熱
2人はこの近くにあった最上病院の看護師だった。
あの襲撃の後、病院は多くの患者が犠牲になった、
異星人は緑の大柄な体躯をしていた事からグリー
ンマン【通称、グリマン】と呼ばれていた。
病院の犠牲は異星人襲撃により多くの犠牲者が出
た病院内でのパンデミックによるものだった。彼
等もグリマンの姿は見たが、都心及び、武力のあ
る自衛隊中心に一斉攻撃された為、特に都心と言
えない規模の界隈は壊滅的打撃は免れていた。
それでも市内の電気系統は遮断、自家発電や医師
不足もあり多くの犠牲が出た為、被害は一気に拡
大した。
異星人の戦略として、わざわざ危険を犯して地上
に降りる矛盾さから、ゾンビウイルスの様なモノ
を撒き散らし、今現場にあるこの状態を引き起こ
してから侵略を始める事など当然と言えば当然で
ある、そこから逃げて来た2人という訳である。
病院内は多数のゾンビが徘徊するらしい、彼等が
逃げて来た時点でその数50体は超えると予想され
た、男の名は山口明、女の名は東堂真実、東堂が
先輩にあたる。
東堂「真実でいいわ、そう呼んで」
山口「じゃぁ俺も明で、よろしく」
直感では、あるものの悪い人物には見えない、そ
れでもハクはまだ鈴を会わせる気にはならなかっ
た。
明「見た所若そうだけど幾つなの?」
ハク「記憶が曖昧で……」
真美「記憶喪失なの?珍しい……」
「ちょっといい?」
「昔の事は何も覚えて無いの?」
ハク「断片的には覚えている部分もあるけど
真美「そう……」
ポケットから小銭を取り出す真美。
真美「コレは何円かわかる?」
ハク「……100円」
真美「じゃぁコレは?」
ハク「5円」
真美「……嘘はついていない様ね」
明「何してるんですか?」
真美「人間はねお金は忘れないモノなの、記憶喪
失が嘘かどうか判断する材料になるのよ、解らな
いと言えば嘘の確率がかなり高いわ、彼はお金に
対しては記憶がある、信じてもいいみたい」
ハク「助けた俺を疑うと?」
真美「ごめんなさい……私達も色々あったから、
人が怖いのよ……」
ハク「……解りました、信用します」
明「それで何でしんようになるの???」
ハク「人を疑うって事は用心してる事にもなるし、
助けた人に逆に疑う何て、普通はしないからね、
それに背後関係があるならもう既に連絡してる筈
だし」
「病院はここから20分と言ってた、そして背後関
係があるなら、トイレ2人とも行きましたよね、
10分位してから、それで2時間経った現在でも囲
まれてる様子も無い美優に見張りはさせてるから、
異星人のスコープは人間のソレよりも優秀だし熱
感知も付いている、つまり僕達に気付かれず、人
員を配置する事は難しい、故の答えです」
真美「……よく解らないけど信用して貰えて良かっ
た。今の説明でこちらも疑う余地は無いわ、貴方
達も怯えてるのね……人間に」
膝までかかるスカートを握り締め唇を噛む真美、
それを見たハクはそれ以上、この2人がどうやって
此処に辿り着いたかは聞かなかった。
明「この先1キロ西に行った所に糞みたいな奴らが
コミュニティを作ってる場所がある、僕らも目的
は東京何だ、良かったら」
ハク「……」
2人のこの世界での適合性は先の戦いで解っていた、
2人の子供を含め、あと2人の面倒を見切れるかハ
クは考えた、答えはイエスでありノーである。
ハク「この近くに安全な場所を提供します、それ
で駄目でしょうか……」
真美「……私達にも家族がいるの……有り難い話だ
けど、お断りするわ……」
明「でも、俺達2人で東京まで辿りつくのは難しい
よ……奴等にも追われている、奴等から遠く離れ
たい気持ちは解るけど」
真美「……」
ドアが開き美優が部屋へ入って来た。
美優「ハク!」
ハク「来ちゃ駄目て行ったじゃん」
美優「鈴の容体がおかしいの!」
ハクが恐れていた事態になった、旅の疲れには充
分、注意はしてた筈だが、それでも旅慣れない子
供の体調はどう変化するか予想はしきれなかった。
席を立つハクの袖を掴む真美
真美「私達は看護師よ、見てあげる」
「但し条件があるわ……わかってるとは思うけど」
ハク「……」
合意するしか手は無かった、医療に関して知識が
全く無いハクにとって彼等もまた、今必要な人物
である事は明白であった。
ハク「……わかった」
「了承したら、もう考えても仕方ないや!では頼
むね、俺も信用する、鈴ちゃんを頼みます」
鈴のいる部屋ーー
真美「熱は何時からあったか解る?」
美優「解らない……朝は元気だったのに」
真美「そう、確かに高熱状態みたいね、大抵は安
静にして寝てればよくなるものなのだけど、食欲
は?」
美優「ここに着いたら吐いてて、食欲も無いみた
いです……」
真美「体温計がないからハッキリとした事は言え
ないけど、一旦解熱剤で落ち着かせて回復を待っ
てみましょう」
ハク「これ以前集めた薬だけど解熱剤はあるかな」
明「あ、見せて」
明「……無いよ」
ハク「病院が西にあるって言ってたよね」
いうが早いかハクはリュックを背負った。
明「ちょっと待ち!病院はゾンビだらけだよ1人で
行く気かい!そりゃ無茶ってもんだ」
ハク「無茶?鈴が苦しんでる姿見る方が無茶って
事、美優、ここに残って鈴を頼む、銃も置いてい
く、いつもの様に安全は確保して、待ってて」
美優「ハク……わかった」
明「……行きたく無いけど俺も行くよ」
ハク「真美さん、2人の事、任せていいですか?
約束は必ず、守りますから……」
真美「契約なんて言ってごめんなさい……大丈夫、
医療に携わる者として、置いて行く選択肢はホン
トは最初から無いわ、私も、この子を守るから」
ハク「……ありがとう」
美優「待ってハク……少し前の事、ごめんなさい」
ハク「前の事?覚えて無いから気にしないで」
「行ってくる!」
美優(ゾンビの大群見せるって言った事よ!バカ!
……でもハクが鈴の事心配してくれての発言って
今わかった、あんなに心配してくれた)
「ありがとう……」
【今日のポイント】
薬は重要だ、持病がある人は薬名を書いた
ものを事前に用意しておくといい。
特に奪い合いになりやすい物としては
痛み止め
胃腸薬
風邪薬
等ががあげられる。
ゾンビが現れたら消毒薬は必須アイテムと
なるでしょう、病原体の集合マンション
みたいな生き物ですからね……