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クリス⑥


トランシーバー『ガー……ガガ聞こえるな』


クリス「……あぁ」

するどい眼光で辺りの情報をかき集める

彼は黒兵の居た場所其々を既に記憶していた

足元から地面の土を見て動いた者を確認する。


影の存在はあるか?土に足跡があるか?

息……の音は?風は……俺達を囲むならどう配置する

いや目的に応じ陣形は変えているのか?

逃げ道は?等、あらゆる想定を繰り返す。


(2人は移動したか……足跡から向こう側だな

後は……動きは無し囲まれているには変わらないか)


イルガ『いいか。よく聴け、我々と共に、

この施設の最深部に行ってもらう、進め、

その前にお前達に武器の所持を許可する、背後に

置いてある拳銃は1人一丁短銃のみ、それに

コンバットナイフを一つだ手に取ったら前へ進め』


モス「やれやれ10㍉じゃねぇか……こんな豆鉄砲で

戦えってか、まぁマトモな武器渡す訳はないとは

思ったけどな」


無いよりマシだと思う皆であったが、対人間に

対してもこの弾では防弾ベストを着ている者に

対しては、ほぼ武器とは言えない代物ではあった。


クリス達は其々武器を拾い、銃の点検と安全装置を

外し銃を構え指示通り前へ進む……


湿気が高く少し先の空間が歪んで見える、

クリスは先程と違い温度が急に上がり始めた事を

感じていた、入ってきた時の温度は約10度肌寒く

感じた、だが今は気温28度位だ、

そんな状況の中ラルやモスは胸のシャツのボタンを

更に外し体温を下げる、


クリス「わざわざ俺達に武器を渡す位だ

何かあるには違い無い、気を付けろ」


ラル「わーてるよ、言われなくてもこの雰囲気で

気をつけない方がオカシイってもんだぜ……」


ホログラムで映る天井を見上げる、蒸気が

立ち込めるも空は青かった。

だが天井に着いた血だけは投影した映像に歪みを

生み恐怖を駆り立てた。


クリスは入ってきたドア付近に着目する、

ホログラムといえど壁は外気との温度差での変化を

見ていた、手で付近を触ると手に付着する水滴が

壁、つまり端、境界線である事を認識する。


モス「それに見えない監視付きだ……監視カメラの

方がまだプライバシーが守られるってもんだ」


ロフエル「無駄口を叩くな、ちくしょ俺にも装備

渡せよ……」


互いが互いを守ように4人が菱形の陣を張り

一歩一歩進む……汗が額を伝う。


エド「おい何か聞こえないか?」


その瞬間木々がざわめきだす、皆がその方向に

一斉に銃を構えた、


『ガサガサ』

4つの銃、恐らくは黒兵達もその方向に銃を

構えているだろう、無骨な無数の銃を前に

得体の知れない物体は恐怖を感じる事なくフワフワ

浮いた感じでやがて俺達の視界近くまで来ると歩を

止めた様だった。


モス「……なんだアレ?見えるか?」

エド「あぁ見えるには見えるが何だ?ありゃ」


そこにボンヤリと浮かぶ白い光が二つ


凝視する彼等に薄らと得体の知れぬ何かの全貌が

蒸気の霧を掻き分け少しづつ姿を現す……


エド「……何だ?人間か?にしてはやけに目が白い

それに痩せた身体に泥だらけじゃねぇか」


「あの口に着いてる赤って乾いてるが

血だよな……」


ラル「おいこれ以上近寄るな!撃つぞ」


クリスは膝を落とし地面に手を入れる、

すくい上げた土を指でこねくり回す。


不気味な人間かと思われる者はユラユラ動きながら

彼等に近寄って来た、よく見ると足元に流れる血、

噛み付いている鼠も数匹引き連れての姿は

不気味でしかない。


クリス「……チッやっぱりホラーかよ」


後退しながらも周りを把握するクリスはマイクで

イルガに問う。


「進路はどっちだ?」


イルガ「その白い奴の背後に赤いサイレンが

回っているのが見えるだろう、そこだ」


ラル「ケッわざわざ奴の背後に出口があるなんざ

出来過ぎだろ」


イルガ「隊員が今ドアのキーロックを解除中だ

1分耐えろ」


クリス「1分ねぇ……お前らも手伝わないと

全滅するぜ?」


イルガ「どういう意味だ」


クリス「んな防具に頼ってるから周りが

見えないじゃねぇか?」


黒兵達がその言葉に反応し辺りを見渡す……

なるべく遠くまで見ようとはするが可視化を防ぐ

防具を施した彼等はクリス達の反逆を恐れライトを

つける事なく目で見ようとしていた。


1人の隊員が声を上げる。


黒兵「うわ!隊長!何者かに足を捕まっ……」

「ウワァア!!噛っ噛まれた!」


クリス「白い男に泥がつき、目は白い、彼の視力は

ほぼ無いだろう、だが俺達に近づいた、答えは視力

以外の感覚で位置を掴んでいる、それに身体に

泥が付いてただろう?地面を見ろ」


イルガが隊員に声を荒げ叫ぶ


「地面だ!銃を構えろ!ホログラムを解け!

