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クリス21 人の限界



出口迄駆け走る彼等だったが、此処に来て更に

運命に翻弄される。


無事通路を抜けたと思った隔壁が開かなかったのだ

ドロア教授に稼働する通路を開けてもらい回り道

をする彼等が到達した先に待ち構えていたのは

元々会う可能性の高かった大型ゾンビ3体にボスと

言うに相応わしい改造ゾンビだった。


そのボスゾンビの腕力は我等人間の想像を遥かに

超えたものだった……


ラル「おい……見たか、近くにいるゾンビを軽く

握り潰したぞ」


モス「あぁ……2体目を此方に投げたゾンビ

ありゃトマトじゃねぇよな……まだ天井に

貼り付いてやがる」


ラル「おい!イルガ!あんなの勝てねぇぞ!」


イルガ「わかっている、私もショットガンを奴に

何発か当てたが、反射速度も高い、身を縮め

あの太い両腕をクロスさせ身を守った、腕に

巻かれているあの防御板に恐らく皮膚内にも

仕組まれた防御板もあるだろう、その重さに

耐えうる腕力がゴリラの腕と言う訳か

救いは移動が遅い事位か……」


「背後さえ取れれば……だがこの通路内では

それも難しい」


その時ドロアから連絡が入る


ドロア「苦戦してるようじゃな、無理は無い

此方も復旧に人手がいるが、力には力、増援を

一体だけなら送る事ができる、今お前達の後の壁

から合流する」


彼の言う通り研究室で見た様な一見隙間の無い様に

見える場所から線が薄ら浮かび出たかと思えばドア

が開き増援のクラスターが姿を現した時、

皆が驚きを隠せなかった、それは……


クリス「ま……まさか」


モス「おいおい!生きてやがったか!この野郎!

