病院
病院に着いた2人は従業員用の裏から侵入辺りを偵
察する。侵入口にはゾンビの姿はなかった、時折
聞こえて来るドアの軋みの音に明は恐怖が隠しき
れない。
明「今の所……無事だね、薬は別棟の処方箋薬局
にあるよ、早く行って帰ろう」
ハクは明の顔をじっとみる……汗に手が震えてい
る、声もうわずっていた事から安心させる必要が
あると判断した、過剰な恐怖や心配事は察知や判
断に間違いが起きやすい、それは1人でなく白も含
め残してきた全員に関わる事態になりかねない。
ハク「念の為、拳銃渡しておくよ、中身は三発し
か無いから、あと銃声はゾンビを呼ぶから、此処
で使うのは賢いとは言えない、あの時の経験でわ
かったと思うけど……かなり危険になるまでは決
して使わない事」
頷く明は真剣に話を聞く。
「ゾンビは動きは遅いけど人数の多さと、痛みを
感じない事が怖いから、ピストルで撃っても大し
た効果は無いコレも学んだと思うけど気をつけて
拳銃はいざの時と人間用だと思って」
明「……そうだね、解った、対、人間用かゾンビ
も人間も習性は然程変わらないのかもしれないね」
それでも武器を持った事により明が落ち着き始め
た、お守りより効果的、人には武器という事だ。
ハク「……そうだね、自分主義は同じかも、よし、
見える範囲にはゾンビ無し行動開始」
別棟へと外側の裏から回る、視界にはゾンビは三
体、樹木や植木等を利用し、他のゾンビからは見
えない角度から、左右に分かれ一体目を誘い出す。
左側がワザと自分の姿を視界に入れる、そして徐
々に後退、ゾンビを誘導する、右側待ち構えたも
う1人は待機、ゾンビが後ろ向きになるのを待って
静かに背後から仕留めるのだ。
明は民家にあった包丁を使った、ハクはビリボ君
で転倒させNEWビリボ君の尖った先で心臓を狙う。
出血により急速に動きが鈍くなり倒れるゾンビ。
コレを一体、一体繰り返し、進んで行く、別棟に
着くまでにも50分程かかる地道な作業だ。
明「よくゾンビは頭狙うって言うけど何故心臓な
んだい?」
ハク「頭は頭骨があるし滑り易い、脳のどこかし
らにウイルス作用があるかは、まだ知らべ切って
いないけど、原理的に、体が動くって事は脳はや
られてるが血液循環はある筈、中の血液量を減ら
せば、動きは止まるのが自然だし心臓は狙い易い」
明「ははーん成る程」
ハク「さっきも言ったけど肋骨はあるから、ある
程度狙いは正確にね後は噛まれたりしても、映画
みたいに伝染しないと思う」
「唾液とか粘膜感染というよりもパンデミックの
早さから空気感染の可能性が高いと思うんだ、そ
う言う意味なら、命を落とした時にゾンビ化現象
になる事も説明が出来る」
「故に僕達も既に感染してるとは思うけど映画で
見る、噛まれたらという意味は同じかも知れない
けどゾンビ最大の脅威はコモトドラゴンの様に病
原体の集まりと思った方がいい、なんせ腐ってる
部分も多いし、血液の循環も悪い、抵抗力もなく
は無いだろうけど最早、機能していないと思った
方がいい、食欲の欲望は高い事から噛まれれば、
ゾンビウイルスが!とは違い感染症の原因で命を
落とす確率はかなり高いというかソレが殆どだと
思う」
明「そう言えばそうだね、うん、わかる、そう言
えば、俺達を救ってくれた後、消毒薬で体拭いて
たもんな」
ハク「砂糖もよく使うよ」
明「あー聞いた事がある、塩は有名だけど痛くな
く消毒の代わりに使える可能性がある外国ではそ
れを実践してる病院もあるとか」
ハク「消毒は大事だからね、いつか、物資が消え
た時は作るしか無いけど今はまだ、色々使える物
があるからね」
明「人が作った文明の恩恵はまだ生きてるって事
か……」
ハク「無人島にいる訳では無いからね」
明「着いた、ここだ!鍵は持ってる、真美さんに
渡されたやつ」
ハク(用心を怠らないか、あの人やるね)
鍵を開けて、辺りを見渡す……
静かにドアを閉める音にも緊張が走る、荒らされ
た後があり、辺りに散乱する薬や書類が散乱して
いた。
慎重に足音にも注意し保管庫へと向かう、ガラス
張りな事もあり、身を低く、外にいるゾンビの視
界に入らないように。
ハク「映画みたいに何か落とさない様に」
言われてすぐに明の足元に転がってる試験官を蹴
りそうになり冷や汗が……
明「……そ、そうだね、何か細かい事で注意点が
あったら言ってね……」
いくらガラスがあったとて、何体か集まれば大き
なショーウインドのガラス等、体重を乗せれば、