同士討ちになるぞ!」


だが時は遅かった、ホログラム等、嗅覚か聴力に

感覚を頼ると思われるその人型は地面から

湧き出る様に一斉に起き出した、あたり一帯から

続々と地面が盛り上がり姿を現す、

呻き声を挙げ何かに枯渇したソレは一斉に

湧き出るかのように這いずり廻り出した。


モス「うわっ!きっしょ!」


その数30体は軽く超える。


クリスが4人に聞こえる位の小声で指示を出す。

「おい下がれっ……声は出すなよ……壁際に行け、

背後を取られる心配は無い」


小声で皆に指示をだすクリスの言葉は黒兵には

届かず、陣形を崩さずその場を立ち止まっていた

黒兵達に一斉に襲いかかる不気味な人型。


ロフエル「これゾンビじゃねぇか……んなもん

架空であって存在する訳ねぇよな?」


その言葉が今までは真実だったが今此処で黒兵達を

襲う姿を目の当たりにした彼等は本当の真実は

見た物、そう認めざるを得なかった。


装備なんか無視し複数のゾンビが噛みつく、防弾

ベストだろうが指だろうが構わない獣以下の頭脳で

あたり構わず噛む、他勢のゾンビはやがて防具の

隙間の首や唇を噛みちぎり鼻を噛み引きちぎった。


黒兵「だ……だずげ……」


懸命にもがくも群れは容赦無く無残な

行為を続ける、噛んだ歯が暴れる兵の

動きに耐えれず抜けながらも尚執拗に噛み付く

蟻が餌に群がるかの様に瞬く間に襲い倒れた兵の

上にゾンビによる山を作った。


イルガ「撃つな、発砲音に反応するかも知れん」

だが恐怖に駆られた兵の1人が銃を発砲


それを機に2人の隊員が銃を放った。


イルガ「撃つなと言ったろうが!やめろ!」


しかし声は聞こえど2人の錯乱した兵にその声は

脳には届か無い、


黒兵「そんな事言ったって!やられちまう!」


黒兵「この!怪物め!」


1人の隊員の身体が見えなくなる位に山なりに

覆いかぶさったゾンビ達の背中に銃弾が飛ぶ、

肉片が空に舞うも意に関せず再び山を作る様に

獲物に覆いかぶさる。


黒兵「ヒィイ!何だ!銃が!銃が効かない!」

叫び声をだす隊員の背後にもゾンビは既に

近付いていた、銃の乱射の音に恐怖が彼の培った

訓練の数十年を吹き飛ばす、兵士では無く

彼は武器を持った、ただの人に成り下がっていた。


銃を持つ腕を噛まれ叫ぶ隊員、

銃のシンガリでゾンビの頭を叩き割るも

一斉に群がり始めた彼等に銃を持とうが

引くことのない恐怖の無いモノに対して人に

足掻らう術はなかった。


足を噛まれ膝を崩す彼のメットにも噛み付く、

当然滑り噛めないながらも顔は首元までズレる

噛めない噛まないのでは無くともかく噛む事しか

知らない様なゾンビ達の狂気なる口はやがて

装備の穴に辿り着き耳を噛み、暴れる兵の手袋を

剥ぎ取り、血の通った指にご馳走にでも群がる様に

一斉にその指をこの世から消し去っていく。


「た!助け!えぇデェ」


イルガ「……ヌグッ、いいか耐えろ、奴等はもう

助からない」


一旦クリス達の居る入り口付近の壁と思われる

位置まで退却する黒兵達。


その時出口のキーカードを解除していた隊員から

連絡が入る。


黒兵「ガー……隊長、解除完了」


