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クリス30 バイオ兵器④


蜥蜴型の動きが早くゾンビの間を縫う様に動く

時には壁や天井をも地面を這うが如くその動きは

人の動体視力では追いつかない程だった。


目で追う事すら困難な状況に苦戦する彼等、

蜥蜴ばかりでは無いゾンビの数にも注意を払う、

クリス、ボルド以外は感染が懸念される中

戦い続ける事は安易ではなかった、疲労は蓄積し

やがて判断力や体力を大きく削られて行く……


クリス「流石に体が重くなって来やがったな

蜥蜴の特性か、早い……理解はしていたが瞬時の

判断にこの身体の反応速度が蜥蜴のスピードに

追いつかねぇ、元は生命体だ疲れもあるか……」


視界に入ったと思えばもうそこには居ない


姿を明確に捉える事は出来ない中、

動き回りながらもドームに蜥蜴の声が反響し

響き渡る不気味な音が360度から聞こえる様だった


蜥蜴「ヒャハハ!どうした?汚物がどんなに

足掻こうが進化を遂げた我を目で追うこすら

出来ぬのか!ノロマな人間よ我の動きを

捉える事が出来無いだろう?出来る訳は無いわ、

お前達の肉を削ぎ落とす時間だぁぞぉお

その我が身の肉を目に恐怖を感じろ、流れる血は

お前達から生命力と精神力を剥ぎ取ってやる

絶望に苦しむ顔を早く……早く見せておくれ」


クリス「ドロア!このままでは機能が

落ちるばかりだ」


ドロア「言っただろうが、確かにお前の言うとおり

痛覚を与えれば強さは増した、それは認めよう

だが無理なのだよ」


クリス「あぁ無理だな、この機体だけでは、

最初から解ってたよ」


ドロア「解っていた?やはりお前も愚かな

勢いだけの若者か」


ドロアの手が最終手段のボタンに近付いて行く


クリス「……まぁ慌てんなよ、

何か勘違いしてる様だが俺は1人で

戦ってんじゃねぇよな、どんな優秀な肉体だろうが

機械だろうが個々が1人の能力なんてどんな

特出してようが大差ねぇ」


「最初っから奴等込みで目的を果たす事だ」


ドロア「何か策があっての話か、もしくは

この有様で粋がってるだけか、好きにするが良い

最早答えは見えておるが……

だが今しばらくシルブァの思いにこのボタンは

押さずに見届けてやる、言ってみろ伝えよう」


そして作戦は始まる、イルガがドロアからの無線で

作戦の概要を伝えられると直ぐに行動は開始された


イルガ「黒兵、さっきの作戦続行だ、だが銃撃では

蜥蜴の身体には致命傷は与えられん

奴もそれを理解している、少々銃弾が当たろうと

滑る肉体に弾丸が通り難い、それに再生能力が高い

故に奴を追い込むにはより高い威力を持つ

手榴弾を用いる、数も限られている慎重に行くぞ」


「ラルと黒兵は左側から手榴弾を投げつつ蜥蜴を

クリスの方へ行く様に誘導、ボルドと俺は右側の

ゾンビ掃討と同じく奴の逃げ道を封鎖する、

蜥蜴をクリスのいる場所へと追い込め!」


黒兵「了解しました!隊長、手榴弾を分けます

そしてラル!これを使え、手榴弾だ」

私が投げる隙はお前が銃を、お前が投げる時は

私が銃を、爆破は間を置かず常に蜥蜴を

右に追い詰めろ、姿が見えても無理に当てようと

思うな!左に抜けられたら終わりだ」


ラル「チッわーてるよ、道を塞ぎゃ良いんだろ

逃げるルートの壁は爆破で無理やり作るって

こったな、だが……コックオフ寸前だぞ銃も」


黒兵「だが一瞬でも隙ができればもう終わりだ

爆弾の数からしてこの賭けは一回限りだ、

誰がミスしても終わりだ」


ラル「だがなゾンビの数もまだ多い!

撃てる隙はあっても投げる隙は殆どねぇぞ!