心配かけやがって」


彼等の目に映ったのはボルドであった……


だが何かが違う……見た目はそのままだが傷付いた

腕に怪我も無く、其れよりもクリス達を見ても

眉一つ動かなさない、そうまるで初めてあった時の

様であった。


ドロア「ワシだもう着いただろう、

薄々気付いておるとは思うが彼はボルドであり

ボルドでは無いクローンだ、試験体ボルド25」


クリス「おいボルド25て、どう言う意味だ」


ドロア「名の通りボルドの25体目のクローンだ」


クリス「テメェ……簡単にクローン何て抜かして

んじゃねーぞ!命、何だと思ってやがる!」


ドロア「ワシが作った命にとやかく言われる事でも

無い、それに大義のために手段は選ぶ必要は無い」


ラル「やめとけ!ガキが、命だ?お前も其れを

奪うのを生業にしてきただろうが、今更何言って

やがる」


「それに戦力には違い無い、俺はドロアに感謝

するぜ、俺達の為に命かけて戦え!」


興奮するクリスを不思議そうに見るボルド


クリスの哀しい目……そして其れを見つめる

シルブァの姿があった。


ボルド「時間が有りません、直ぐに任務開始します

状況は拮抗しています、私が先行する隙に活路を」


そう言うと素早く彼等の間をすり抜けボルドは

改造ゾンビの前に立ちはだかる大型ゾンビと対峙

両腕を絡ませ力比べに入った。


クラスターゾンビVSリミッターゾンビ

その力は数秒は均等でありながらも、徐々に

ボルドが押されていく……


イルガ「駄目か……元々リミッターの限界近くで

制御しているボルドに向こうは後も先も無い

暴走状態だ、時間経過まで粘れれば勝機はあるが」


だがその数秒の間にクリスが駆ける、イルガの横を

風の様に通り過ぎボルドが対峙するゾンビの

脇に入り込み斬ろうとするがもう一体の

大型ゾンビが前に出てたかと思うと強烈な一撃を

クリスに放つ、


両手で防御するも丸太で殴られるような衝撃に

身体ごと皆がいる方へと戻される様に軽く

吹き飛ばされた。


四つん這いになり尚も駆け出そうとするクリスの

前にイルガが立つ、一瞬の隙をイルガは見逃さない


イルガ「今だ!クリスを吹き飛ばした側の

ゾンビを撃て!」


一斉射撃に殴った体勢を戻す暇も無い

大型ゾンビの首から上は一気に吹き飛んだ。


其れを見た改造ゾンビが対峙するボルドを力任せに

壁に放り投げ大型ゾンビを守る様に再び腕を

交差、防御体勢に入り大型ゾンビの身を守った。


ラル「まさか守ったのか?何だアイツ意思があるぞ

ゾンビがゾンビを守るなんて、どう言うこった!」


シルブァ「意思は無い筈です、本能でしょう

結合部分に拒絶反応を抑える為遺伝子側に

野生動物のゴリラの細胞を組み込んであります

その生態が反応していると思われます、

ゴリラは群れで行動する動物に愛護

精神が高い生物だからでしょう」


その状況を打破すべく改造ゾンビに尚も立ち向かう

ボルドだったが脇から大型ゾンビもボルドに

襲いかかる……


改造ゾンビは片手を防御体制を取りながらも

クラスターゾンビのボルドを片手でまたも力比べ

の態勢に入りボルドの動きを封じた。


その背後から大型ゾンビに背中から噛みつかれる

ボルド……


身動きの取れないボルドにどうする事も出来ず

皆もまた銃を向けるも立ち尽くすしかなかった


だがイルガ達の脇を再びクリスが駆け抜けた……


イルガ「無理だ!クリス!下がれ!」


クリス「……やなこった」


クリス「ボルド!2度もテメェを犠牲にはさせねぇ

してたまるか!」


だが其れを止めたのは意外な人物シルブァだった。


クリス「離せ!」


シルブァ(今までの合理的な動きの彼では無い

何故この者はボルドを助けに行こうとする?

助けられる可能性はかなり低い筈なのに)


ラル「やはり腕が立つといってもまだ若いな」

そう言うとシルブァに押さえつけられているクリス

の側に近づくと徐ろに顔面を殴りつけた。


地面へと這いつくばるクリスはそれでも尚視線は

ボルドから離さなかった、そして見た光景

それは1人戦い、力比べに負け片腕をへし折られた

ボルドの姿だった。


ラル「おいおい役立たずじゃねぇか、これじゃ

なんの為に出てきたんだ?アイツ

さっきと同じじゃねぇか」


唾を吐き項垂れるラルの背後に異様な気を放つ影が

立ち上がった……


クリスだった……


その異様な気に気落とされシルブァの掴む手の力が

緩む、強引に引き離す事も無くクリスが呟く


「……離せ」


シルブァに恐怖は無い……だが何かが

そうさせたのか理解は出来なかったがクリスを掴む

その手は離れた……


意思をシャットダウンし目は一点を見つめ、寒気が

する様な鋭い視線をゾンビに向けるクリス。


ツカツカと歩き彼等の脇を通り過ぎようとした彼を

我に帰ったシルブァが再び止めようとするが

その行為を抑止したのはイルガだった。


シルブァ「……」

「このまま行かせては戦力が減ります」


イルガ「俺はそうは思わん」


シルブァ「確実に減ります、

認める訳にはいきません」


イルガ「なら俺がお前の敵になるだろう……」


その言葉に更に戦力低下が起きれば任務を確実に

遂行出来なくなる事を理解したシルブァ


(彼とボルドが減る方がまだ任務を達成出来る

可能性が高い……か)


下がるシルブァ


イルガ「見ていろ……俺は何度かこう言うタイプの

人間を見てきた」


シルブァ(……)