イルガ「了解した……お前ら俺に着いてこい

向こう側迄走るぞ」


皆は頷いた。


イルガは手榴弾のピンを抜きすぐ様、

山なりになったゾンビの塊に投げつける。


イルガ「5秒後に走れ」


1

2

3

4

5


『ドーン!』


イルガ「今だ!走れ!」


手榴弾が爆発し肉片と共に辺りに土が舞うと同時に

一斉に走りだす。


ロフエル「クソ!報酬が高い筈だ!こんなの

聞いてねぇぞ!」


モス「ハァハァ高いものにはそれなりの報酬と

リスクが伴うってこった!」


クリス「追手来るぞ!それに地面からまた

現れている!油断するな!」


『キェエエエ!』


奇声を発し走りよるゾンビ、手足の動かし方は歪、

だが速度が速い。


ラル「おい!映画と違ってコイツら!早いぞ!」


ラルは銃を構え襲い来るゾンビの額に向け発砲


エド「弾は少ない!武器は持ってない!落ち着いて

確実に仕留められる距離まで引き付けろ!」


走るゾンビ一弾目が前にいたラルへとライオンの

様に飛びかかる。


銃を構えラルは額に標準を合わし、ゾンビの手が

彼に掴みかかる寸前まで近づいた。


ラル「喰らっとけ!」

両腕でしっかりと握られた拳銃、肩に顔を付け

的確に彼の銃から弾丸が放たれる。


『パンパン!』

ハンドガンの軽い音がし額に弾丸を喰らい

膝から崩れる様に滑り倒れるゾンビ。


ラル「ゾンビと言えば頭か、確かに効果的面だ

そこはセオリー通りで助かったぜ」


ラルを通り過ぎクリスの足元まで勢い余って

滑り来たゾンビを足底で勢いを止める、

クリスは動かなくなったゾンビを凝視した。


その手足は人の関節域の常識を無視した

方向で倒れていた。


ラル「来るぞ!撃て!」


「パン!パパパン!」10㍉の軽い短銃の音が

響き渡る、一斉に銃で応戦する仲間達


ラル「弾が少なねぇ!」


皆が一斉に走りながらも陣形を崩さず発砲


マシンガンを持つ黒兵達も懸命に発砲

しながら行先を目指す。


次々と襲いかかるゾンビ集団

無鉄砲にただ獲物に飛び掛かろうとするその姿に

獣以上の狂気を感じる。


クリスが弾の使い切ったラルへと銃を放り投げる。


クリス「ラル!俺にナイフを投げろ!交換だ!」


ラルはナイフをクリスに向けて投げた、

空中でナイフをキャッチすると回転するかの様に

掴み二刀流の構えで銃弾をすり抜け近づく

ゾンビを切り刻むクリスのナイフ


銃を撃ちながらもイルガがクリスを見る。


イルガ(コイツ状況判断が早く的確だ、

この状況下で自分は一切銃を使用し無い精神力と

弾が減った味方への穴になりそうな陣形へ補充

冷静な対応と適材適所、それに視野も広いな)


後続にいた黒兵複数が徐々に遅れ始め

足をとられコケた瞬間ゾンビの群れが襲いかかる。


モス「急げ!出口が見えた!」


出口付近では解除していた黒兵2名が必死に

出口ドアを死守していた。


黒兵「隊長!早く!」


イルガ「銃の撃ち方やめ!走って抜けるぞ!奴等は

早いが走り方が歪だ!冷静になれば俺たちの方が

早い筈だ!振り向くな!考えるな!一瞬の判断が

命を落とすぞ!行け!」


クリス(いい判断だ……)


