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クリス28バイオ兵器②



イルガ「円陣を組め!いいか、回り込まれれば

全ては終わりだ、各自前にいる敵は必ず倒せ!」


次々に銃弾に倒れるゾンビ、だが数は増すばかり

の状況に焦りは一層高まる。


ラル「んな事わかってる!だが数が多すぎるぞ

今までの比じゃねぇ!」


あまりに多いゾンビ達に苦戦する彼等だった、

何故こんなにゾンビが集まっているのか……

それは頭脳を持つ蜥蜴型によるものだった。

脳が人間により支配されたその怪物は憎しみに

知能を乗せ確実に獲物を追い詰める策に

出ていたのだった。


迫りくるゾンビとの距離が次第に狭まっていく

10メートル……

黒兵「射速が数に追いつかない!」

8メートル……

イルガ「此処を凌ば出口だ!全ての武器を

使い切るつもりで撃て!」

5メートル……

ラル「ふざけんな!ふざけんな!ふざけんな!」


モス「ははっ、もう駄目……だ」


『カチャカチャ』引き金を引くも弾は出ない……

弾切れを起こし気力も失せたモスの目には既に

生きる気力すら失くしていた……


「どうせこうなるなら……

クリスを見捨てるんじゃなかった」


ラル「今更何言ってやがる!俺のマガジン使え」


モス「……もういい」


ラル「馬鹿野郎!足掻くなら最後まで足掻け!

どんなに生き方が汚かろうが貶されようが

諦めたら終わり何だよ!ボケが!お前の人生なんか

俺の知ったこっちゃねぇが今ここでお前が倒れたら

俺が迷惑なんだよ!」


モス「ははっ迷惑か!そりゃ好都合だ」

モスは銃を捨てゾンビに背を向けて立った。


ラル「テメぇぇえ!」

モス「……」


「俺は友を捨てた……後悔している、お前のせいだ

どうせ……どうせ、こうなるなら俺は……」


モスの背後に覆いかぶさる様にゾンビが

のしかかり肩の肉を抉りカナギリ声の様な奇声を

挙げた、次々とモスに襲い来るゾンビを前に

ラルはサイドから押し寄せるゾンビの群れを

撃ちながらも視線をモスから離せなかった……


ラル「……」


モス「お前だじ……此処で皆んなくだばっぢま……」

押し寄せるゾンビに片膝を突く、そして重みに

耐えれなくなった体はやがて這いつくばる様に

四肢は地面へと、だが目線だけはモス達から絶対に

外さなかった、顔が半分抉れ唇も殆ど

抉り取られたモスが恨み悲しみ、自分の行いの

懺悔の怒りをラル達に向け最後の言葉を発した……


「ぐ……だばれ……」

やがてゾンビの山が積み上げられ、そのひしめく

隙間から飛び散る鮮血が辺りを赤に染める

ラルは埋もれ行く中にもモスの冷たい

視線をいつまでも感じた……


ラル「……馬鹿が」

徐々に端に追いやられ周りをゾンビに囲まれた

イルガ達だった……


黒兵「も……もう駄目だ、

隊長……お世話になりました」

既に彼等から1メートル程の距離まで近づいた

撃てど撃てど倒したゾンビを足げに次々と襲いくる

恐怖の具現化、絶望という言葉しか脳に浮かばない

彼等も覚悟を心のどこかで感じていた。


イルガ「諦める暇があったら撃て!」

黒兵「もう駄目ですよ……こんな状況

助かる訳無いじゃ無いですか……」


ラル「クソが……」


イルガ(残す爆弾は3個、だがこの距離で

使うわけにもいかぬ、どちらにしろこの人数だ

投げるモーションをした瞬間雪崩れ込まれて

終わりだ……」

(そして天井には蜥蜴か……)

イルガは気付いていた、彼等のいる場所の真上

天井に張り付き長い髪をなびかせた蜥蜴型試験体が

此方の方をニタニタと笑う不気味な影に、


イルガ(だが我々を易々ゾンビの餌にする気は

ないだろう、襲い来るタイミングはゾンビが

私達を襲う瞬間、そこに賭けるか……

どの道もうその位一瞬に賭けるしか手はない)


反動で銃がブレるも既に近くまで来ている大群に

的を絞る必要もない、ナイフを取り出し

左手でナイフを構えながらも撃ち続けるイルガが

黒兵へと言葉を伝えた。

イルガ「まだ手榴弾はあるな、俺が足止めする、

その隙に出口へ走れ!」


黒兵「今1人でも抜ければそんなの直ぐに

囲まれてしまいます!