コンバットナイフを両腕に持ちユックリと歩き

近づくクリスに皆、無謀さしか感じなかった。


黒兵「止めなくて良いのですか?シルブァが言う

様に戦力が減りますよ?しかもナイフ2本なんて

馬鹿でもしませんよ」


イルガは答えた。


「人には限界を超えた力がある、それが人の強さだ

我等はチームで其れを超えるが、お前にも、そして

私にも彼の様な純粋な気持ちがあれば単体でも

其れを為し得る者が世の中には居る」


ラル「合理的でもねぇ、アホか、んな理想に

巻き込まれる俺らの身にもなれってんだ」


シルブァはラルを見た、そしてイルガを……

だが興味はあった、今まであった人ではない『人』

最後には剣をしまいクリスから目を離さなかった。


クリス「俺は……幾つ友を失った」


ブツブツと独り言を言う、


「俺に守れる物はねぇのか……俺に友はいねぇのか

俺に資格はあるのか……答えは『無い』


がーー


彼は駆けた、改造ゾンビを守る様に立ちはだかる

大型ゾンビの右豪腕が彼を肉片に変えようと

ストレートパンチを繰り出す、だがクリスは

瞬きもせずナイフの刃を外側に向け、

ほんの半歩サイドに移動する、


拳は彼の横を通り過ぎる際ナイフが大型ゾンビの

腕を切り裂いた、力で抵抗するのでは無く、

避ける行為に全神経を集中に注ぐ

攻撃を省く分、攻撃に意識を分散する事無く

ギリギリでかわす事で敵自らが傷ついて行く

古武道等である交差法である。

【受けの動作が直接攻撃に繋がる】


立て続けに左のフック気味の豪腕パンチがクリスの

テンプルを狙い打ち放たれるも彼は豪腕の

風圧を利用し下へ身を下ろしながらもまたナイフを

攻撃する腕に添わす様に力を込める訳でもなく

避けると同時に更に大型ゾンビを傷つけてゆく。


軽くステップを踏み込と既にボルドが動きを

封じている改造ゾンビをもすり抜けボルドの

背後から襲う大型ゾンビの居る場所へと

難なく辿り着いたのだった。


彼の目は一層鋭く、氷の様な目をしていた、だが

心は熱く煮えたぎる怒りの全てを集中力に向け

ボルドの背後から噛み付き襲う大型ゾンビに

2本のナイフを一気に腕に食い込ませ

切り裂きながら捻り込んだ。


腕の腱をズタボロにされたゾンビが腕をダランと

垂らしたその瞬間間髪入れず腕を交差させたクリス

の前に落ちる大型ゾンビの頭があった……


モス「マジか……やりやがった……」


イルガ「今だ!散弾は使うな!改造タイプに

一斉射撃しろ!」


そう言い放つと一斉射撃がクリスの援護に入る

改造ゾンビは身を守る為、ボルドを離し腕を交差、

身を縮こませ防御体制に入る、その隙を突き

シルブァも一気に駆けボルドをクリスと2人で抱え

イルガ達の元へと連れて行くのだった。


シルブァ(生存率はゼロだった筈なのに……更に

ボルドもクリスも無事……だ、何が起こった?)


だが考える暇も運命は与える事はない、都合の良い

展開など、そんな物は存在しなかった。


今まで改造ゾンビの威圧感に本能的恐怖を

感じていたノーマルゾンビが縮みこんだ

改造ゾンビに恐怖心は薄れ一斉に彼等を

襲い始めたのだった。


更に悪い事は続く、数体の大型ゾンビが暴れ、

通常のゾンビでは破壊出来ない強化ガラスの窓を

破壊し始めたのだ、人で言う癇癪みたいな物だった


ラル「どんどん知恵や感情があるゾンビが

増えてきたな、これは今までよりやべぇかもな」


イルガ「来たぞ!だが身動きの取れない先程

よりはマシだ!撃て!此処が正念場だ撃って撃って

撃ちまくれ!」


ラル「何処がマシだ!慰めならもっと上手い事

言いやがれ!」


クリス「……ボルド中央にいろ」


モス「さっきこの光景見た様な……

デジャブーを見てる様だぜ……」


クリス「あぁ……今度こそ俺はそのデジャブーを

超えて見せる!」

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[一言] また死んだはずの黒兵が発言している。
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