ゾンビワールド
西暦2030年地球は異星人からの一斉攻撃を受けた。
各都市に忽然と現れた異星人達の宇宙船からの攻
撃は、一斉に地球の主要都市を壊滅にまで追い込
んだのだった。
地球が異星人に襲撃されたあの日から2年が過ぎ世
界の様相は大きく変貌する、侵略者も物資を獲り
尽くしたのか、1年後には殆ど地球から撤退、地球
外からもたらされたのは、映画によくあるゾンビ
ウイルスだった。
侵略の際、手早く人間を撃破する為に撒かれたと
思われるゾンビウイルスは世界に瞬く間に蔓延。
地球に存在する国家は、どれも抵抗する力を失い
なすがままに侵略されたのだった。
そんな地球の、かつて日本で東北地方と呼ばれて
いた土地には1人の青年が居た。名前はハクという。
ハク「よっこらせ、今日はコンビニを見つけられ
て実にラッキーだったな」
独り言を呟やきつつ、愛車の四駆に荷物を乗せる。
ハク「さてと、他には……確か漫画で読んだ缶詰
は腐りにくいっと……少し頂いて」
消費期限を確かめ、すでにその期限を過ぎたもの
から取っていく、真新しいのは車に乗せれる限度
もある事から僕みたいな人が立ち寄った時に、困
るだろうから、古いのから取っていく、これ、す
なわち助け合いね。
彼は以前、異星人が地球襲撃の際奴らが破棄した
のか、忘れ物かは、わからないが異星人のライフ
ル銃一丁にハンドガン一丁を常に携帯していた。
高度な文明を持つ異星人のライフルは地球の近代
飛躍的な進化を遂げた銃と比べても性能が遥かに
高く、暗視装置や熱感知等が標準装備のおかげで
暗闇も昼間の様に見えるだけでなく、雨や霧、建
物に隠れる生命体の場所まで丸見えだ。
弾であるエネルギー体のような光線はカートリッ
ジでの交換みたいだが、5万発撃てそうなほど残弾
を示すのであろうゲージが減らない。
僕にとっては時折り遭遇するゾンビ撃退に備えて
の武器だ、しかし、光線状で出る為実は練習でし
か使用した事がない。もっと言えば、これ以降も
使う気はさらさら無い、これはどちらかっていう
と銃の効かない対異星人用としようと思う、明る
い光線は人に認識されやすいからだ、異星人も怖
いが、人間も同等に怖い。
まして銃は弾丸が発射されても目視しずらい光線
は音があまりしないが、目でどの方向に敵がいる
かは一目瞭然。
理由はこれだ。
こうなった世界は最早、人であっても油断は出来
ない。緊迫した雰囲気は、ある漫画で読んだ世界
に似ている。
この男の性格を除けばーー
コンビニ内
「次は本屋さんだな、そろそろ食料にも期限切れ
が、ちらほら現れだした」
時が立ち人の生活様式は大きく変わる、果たして
人類の何人が野生での生きる知識を持つのか……
食べる物の判別から生産まで、人は既に完成され
た加工食品でしか生きられない退化した存在と言
える。
「スマホの使えない今は、重要なのは本だ」
本は素晴らしい、なんせ充電の必要が無い、一度
手に取ると消えないのだ!