それでもやるのか!」


ボルド「私がなんとかする」

そう言うとボルドは先程クリスが使用し、

使わなくなった曲がった配管を握り

彼等手前にいるゾンビをなぎ倒して時間を作った。


イルガ「行くぞ!」

爆発音が辺りに地響きを伴いゾンビもろとも

吹き飛ばす、作戦通り彼らは素早く動く蜥蜴に

当てるのではなく端から銃撃と爆破を繰り返した。


イルガ「いいか蜥蜴が上に逃げ無い様、爆弾は

上から下に落ちる起動で投げろ」


けたたましい音が辺りに響く、最早爆弾の破壊で

コンクリート片や粉塵で辺りが見え難い状況だった

しかし彼等の策に見える必要はない、元々追い込む

漁業の様な策に人の目は必要とし無いのと同じだ、

銃は(注1)コックオフやファウリング寸前、

実質これが彼等の最後の銃撃戦になる事は

間違いなかった。


彼等の中央に陣取りボルトは配管を振り回す、

左右の爆発陣が中央に近づいた様を見て素早く

後方へと移動する。


そして爆発がクロスするかの様な近さに近づいた時

身体の至る所をゾンビに噛みつかれながらも

微動だにせず神経を集中させたクリスの乗る

搭乗型試験体の腕が伸び一気に蜥蜴を捕らえた。


クリス「へへっ捕まえたぜ」


蜥蜴「なっ!何故私の動きを!搭乗型の

反応速度からして我を捉えられる筈は無い!」


ぬるぬる滑る蜥蜴の身体の首を掴んだクリス

多少の滑りは体の凹凸つまり頭の頭骨と体の型に

当たる部分を支えにパワーでねじ込んだ指が

奴の首に食い込む。


クリス「この身体はな、背中にも目が付いてんだよ

周りが見え、尚かつイルガ達が此方に誘導してんだ

動きを見るんじゃなくそこから予測しただけの事だ

それになお前の素早さの一つは尋常ではない四肢の

筋肉だけじゃねぇ、本能だろう、人の死角を常に

意識している動きは虫がよく行う落下速度を

利用したものだろう」


蜥蜴「……」


クリス「蚊が人の手によって消える様に見えるのは

その動きを下にするからだ、視線の方向は常に上、

左右に集中する、故にすくい上げるように予測を

加えればお前の方から捕まりに来てくれんだよ」


蜥蜴「捕まえた所で主に何が出来ると言うのだ!

私の体は常に粘液で覆われている、握り潰そうにも

力が入らないであろう!」


そう言うと蜥蜴は身体中から突起物を一斉に出し

その指を切り刻んだのだった、

搭乗型のゾンビの中指、人差し指は千切れ飛び

血が吹き出すも握る力は蜥蜴の予想と反して

緩むどころか一層にも増して力が込められた。


クリス「残念だな、それ……待ってたぜ、

予測してなければ、いくら首を掴んだと言えど

指の力は抜けてたろうけどな、当て外れだったな

俺の予測勝ちだ、お陰で握りやすくなった」


彼は蜥蜴の行動パターンを読んでいた、当然抜ける

為の行動をするだろう、それが逆にクリスにとって

次に繋がる策の一つだったとは蜥蜴も

予想し無かった。


握りつけられた蜥蜴の体からの突起物が滑る肉体を

支える土台となり締め付けが一層強く

込められたのだ、押しつけられる圧力に蜥蜴の舌は

ダランと伸びる様に出る、苦しそうな表情を

浮かべ苦しみ出した。


蜥蜴「うギャァあ!クソが!」

目を真っ赤にし脱出を図るべく、出した突起物を

納めようとするも圧迫された体に一度出した

突起物を収める事もできず苦痛の表情を浮かべた。


蜥蜴「貴様!離せ!クソが!だが!

粘液で滑るには変わらないわ!」

そう言うと体を捻る様に一層ウネウネ動かし始めた


クリス「ドロア今だ!イルガに伝えろ!」


その掛け声と共にクリスは壁に向け蜥蜴の突起物の

硬さを利用し壁に何度も打ち付ける、先端は壁に

少しめり込むもの穴を開ける事は叶わなかった、

だがその2人の方向に向かいイルガが

手榴弾を投げ始めたのだった。


黒兵「た、隊長!何を!」


そう言うのも当然だ、手榴弾の威力は

蜥蜴のみならずクリスの乗る搭乗型の肉体までも

傷つけ肉片が飛び散っていたからだ。


イルガ「私の行動に構うな!各々自分の仕事を

確実にこなせ!」


クリスは蜥蜴を仕留めるべく壁に何度も

何度も凄まじいパワーで打ち続ける、


イルガ「次は攻撃型だ……クリス」


悲痛な顔をしながらイルガが攻撃型手榴弾を投げる

搭乗型ゾンビの打ち付ける拳のタイミングに合わせ

投げられた攻撃型手榴弾の衝撃波は壁に打ち付ける

クリスの蜥蜴を打ち付けるパワーにのり

破壊力が桁外れに増していく


だがそれは搭乗型の背中の防御板を持ってしても

クリスにも衝撃波は伝わるのだった……

破裂型と違い殺傷能力は落ちるものの

クリスは搭乗型ゾンビ内部で吐血していた、

いわゆる内臓損傷である。


クリス「まだだ!……まだ!」


イルガの手からタイミングを見計らった手榴弾が

そこにいる全てのダメージを加えていたように

見えたが蜥蜴は軟体故に多少のダメージは

受けつつも威力を殺していた。


ラル「奴にはあまり効いてねぇみたいだぞ!