それにたった1人でどうするんですか!」


イルガは目で上を見ろと合図、黒兵は天井を

見た瞬間、腰が抜けそうになった……

黒兵「!」


イルガ「声を出すな気づかれれば

今直ぐ襲ってくるぞ……」


黒兵は慌て平然を装うも嫌な汗が全身から

噴き出す様な恐怖に叫び出しそうだった。


イルガ「出来るだけ粘る、試験体のパワーは

凄まじい、奴が襲って来る時がチャンスだ

そしてそれはもう来る、俺は近接攻撃に備る

そして此処にいるゾンビを巻き込んで

道を作ってやる……」


黒兵「そんな……」


イルガ「俺と試験体が暴れている間に

ゾンビ共の数の減った場所へともかく投げろ、

そして道を作り逃げるんだ……いいか振り返るな

道はわかってるな、俺が蜥蜴に食われながらでも

必ず道は作ってやる」


黒兵「隊長……」

隊長が弱音を吐くなんて初めて見た黒兵は驚きを

隠せない、だが状況を打破するには誰かが犠牲に

ならねばならない事も同時に理解したのだった。

同時に親同然の様に慕って来たイルガを囮に

使い自分達だけ助かるより自分が犠牲になる方が

そう感じた黒兵は自らの終わりを意味する発言の

恐怖を封じ込め振り絞る様に決意を声に出した。


黒兵「わ……私がその任務」

即座に言いかけた黒兵にイルガが言葉で遮った。

イルガ「任務優先と言った!腰の引けたお前に

何が出来るゾンビを巻き込んで派手に

立ち回る事が出来るのは今俺だけだ、

余計なことは考えず任務を完遂する

事だけを考えろ」


彼には彼の思いがあった部下の命をミッションの

為とは言え、国を、世界を救う大義名分があろうと

此処まで犠牲にした部下達に酬いるため

だがそれを口にすることは無かった

情を見せれば悲しみが彼に一生付き纏う

イルガが任務に忠実である意味は彼の正義、

そして彼なりの部下達への温情でもあった。


ラル「もう駄目だ!押し切られる、来るぞ!」

その言葉を皮切りに彼等の前へイルガの予想通り

蜥蜴型が天井から降ってきたのだった。


ラル「気付いてたが……俺ら餌をゾンビに喰わせる

気はねぇってことだな」


凄まじい回転を出し不気味な背中の頭部の長い女の

髪が渦を巻き体から突起した粗雑な錆びた剣の様な

突起物複数が一瞬で彼等の前のゾンビを肉片と

化しながら軽く20体は吹き飛ばした。


蜥蜴型試験体「……」


後ろ姿の試験体が不気味に首を器用に反転させ

此方を睨みつけた、血だらけの髪の隙間から

裂けた口が不気味な笑いを彼等に見せつけた、

「ヒヒヒ……内臓をくり抜いて生きたまま私が

受けた痛みを味わうがいい、食ラッテやる、

この腐った世の中を作った目を、ヘドロの様な

嘘や悲しみを生むその口を!金や権力を生み

無垢なる魂をも金という紙にも劣る扱いをする

その脳を!女を欲望の餌に食い尽くす

股ぐらさも!全て食い尽くしてやる!

滅亡するべきはお前達だ!人間めぇえええ!……」


「私が恐ろしいか……醜いか……

私にはお前達の方が遥かに猥褻で愚かで

醜く見えるぞぉぉ……

その愚かさを私の中で取り込む様に溶かし

この地球の救世主となる私と

一つになるがぇぇ……」


一語一句に言葉が体に響く、誰もが銃を

撃ちながらも、試験体が語る言葉に耳を傾けざるを

得なかった。

「いい事をおじえでやろう、私は、お前達を

食らいながら生殖器だけを切り取り私の子宮へと

放り込む、お前達の精子を我に取り込ませ

私は子孫を生むのだ、私とまぐわう事で

お前達は私と共に永遠に苦しみ、お前達の手で

この地球の人間全てを私とお前達人間の子孫の手で

滅亡させてやる」


「いいか、単体でも産める私だが人の手で、

この世を私は汚したいのだ!それは人間の罪を

懺悔する好機だよ、

私が……癒してあげるわぁぁあああ!」


意味不明な言葉を発しミチミチと背中の肉から

音を出し頭部を体にめり込ませる試験体。

攻撃態勢に入った体を左右に揺らしながら

蜥蜴が獲物を捉える素早い動きで猛然と

イルガ目掛け襲い掛かった、


イルガ「後は任せたぞ」


がーー

その瞬間彼等のいる横壁が地響きと轟音を伴い

爆発するかの様にコンクリートの壁が

辺りに派手に飛び散った、

巨軀の搭乗型試験体に乗るクリスが蜥蜴型に向かい

突進をぶちかまし、その勢いに見合った衝撃は

蜥蜴の体を大きく飛ばし壁にめり込ませた。


巨体にしてスピードが生み出す風圧に時差を生じ

イルガ達も中腰にならないと態勢を崩しそうに

なる位だった、勢いは凄まじく優に8メートルは

近くのゾンビを巻き込みながら吹き飛んで行った。


突然の出来事にイルガ達同様、壁にめり込む

蜥蜴型試験体すら状況を掴めずにいたが、

直ぐ様ドロアからマイク放送が入った。


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