てるとどの世界でも、
どんな境遇でも何とかなりそうだし、
自分がイライラしてる事が自分で自分を
追い込んでるだけって現実に思い知らされる様
だからな、にしても上着かけてやるって
お前も優しい事すんだな」
三木は恥ずかしそうに言った
「馬鹿野郎!これから作業で汗かくだろうが、
お、おりゃ自分のために脱いだ先がたまたま、
そうタマタマあの馬鹿が寝ていた場所なんだよ!」
近藤「たまたまねぇ……」
三木「たっ、たまたまだってんだろ……」
近藤は未来を見ることが絶望かどうかは自分次第で
またそれを照らす存在の必要性が今人間には
必要不可欠だと思った。
近藤(実は先があってこの世界に無限に思える程
ある自転車と言う文明の力を使う、
2台の自転車のボディ部分の真ん中に2本板を
差し入れ固定それを荷台とし2名1組で運ぶ
クレーンも然り、自転車を2台、前輪外して
縦に固定サドルを回しも落ち上げると楽
重さに応じ自転車の重ねる数を増やす
時間があれば自転車を逆さに道を作る
車輪を使い板を運ぶ、どう?いっぱい使い道
あるでしょ、自転車は力を伝える時に小さな力を
大きな力に変換し自分の体重含め動かす力の方向性
を変える完成された形だから応用範囲は多い
これを言うかは近藤さんに任せます)
近藤「……今は言わないほうが言いって事ですよね
俺達に考える力をつけなければこの先に対応する
事ができなくなる……ですよね?人は何かに頼ると
自分で考えなくなる政治家に頼り切って腐っていた
政治家に民衆か、昔は皆そうだったな……」
近藤は意味を理解した、先を見据え、答えを出す
事をここにいるみんなの力での大きな意味
そして答えを出してしまえば、人は堕落する
常に考え、希望を小出しにする事により
モチベーションを維持する意味、自信、そして
共同作業による話し合い、結束する意味を」
近藤「大した人だな……」
(だが……この人をC棟送りにしてしまう訳には
行かない、この人の考えや自由さは人が失った
何かを持っている、だが……くそ、誰かを犠牲に
しなきゃ、この人を守れない、いや次回を
誰かを犠牲にしたとしてもその次……そしてまた
次……どうすれば)
三木「おい!近藤、次どうすんだ、今日は坂だぞ」
近藤「あ、すまない、えっと作業中、余った人達で
ゴミにあったロープを繋ぎ合わせて」
三木「アホかつなぎ合わせるってどういう意味だ
一本なんてこんな細いぞ、2本や3本重ねたって
すぐ切れるじゃねぇか」
「えーと女性達で三つ編みにしてだって……
最初はこよりの様に糸を捻り、それを
三つ編みにして強度を増すだって……」
「それで出来たロープを丸太に繋ぎ前二本左右に
後二本左右に、合計4本で坂から落とし
互いが引っ張った紐で中心のバランスを取る
作業場が坂などの時はこれで落として行く……」
三木「坂だから落としてたが、危ない上に板が破損
したりあちこち転がって回収にまた時間が今までは
かってたからな、なるほど安定させるか」
ふと横でぐーぐー寝てるハクを見てまさか?と
言った言葉が口に出る……
近藤「……この人最初から自分が犠牲になりC棟へ
行くつもりだったんんじゃ……」
三木「んな馬鹿なことがあるか、自殺志願者でも
外で自ら命絶った方が楽に逝けるだろ」
近藤「じゃあ何故……坂ないし色んな状況を想定し
紙に書いてあんだよ、説明がつかねぇじゃねぇか」
三木「こいつの考えてる事はわかんねぇ、
とりあえず今は作業に集中だ」
近藤「そうだな……後は後日で丸太を三→並べて
道を作り縦に滑らせてもいいし要は
『摩擦を少なく』すればいいだって」
「最後余った時間はゴミこにあった運動ダイエット
のボールを簡易なロープで縛るか簡易な木で
道を作りその上に木を乗せて運べばいいだって
このやり方は少ない人数で貨物漁船とかを水の上に
運ぶ方法として貧しい国がよくやる手法」
三木「……あ、見た事あるわ、人の手なんかで
動かせる筈のない巨大な船を風船の様なもので
移動させていた、あれか……なら確かに台だけ
作れば……今までの作業とは比べ物にならんぞ」
「他のメモも見せろ……」
「皆がメモを見るとそこにはビッシリと
書かれているそれはモアイの運び方等、
古の知恵から科学的なものまで果ては結果移動の
滑車を用いた運搬車の製造方法が記されていた……」
三木「……なんだこれは」
近藤「……これは俺とお前だけで見よう、
意味わかるな」
三木「……ここまで想定してたとは」
三木もハクの意図がわかった、初日もそうだった
一気にこれを全てのみんなに言って仕舞えば
それは希望とともに混乱し、またどの方法で
行うか、1日の限られた時間で行える作業は少ない
混乱と意見の食い違いでの論争を避ける為だと。
近藤「凄いな……今まで運ぶ事しか考えて
こなかったが工夫次第か、それに大半は貧しい国や
遺跡等で実際行われていたやり方だ……」
「簡単なのもあるぞ……2人1組となり、前後に配置
移動する側の下にビニール等
滑るものを用意、服でも構わないと
紐を使い片側を抑え、座ってていい
腰を痛めず片側だけ肩に担ぐ紐を、そして半円移動