それよりクリスのゾンビの方が背中の肉が飛び

散ってやがる!肘もヒデェ、骨が見え始めてる

ボロボロじゃねぇか!」


イルガ「もう俺達にやれる事はない!ゾンビの数も

格段と減った、残りのゾンビを駆逐せよ!」


ラル「弾切れだ、黒兵お前はどうだ」


黒兵「私ももう無い」


ラル「なら白兵戦だな、もうこの数だ、やれる」


イルガ「よし、各自白兵戦だよ油断するなよ

噛まれても、手を床に着いても終わりだ、

クリスにゾンビを近づけさせるな!」


幾度となくクリスは右手に握る蜥蜴の突起物を

利用し壁に拳を打ち付けた、拳からは肉や血が

辺りに飛び、その度にドームに激しい轟音が

鳴り響いていた。


クリス「まだか!」

『ドン!ドン!ドン』


「くそ固ぇな!だがもう少しだ!

だが血を流しすぎた……パワーと動きが格段と

落ちてきてる」


壁のヒビはう打つごとに大きくなり、やがて

辺りのコンクリートのヒビが雲の巣の様に

なっていったが残された搭乗型の

生命は消えかけているのだった。


クリスは蜥蜴を握りしめたまま動きを止めた……


蜥蜴「ヒヒヒ諦めたか!無駄な事と理解したか

その落ちる一方のパワーでは最早、

お前が何をしようと叶わ無いと、その壁を破壊して

何をしようとしたかは知らぬが諦めは潔いと

私は生前人間に教わった、それが人の限界だよ」


搭乗型の肩につく目が蜥蜴の方に視線を向けた。


クリス「お前はそうやって諦めたのか……」

諦めが人間の強さではない、むしろ逆だ、

なぁ?そうだろ?」


そう言うとクリスは搭乗型の配電板を優しく撫でる

様に呟いた。


クリス「なぁ……2人でやろうぜ、俺は諦めねぇぞ

お前はどうだ……肉体で脳が無いなんて

言い訳は無しだぜ?俺の考えがお前とお同じなら」


最早ズタボロになり鬱血する様な搭乗型の

青い腕に血管が浮き出始め赤く紅葉し始めた。


クリス「後一撃だ……頼む!持ってくれ!

お前の生きた証、ここで証明してやれ!」


「いっけぇぇええ‼︎」


鬼気迫る顔のクリスが渾身の力で最後の一撃を加え

クリスの想いと同調したかのような豪腕が

地震でも起きたかの様な地響きと共に壁に

打ち付けられた、その想いに相応しい

一層大きな穴を開け勢い余った搭乗型のゾンビの

巨軀と共に掴んで離さ無い蜥蜴もろとも

ドームから下落していった。


衝撃でドームの天井からコンクリート片が複数

激しく落下、それに巻き込まれたゾンビ達の

残りをイルガ達は一斉に掃討しつつクリスが

落ちた落下地点へと集結した。


ラル「派手に落ちたな……見ろクリスの乗る体は

動かねぇが……蜥蜴はまだもがいてるぜ、

抜け出すまですぐだろう作戦は失敗か」


ドームにドロアの声が響き渡った。


ドロア「見事だ……ドアを開ける、今ならお前達を

出してやる」

(可能性はこれまでほぼ0だった……

分析では得られなかった数々の成果か、

人の思いは科学では作れ無い……と言う事か)


黒兵「……終わったのか」


イルガ「……」


ラル「さっさと出るぞ」



ーーーラル談ーーー

注1

コックオフ 『薬室内の弾が自然発火』

ファウリング『銃身が連射により焦げ付く

やがて銃先は溶け出し撃てなくなる。


マシンガンは便利だ、だが一方で熱管理は大事な

一つだ、ゲームや映画でもあるだろう、見つけて

やたらめったら使いすぎるとやがて銃の先は溶け

使い物にならなくなる。特に大型マシンガンなんて

溶けて先が落ちるぞ、いいか生き残るには全てに

置いて生きる知識を身につけるんだ、


お前は大量のゾンビに囲まれたらどうする?

銃があればぶっ放しまくるか、倒せるならそれも

ありだが、今後おの中を台無しにしても価値の

ある戦い方かどうか判断しろ、


目の前にいる敵を倒すだけに執着すれば

お前は終わりだ、ルートを確保する為常に考えろ

そして半分の量で逃げ道を確保し、そこから

逃れる事もまたお前の命を長らえさせるだろうさ。

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