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クリス14 葛藤


急ぎクリス達は出口のドアへ駆けた、敵、ゾンビ

との距離が離れた『今』がチャンスではあったが

リミッターの切れたゾンビの猛追は彼等の

予想を遥かに越えていた。


モスとクリスはボルドを両脇に抱え急ぐも倒れた

ゾンビの亡骸や血糊で足を取られる、追い討ちを

かける様に入り混じったゾンビの中のリミッター

が切れたゾンビのスピードに焦りを隠せなかった


モス「うわ!やはり速いぞ!アイツら、これじゃ

ボルド抱えて無くても、まともに走ったとしても

追いつかれるぞ!」


『ヒュッ』


だが彼等の頭上を再び手榴弾が飛んで行く

光景が目に映る。


イルガ「攻撃型だ!距離はある!そのまま走れ!」


クリス「モス!衝撃波が来るぞ!」


クリスが叫ぶと同時に背後から爆発による

衝撃波が彼等の背中から身体ごと前方へ押し出す、

その勢いにモスは足を取られ転倒するも一度離した

手を前転で転がり再び起き上がり素早くボルドを

の脇に飛び込み支えながら必死に逃げるのだった。


彼等3人が何とか無事ドアに到着する……

ヘタリ込むモスが半ば切れ気味に叫ぶ

モス「はっ、早く閉めてくれ!」


ロフエルと黒兵がドアを閉めるも身体ごとドアに

ぶつかるゾンビにイルガは口を開く。


イルガ「此処のドアは薄い、あの勢いのゾンビに

耐えられるとは思えない、先を急いそぐぞ!」


モス「おいおい……」

腰を下ろし息き絶え絶えのモス


イルガの言葉を聞き黒兵とシルブァが先頭に立ち

素早く先行を切り保管庫へ急ぐ、追従する様に

イルガも走った。


ドアを見つめるラル……

追撃の身体ごとドアに獲物を求めぶつかる音が

鈍く彼等の耳に振動と共に伝わるのだった。


ラル「……このドア確かに薄いな」

ロフエル「恐らく通常の出入り口の為だろう

隔離する隔壁のドアでは無いな、もって5分か」


ラルはクリスの腫れ上がった手を見つめる。

ロフエルは腕の使えなくなったボルトを見つめ

再びラルとロフエルは顔を見合わせた。


モス「よっこらしょ……ゾンビにはなりたく無い

行くぞクリス」


クリスは銃の撃ちすぎて赤く腫れ上がった手首を

固定する様に布を巻き付けている。


ラルとロフエルはクリスに見えない角度に移動し

腕の使えなくなったボルドの両脇に抱え

立ち上がらせるのだった。


ボルド「すまない……」


ラル「なに……良いって事よ」

ロフエル「困った時はお互い様……だろ?」


そう言うとドアを開け2人はボルドを放り出した。

ラル「そーれ!」

ロフエル「そーれ!」


ドアを閉め窓に顔をやりラルはボルトに呟いた。

「困った時はお互い様だ」

ロフエル「そう言う事だ」


クリス「!」

「何やってる!」


ラル「おいおい……」

両手を挙げ降参するかの様な手振りでクリスに

言い放った。


ロフエルがラルとクリス間に入り説いた。


「このままアイツを連れて行ってもメリットはねぇ

足手纏いだ、それは紛れも無い事実だ、

解ってるだろうソレは、其れにどうせ、お前は

出来ないだろうから代わりにやってやったまでだ」


ロフエル「このまま奴がドア前で餌になり

出入り口で固まりが出来るそうなれば

後方のゾンビもドア目掛け走る勢いのついた

ドア破壊いも塞げる」


ラル「それに奴が餌になり血肉も飛ぶだろう

山なりになった状態で上手くいけばゾンビに

ドアの出入り口への視界が悪くなり認識が

出来なくなる可能性だってある」


そう言うと近くの倒れたゾンビの頭を握りドアに

血をガラス窓に押し付ける様に塗り付け

視界を防ぐ工作を施した。


クリス「……」

ラル「異論はねぇな?」


ロフエル「当然だろう」


クリス「……あぁ合理的かつ単純で

クールな選択だ」


モス「……」


ラル「さぁ行こうぜ、奴は人間じゃねぇんだ

気にする事でも元々無ぇ、生き残ったって

兵器に使われるだけだ、奴も本望だろうよ、

生きた人間様の役に立てるんだぜ?」


「……」


ラル「行くぞ!気が済んだら早く来いよ

離れすぎたら援護はしねぇぞ!」


彼等にも思う事がある気持ちも

解らない訳では無かった、少しの時間を2人に

与え2人は通路の先保管庫へ向けて

イルガ達の向かう場所へと駆け出した」


モス「……行こうぜ」

「奴等の言う事は最もだ、残念ながら全てに於いて