何体かが重なればひとたまりも無い、ましてや袋
小路に近い、保管庫では慎重をいくら重ねても足
らない位だ。
ガラス越しに2体のゾンビが彷徨い歩く姿を見た
明から更に汗が滲む……ハク「入ってきたドア鍵
しめた?」
明「あ、いつもの癖で締めた……」
ハク「探す前に鍵を開けて置いて、ドアが開けれ
ないゾンビには鍵でなくてもちゃんと閉めてれば
ノブは回せないからその間に中にゾンビがいるか
調べる」
ゾンビが複数の場合、下手な音は出せない事から
鈴(音の鳴る)は此処では使用出来ず視認による
確認が必要だった。
明「解った」
ドアの鍵を開け、明の指示に従い物色し始めるハ
ク達、しかし殆どの薬品は既に荒らされ、必要な
モノは無かった。
明「ダメだ無い……」
ハク「……仕方ないな、何か今後使えそうな薬と
かも集めておこう、あ……後消毒薬って作れるな
かなぁ?」
明「あぁ、それの材料なら此処に揃ってる、かな
り乱暴だが塩素系漂白剤が使えない事もないから、
それなら、此処以外でも手に入るよ」
ハク「へぇ、後で詳しく教えてよ、必要な物は取
り敢えず持っていこう」
明「あぁ、詰めれるだけ詰めておくよ……なぁ、
こんな時に無駄話も何だけど、住んでた場所もわ
からないんだよね?」
そう言うとハクの胸に刺さったペンを見ながら、
「気になってたんだけど、君の今使ってるそのノー
トに書いてるペン確か青葉大学卒業記念のやつじゃ
無いか?あの大学は卒業の記念にペンをくれて、そ
う、毎年違う色のペンを贈答品として贈る習慣が
あるんだよね」
ハク「ペン?これの事?」
明「そうそう実は俺も青葉大卒業生なんだよ」
ハク「確かに青葉大30期卒業記念て掘ってある」
明「やっぱり!何処かで見た事あると思ったんだ
よなぁ……」
ハク「静かにね」
明「あ……ごめん」
明「俺の友達で同じ大学に行ってた奴、知ってる
よ!何か君の身元の情報の助けになればいいんだ
けど、同じ色のペンだから同期な筈、丁度そいつ、
ウチの病院に入院してたんだ、もう退院したけど、
確か……名前は」
「……そうだ、稲森晴!名前に見覚えないか?」
ハク「……ゴメン、思い出せないや」
明「まぁ同期と言っても人数も多いから、いきなり
ヒットとは行かないだろうけど、そいつに聞けば
何かわかるんじゃないか?」
「そいつ地元此処だから、家もここからは、そう
遠くはない、落ち着いたら行ってみよう、記憶も
何か戻るキッカケになるかも知れないし、それに、
おいおい思い出すかも知れないから焦る事はない、
よし物資は集まった」
何かに気づき明の行動を止めるハク
ハク「ちょい待って……」
明「どうした?早く、戻ろう」
ハク「シッ……ゾンビの呻き声が消えた」
明「いい事なんだよね?……そうだと言ってくれ」
ドアに耳を当て様子を伺う。
ハク「囲まれてる」
明とハクに緊張が走る。
普段は探索の際、慎重を極めるハクだったが、鈴
の薬への焦りもあり、配慮の欠けた行動が招いた
失態であった。
ハク「ゴメン俺のミスだ……僕が出る、恐らく捕
まるかも知れないから、明はそれ持って鈴の元に
行って欲しい」
明「どう言う意味だ、人か!」
ハク「聞いて、今は僕は鈴の為に役に立たない、
明と真美が頼りなんだ、鈴の事頼めるよね」
明「大した物資は無かったけど、仕事上言わせて
貰うが恐らく鈴ちゃんは一時的なものだと思うし、
いや断定は出来ないが」
ハク「断定できないモノには賛成出来ない、もし?
なんて言う想定外はもういい、今は鈴の事だけ考
え行動したいんだ」
明「……そこまで言うなら、でも君1人置いてけな
いよ」
ハク「僕は1人でも大丈夫、女性3人でいる事の方
が何かと危ないし不便だろうし、今は明の存在が
彼女達や鈴にも必要なんだ」
明「……解った」
ハク「じゃあ奥に隠れてて」
急ぎ奥に身を隠す明にビリボ君も渡し、ハクは無
防備状態でドアを開けた。
武装した男「はい、そこまで泥棒め」
こめかみに銃を突き付けられた、予想通り外に待
機していた人達に捕まるハク。
男「よし、他に居ないか中を探せ」
1人の男が銃を構え、ドアに手を伸ばすも大きく深
呼吸するハク。
ハク「すーーーぅ」
するとハクは突然、大声で叫んだ。
ハク「お腹減ったー!」
男「おい、黙れ!」
周りの男「おい黙らせろ!ゾンビがよって来る!
糞!」
ハクは殴られ地面に倒れた。
声に反応し辺りからゾンビの呻き声が此方に近づく
男「チッ、集まって来やがった、オラ、行くぞ!」
数人に引きずられハクは姿を消した。




