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今日から始めるログインボーナス  作者: シルヴィア・紫の夜明け


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ログインボーナス12日目 沖釣り

 午前3時、まだ陽が上がっていない時間。

 彼は寝ているだろう、だからインターフォンを鳴らさづ、支給されている合鍵で部屋に入る。

 彼の寝顔を始めてみる。結構間抜けずらをしているが何処か愛おしい。

 仕事なので彼の肩をゆすり起こす。


「あれ、配達員さんどうしたんですか?」

「おはようございます。起きてください。出かけますよ」


 時刻はまだ3時だ。

 それなのに配達員さんが俺の部屋にいる。

 普段の配達員御用達な感じの服ではなく、黒いフォーマルスーツだ。

 暗闇だと配達員さんの髪は、僅かな光で煌めくみたいだ。現に目の当たりにしている。

 今日のログインボーナスは寝起きドッキリとかだったら嫌だな。

 とりあえず急いでスウェットパンツをジーンズに着替えた。


 配達員さんが運転している自動車は黒塗りで、世間ではこれを高級車というのだろう。


「現地に着いたらこれを着てください」


 そう言いながら渡されたのは水色のフィッシングジャケットだった。

 助手席から後部座席を見ると赤いフィッシングジャケットや黒い筒のようなものが置いてあった。

 これから釣りに行くのだろうか。


 どこに? なにを? そう言う疑問がわいてくる。


 まあ珍しい配達員さんを見るとそんな疑問はどうでもよくなるのだが。


「心配しなくても大丈夫ですよ。船舶免許も漁業権も持っていますから」


 そんなことは一切心配していない。


 これ食べて置いてください、と渡されたのは塩おにぎりと耐熱性の水筒に入れられた味噌汁だった。

 これは手作りなのか否か。


「大丈夫ですよ、手作りです」



 それから配達員さんは1時間ほど車を走らせた。

 港に着くと誘われるがままに船へと乗り換える。

 そのころにはもう陽が顔を出し始めていた。


 潮風が気持ちいい。

 このまま風に仰がれていると、新大陸についてそうだ。そんな気がした。


 船の速度が緩やかになると、配達員さんが釣竿を渡してきて、こう言った。


「今日のログインボーナスは沖釣りです」



 船上で2時間ほど釣りを楽しんだ。

 僕は2匹くらいしか釣れなかったが、配達員さんは10倍もの数を釣っていた。

 僕より配達員さんの方が楽しんでいた。

 ただ僕は楽しくなかった訳ではない。


 このまま、ゆっくりと流れる時間が終らなければいいのに。

 このまま、時が止まってしまえばいいのに。

 ずっとそう思っていた。


 


 PS.釣った魚は、僕の部屋にて配達員さんが調理してくれた。


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