奴がこのままいたら少なくても俺とお前は巻き添え

でくたばっちまう」


立ち上がり腕に巻いた布を見つめ

血濡れた窓を見つめた。

其処に見た光景はボルドの戦う姿

腕は使えず残った右手で振り払う様にゾンビを

薙ぎ倒し亡骸をドアの方へと投げ入れていた

少し振り向いた気がしたクリスの目にはボルドの

顔が哀しく映った……


モス「クリ……ス?お前まさか!辞めろ!」

後退せずドアを見つめるクリス


クリス「アイツさ、押し出される瞬間

抵抗しなかっただろ……奴の右手は生きてる、

だのにだ、お前も奴の反射神経は横で見たろ」


モス「あぁわかってる!わかってるから辞めろ」


ドアに手を置き振り向き様に笑顔で答えた。


「置いてかレンのは寂しいよな……

この場所に実験体として生き、体は大きいが

まだ頭は子供じゃねぇか、純真で素直で良い奴だ

俺にはアイツらよりボルドの方がよっぽど

人間に見えるがな……」


そう言うとドアを一気に開け1人外へ出た彼だった。


モス「馬鹿野郎!お前を待ってる家族

いんだろーが!」


その叫びを聞いたラル、ロフエルが振り返り

状況を把握した。


ラル「馬鹿かアイツは」

ロフエル「良い奴は長生き出来ないからな

潮時だったんだろ、自ら寿命を縮める、

人間らしく無い行動だ」


外に出るとボルトは1人戦っていた、使える右手を

振り回しては転倒する痛々しい姿だった。

その度に懸命に起き上がる、動かせなくなった

左手は身体を動かす度にブランブランと鞭の様に

自らの体に当たり時には視界までも奪い隙を突き

ゾンビに噛みつかれて行く。


ブチブチと筋繊維を噛みちぎられ嫌な音が

辺りに響くーー


更に膨張させた右手と使い物にならなくなった

左手とのバランスが上手く取れない彼は一撃を

放つ度に大きく転倒する。


だが彼はドアを背後に守る様に立つ。

ボルド(ファーザー貴方の為に私は使命を

果たします、地球の為、我等の様な者が

必要無くなる未来に……託します)


渾身の拳を握るボルドの前に再び騒ぎの音を

聞き付け割れた窓から湧き上がるかの様に

姿を現し群がり始めたゾンビ集団。


踏み締める場所はもう血と肉しか目に

入らないのでは無いかと思わせる異臭と血で染まる


異様に腫れ上がり使い過ぎた右腕も限界が来ていた

筋繊維の断裂が激しく真っ赤になったその腕は

破裂寸前のように見えた。

腕を見つめ心を鎮める様に一呼吸を置き呟いた。


ボルド「……最後の一撃だ」


その時ボルドの背後からマシンガンの弾が前方の

ゾンビ共を弾き飛ばして行く。


クリス「下がれ!」


ボルド「!」


「何故来た?」

「コレでは私のした事が無意味ではないか」


クリス「んな事、俺の知った事か!」

マシンガンを両手でシッカリ持ちブレが生じない

様に腰に銃の柄をあてがう様に震える手で

ゾンビの頭部を正確に連射して行く。


その内一体が隙間を抜けてクリスへと

飛び込んで行く光景がボルドの視界に入り

援護に向かおうとするが足を血糊に

取られたのだった……


ボルド「ま、間に合わない!」


その言葉を発すると同時にゾンビの頭部が

弾け飛び勢い良く一回転して倒れたのである。

ボルドが後方を見ると其処に立って

いたのはモスだった。


モス「甘えとけって言ったろ?」

ボルド「貴方まで……」


クリス「……無茶しやがって」

モス「てめーが言うんじゃねー!クソ来ちまった」


ボルド(何故来た?私の細胞は保管室にある、

此処で倒れたとしても再び復活出来る替のある

私の為にたった一つしか無い彼等人間で

あるはずの存在が何故?弱い筈の……彼等が)


(ファザーは言った、人は醜悪で矮小な存在だと

現に一部の人間はそれに見合う合理的な考えの

元、私を突き飛ばした……)


彼の目に映る2人はボルドが教えられた人間の

存在とは相入れないモノに見えた。


冷静に表情一つ変えずひたすらに敵を撃つクリス

その見た目とは裏腹な行動心理、赤く腫れた腕で

何かを守る為に身体を張る男。


そして見た目鼻水を垂らし、涙目で無様に戦うモス

その中にも動物や生物に見られる合理性とは

かけ離れた行動が理解し難いモノだった。


だが普段感情の起伏が無いボルドの中に熱く

哀しく切ない不思議な感覚が胸を支配して行った。

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