コンパスみたいだな……」
坂のもまだあるぞ……
頑丈な木を2本探し、それに紐を回す▽下側の
三角の先に紐で運ぶ側の木を繋ぎ道木はつなげる
際に先を細かく木に刻み互いの切り刻んだ先を
くっつける、紐で縛り水をかける、
膨張した木の先は括り付けられた摩擦により
強固になる、本のページを互いに挟み合わせるのと
同じだって」
三木「確かに本一つでも厚みがあれば、接着剤や
紐がなくても人間が余裕でぶら下げられる」
三木「……なぁ近藤、俺こいつをC棟に
行かせちゃいけない気がするんだ」
近藤「……俺もだ」
三木「なら誰か犠牲にならなきゃな……」
近藤「……俺が」
三木「……俺が」
2人の口から出た言葉は同じだった、その言葉を
口にする勇気は如何程の事なのか
それはたった一つしかない自分だけが持つ『命』
をかけてでも生かしておきたい気持ち
それは未来に繋がる可能性という物だっただろう
機械や道具でも無い人の中に詰まった可能性は
不安定で不確かな物、そんな曖昧な物に命を
賭ける事など考えもしなかった彼らだった、
実験では何が行われるかもわからない恐怖が
他人を思う気持ちを勝る瞬間、
それは情ばかりではない、また自分以外の人間が
どうなろうと誰も気にしない、が極限状態に人は
我を失いつつあったが不確定な大いなる影響力を
持つ可能性のある希望を前にした時、人は後世に
繋ぐ何かを前に繋ぎたくなる時がある
それは幕末で志士が、その逆の立場の者も
未来に繋ぎ命をかけた事と似ているかも知れない。
ふと神妙な顔をする2人の背後にハクが立っていた
三木「……」
近藤「……ハクさん話があります」
ハク「僕はC棟に行くよ」
2人がこれから話そうとする言葉をまるで
知っていたかのように先に言葉を発したハク
三木「馬鹿野郎!お前は必要な人間だ!」
ハク「……三木さんもね」
近藤「俺らが生きてるより」
すかさず言葉を遮るハク
ハク「それは無い、人の命の重さに比重は無いよ」
三木「馬鹿野郎……」
ハク「僕はね、ここに居る人達を助ける為に此処
に来たけどね、それは仲間の意思だから、
僕はその意向についていってるだけ、
僕自身が救いたい訳じゃ無い、
正直、僕は人が嫌いだから、気にせずドーンとC棟
送りになっても気にしない、しない!」
あっけらかんとした顔で気軽に答えた。
三木「おい、俺たちがどうなっても本当は
何とも思わないとでも言いたいのか?」
ハク「そうだね、全く何んーにも」
近藤「……」
三木「心配して損したわ、そうだな人は利己的に
動く、それが自然かクソ所詮人間なんて」
ハク「そうでない人もいるけどね、実際僕は此処に
いる理由は誠の意思だから、彼がその気にならねば
僕は此処にいない、そして僕は大切な仲間の為に
今は動くけど他はどうでもいい」
三木は握った拳に身を震わせた……
裏切られた気持ちなのか声を震わせ怒鳴りつけた
三木「信用したのによ!お前の事!この詐欺師野郎
テメェなんぞC棟へさっさと行きやがれ!いや
俺が今ここで屑野郎をぶち殺してやる!」
止めようとする近藤を振り払い猛然と殴りかかった
怒りを乗せた右手の拳がハクの頬を捉え
彼は吹き飛んだ……
ハク「いてて……これだから人は嫌いだ」
近藤もまた手が震え怒りに自分を抑えるのが
精一杯だった……
三木「とっとと作業始めるぞ、お前は此処で地獄の
C棟行くまで楽しい夢でも見て寝てやがれ」
ハクは倒れたまま寝た、片手に三木が掛けた
上着を握り締めながら、
三木「……そのまま寝るんかい!」
しかも俺の上着しっかり掴みやがって……
下を向き拳を震わせた……
三木「これでいいんだよな……」
近藤「そうだな、オレ達だけはこの人の意向を
汲み取って助けになろう」
三木「たくっ、言ってる事と行動が
合って無えんだよ、この馬鹿は、
嘘が下手過ぎだろ……
あんな細かく書いた紙、それだけで時間くった
ろうに、それが後の事、いやもっと先の
俺たちが生きる為の力まで学ばせようと、
考えてる奴が……口より行動がこんなにも
確かで心に響くってのを初めて知ったぜ……」
近藤「あぁそうだな、口であれこれ助けるとか
言っていた方が信じられなかったな」
三木「俺はコイツが何かする為に此処に来た
と思う、それが何かわからねぇが、これから
奴が起こす行動で例え犠牲が出ても
俺は最後までコイツの味方でいるぜ」
近藤「あぁ俺もだ」
こうして作業は事なく進んでいく夜になると
ハクは再び鍵を開け外へと出かけていった。
ナンバーの回すU字タイプの鍵を上に引っ張り
何やらコソコソと……
一つ一つを回す……音と周りに悪い場所にナンバー
を合わせ5つのナンバーを全て同じ動作を繰り返す
「カチッ」鍵は開きそろっと外へ出た
鍵の前で不審な動きをするハクにB棟の1人が不審に
思い近づく……
それを寝たふりをした三木と近藤が止めていた。
ハクがそれに気づいたかどうかはわからない
だが人の行動は連鎖する……誰かの助け無くして
物事は成し遂げる事は出来無い。
そしてこの小さな出来事はやがて彼らの命を助け
希望を見せ、また奪う事にも繋がる……