本屋を探す、本は知識の宝庫だ、大きい道路の角
に本屋を見つけた、しかし本屋の中に5体のゾンビ
が徘徊している、呻き声をあげながら彷徨うゾン
ビこの光景にも慣れて来た、人が居る所には必ず
と言って数の多さはあれど、居るモノなのだ。
「うーん本屋だけあって……見えるは眼鏡女子1人、
頭良さげだな、本屋さんであの襲撃を受けたのか」
辺りをキョロキョロ見渡す、気づかれない様に、
「そしてサラリーマン、ハゲてるな……ゾンビに
なっても太ってるな……」
ゾンビになってハゲたのか、はたして……そんな
つまらない事を考えながら様子を伺う。
「後は店員さんらしきエプロン姿の男性が2人に、
あ、端にいたあれもサラリーマンぽいな……」
情報収集は生きる基本だ、ゾンビは足が遅いイメ
ージはあるが確かに襲撃時は肉体が新鮮なのか、
足が速く凶暴なゾンビは多くいた、脳だけが機能
していないように見えるそのゾンビは本能で動く、
特に音には敏感だ、嗅覚は殆どないようで目も悪
い、これに関しては眼鏡が多い人類だから目の良
いゾンビもいるかも知れないが……
動物や特にネズミなどを食べる事で体自体の機能
を失っていないゾンビに関しては注意が必要だ、
たまに凄いスピードで追いかけてくる奴もいる。
俺の右足に傷はあるが、そんな奴に追いかけられ、
コケた時の傷だ。
「よし!全員栄養失調みたいだな」
銃を使えば簡単ではあるが、耳の良いゾンビ達は
なんせ数だけは多い、知らぬ間に囲まれた日には
「うぅ身震いがする……トイレ行っとこ」
一旦コンビニでトイレを拝借、排泄にも注意が必
要だ、トイレに鍵を締める行為なんざ1人暮らしが
長かった俺には無かったが後ろから襲われた日に
はたまったモノではない、すっかり鍵を閉める癖
がついた。
「あースッキリ、そう言えばトイレ、鍵もだけど、
便座下ろすかで良く揉めたなぁこの習慣早く持て
たら彼女も怒らなかったろうなぁ……」
シュボ、タバコに火をつける。
「ふー!まずは落ち着いて、しかし中学生みたい
だなトイレでタバコって……ぷぷ」
独り言が多い男である。
トイレには他にも意味がある、ゾンビに追いかけ
られて、道の解らない所を行くのは日常茶飯事、
緊急避難の為に狭い路地や時にはトラックの上に
よじ登る事も多々あるからだ、それこそパンツを
下ろす隙間もない場所で奴らが諦めるのを待つし
か無い時だってあるんだ。
そんな時、垂れ流しでもしたら、それこそ冬場に
は凍傷、冷えからくる尿意の過剰による脱水症状
にもなりかねない。女子は特に注意が必要だ。
お腹痛い日には汚い話だが地獄だ、いつか前に一
度あった。こんな世界だ、たまにはハズレ引いて
お腹壊すなど良くある事だ。
そんな時ゾンビに追い込まれ、トラックの上に2日
居たことがあった、2日もゾンビが離れなかった
理由は脱糞による匂いだ、そりゃ香しいとは言え
ないさね。
鼻があまりきいてない奴らも、あの匂いには反応
する、恥ずかしさもあって、いやゾンビだから良
いんだけどね、でも若い女のゾンビだっているさ、
どんなプレイだよ!て思わず自分で突っ込んだ日
もあるさ……
お腹痛いわ腹は減るわ大変だったわさ……
「フーっ」タバコを吸い終わり足でもみ消す。
本屋へ向かう途中にドアの空いてる家を探す、急
な異星人襲撃もあり、殆どの家のドアは開けっ放
しが多い、鍵かけてる暇は無かったからだろう。
しかしゾンビに器用にドアノブを回す事はない……
筈、いや、いままではゼロだった、確実に開けな
いとは言わないが……
それにドアを開く時は大概大量にゾンビがいて、
押される圧力にドアが壊れたって感じだ、僕は本
屋にいるゾンビに持っている鈴を鳴らし、誘導す
る、然程大きい音はしない鈴は持ち運びにも便利、
しかし普段は真ん中の鉄部分は取り外してあるが。
「おーいコッチですよ……」
小声で囁くように語り掛ける。
「ぐぉぉ……」
不気味な音を喉から発し、5体のゾンビが鈴のなる
ハクの方へと近ずいてくる。
「はーい伊藤さん家にお邪魔しましょうね~」
そう優しく囁き、動きの遅いゾンビは誘われるが
まま、安全を確認した家、伊藤さんの家の中に誘
導されるゾンビ。
「お邪魔します土足ですいません……」
大抵、日本家屋は部屋毎にドアが付いている動き
の遅いゾンビを中に閉じ込めておくなど、然程、
難しいものではない。
こうして安全になった本屋でハクは本を物色した。
ゲット品
○お猿でも理解サバイバル術
○図鑑食べられる植物
○図鑑食べられるキノコ
○地図
○漫画数冊(読んだ後は薪のアテにする)
本は意外と重い、必要な分だけを見極め
持ち歩こう。
【今日のポイント】
ゾンビは遅い、三歳児並みだ、三歳児を相手
だと思えば怖くない、それは平地では平気な
10センチの白線を高所では渡れないという
矛盾した行動と同じだ。
高いと思うから怖い。