こうして一斉に走り出す皆、そして恐怖に心が負け

銃を撃つ者達はその止まった行動にゾンビの

餌食になり、恐怖で足がすくみ普段通りの

全力疾走が出来ない奴等も彼等の餌に成り果てた。


冷静に対処出来た者だけが走りながらも

出口へと到達、ドアを閉め脱出に成功した。


勢い良くドアにぶつかるゾンビ、よく見ると指は

自らの衝撃でガラスに打ち当たりあらゆる方向に

曲がり骨折している。


痛覚が無い……そしてガラス越しにすら

噛みつこうと口を大きく開けパクパクと

擦り付ける様は恐怖と狂気の具現化であった。

歯は犬歯が鋭くまるで人工的に

研ぎ澄まされたかの様だった。



□今日のポイント□


犬歯、これは何も犬だけのものでは無い

人にだってある。八重歯や糸切り歯と

言われるモノだ。


4本ある。

食物を捕らえ切り裂くためのモノ


人も昔は動物と同じく獲物を狩り、生肉を食らって

いたのかもしれない。

何百年何千年たった人類はきっと今の人間が見たら

姿形も大きく異なり常識や感覚も違うだろう。


しかし変わらないモノ、それは動物でもある様に、

そして人が人を信頼して互いに助け合い生きたから

こそ出来たものが文明である。


それは思想や宗教でもいい

互いが認め合う事ではなかろうか


得体の知れない生物と出来わした時、何を基準に

その生態を判断するか……


ソレは目的に応じた進化形態を探る事である。

獣は威嚇や獲物を狩る時、牙を見せる。

それは口を大きく開け獲物に対し必要なモノを使う

からである。故に見るものは牙の大きさである。

犬歯の大きさの判断は先程同様、肉を噛みちぎる

モノである事から肉食の判断が出来る。


大きければ大きい程危険度が増す。

草食動物は奥歯で草を噛みちぎる事から犬歯の発達

が悪い、代わりに奥歯がすりつぶせるよう

になっている。


また体の大きさも判断材料になる、生き物を狩ると

言う事は、身軽さも必要となるからだ。

象や鯨など恐竜に於いても体躯の大きさは

大きければ大きい程栄養をため込む為の大型に

なりやすい。


大きさの判断は極端な例であるが未知なる生物と

出くわした時の判断材料になるだろう。


平均500キロ迄は安易な考え方で判断しない方が

懸命である。


例えば大型で有名なハイイログマ

アメリカヒグマ等は平均250キロ

だが508キロそうとうのクマも確認されている。


因みに日本でもエゾヒグマで520キロ相当の熊も

確認されている。


ライオンなども250キロあるものも居る。


小さくても牙が発達したものは危険だ。


観察は非常に重要だ。


体重が重ければその重さ自体が武器となる、

力の方向性を考えず避ける事が出来ねば終わり


また動物に限らずモノの力や特性は形などで

判断するといい。得体の知れない物が現れた時

判断材料に


□牙


□形状、ワニ等口が大きいものは何故口が

大きい進化を遂げたのかと考える、単に魚の様に

プランクトンを丸呑みできる様になのか

獲物を喰らい顎の発達による噛みちぎりなのか等


□足の観察

スピードの速いモノは得てして適度な筋肉と足首を

持つ物が多い、例えば太腿が発達していれば

そのものの足の速さは危険だと判断出来る。


また足首まで太いものは持久力がある

だが体躯の大きいものはその体重を支える為に

進化したものかどうかの判断も必要だ。


前足の付け根が大きい物は体重を乗せ噛み付く、

そこに飛び掛かりによる自分の体重を

プラスした衝撃に耐えられる様に発達した

ものである、後はその長さだ、長ければ速い、

が安定性の悪さから速度が速いが逃げを中心に発達

したと想像が出来る。故に草食に多い。


足の短さは肉食系に多い、後ろ足が

発達しているのか前足が発達しているのか

それにより逃げ方も変わる。


前足が発達の場合短い距離には危険

後足が発達している物は初速は遅いものの

距離が出る程危険性が増す事になる、


安全な場所までの距離もまた判断材料となる。

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