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番外編:ウィラーの独り言1。

 律の野郎はまた無謀なツーリングに出かけやがったか。

 さて、今日もこの律が使わなくなったスマホを用いて今日のことを忘れないよう日記を書くぜ。


 ようやくこのふざけた肉球でもタッチパネルも使えるようになってきた。


 俺の名はウィラー。いや、ウィラーと呼ばれてるだけの猫だ。


 ただの猫じゃない。

 元々は人間だったはずで、死ぬほどの二輪事故をやらかして目が覚めたら猫になってやがった。


 恐らく死んだ。

 死んで猫として生き返った。


 最近流行の小説投稿サイトってやつで「二輪事故で死んだら黒猫になってた件について」とか書きたくなるほどだ。


 わけのわからねえ自称女神を名乗る女が「ライダーを増やす試みをしているのでそれを手伝え」っていうもんだから、手伝ってるつもりだ。


 目標を達成したら生き返らせてくれるらしいが、生き返った頃にバイクなんてあるのか?

 それも内燃機関をきちんと装備したヤツをよ。


 ってそんな愚痴を書くつもりで日記を書いてるんじゃねぇんだった。


 キャンプについての話だが、最近はブームが随分足かせになってるらしいじゃねぇか。


 煮炊き禁止、火起こし禁止、焚き火台使用前提。


 こんなの楽しいのか?

 特に煮炊きや火起こし禁止ってほぼ寝るだけじゃねえか。


 確かにそりゃあ、ツーリングライダーならそれが基本なのかもしれないが、それだけがツーリングってもんじゃねぇはずだ。


 俺の時代の頃にゃ寺崎のアニキが平気で川原で火を起こしてた。


 あの人の本に染まった奴らならみんな、もよおしたら穴掘って大も小もやったもんだ。

 あの頃といえば冬キャンプは投身自殺と同じとされた時代。


 そんな時に石積んで流木やら何やら集めて火を起こしてキャンプしつつ各地を巡るのがキャンプツーリングってもんだった。


 それが今じゃキャンプツーリングはキャンプ場でゆっくりすごすことを言うらしい。

 バイクが主役じゃなくなったとは時代も変わったな。


 しかしキャンプ場は大幅に増えた一方、既存のキャンプ場のルール規制の縛りがつよくなっていけねえ。


 それだけじゃない。

 最近陣馬街道では夜間通行規制も検討中になったらしいのだが、その原因が陣馬山での煮炊き行為にあるという。


 あそこは立地と環境から二輪キャンパーは皆無。

 動画サイトの夜通ってる映像を見ると、山頂の駐車場に不気味なほど大量に車があったがアレが迷惑かけてるらしい。


 キャンパー連中が道も塞ぐような時代とは世も末だ。


 こうなった原因の1つにキャンプ道具の高性能化が影響しているといえる。

 それまで貧弱な人間はキャンプなんざまるで無縁だった時代が変わり、いまや60代のジジババが冬キャンプを平気で出来るようになった。


 全てはゴアテックスなどの新素材の登場によるもの。

 オレがガキの頃なんざゴム引きが基本で夏山でも雨によって汗が冷えると体調崩して最悪死ぬことがあった時代から比較すりゃ今はなんていい時代になったのだろう。


 律のシュラフなんて始めてみた時ダウンと見間違えたぜ。


 だがそれによって増加したキャンパー人口を支えきれるほど俺たちが住む島っつーのはキャパシティがあるわけではなかったんだよな。


 律については、アイツのスマホやデジカメの記録を覗く限り、野営を平然とやるので寺崎のアニキにやや似た傾向があるようだ。

 俺がコッソリ根回しして読ませた寺崎勉の本が多少は影響したらしい。


 まあ画像を見る限り群馬や栃木の山沿いなどによくある車用の仮眠可の休憩所とかで寝泊りしている分、私有地などに入ったりしないところ弁えてるようだ。

 最近はキャンプ場が埋まってるなんてザラにあることだし目的決めない旅では仕方ねぇ。


 いんだよそれで。

 寝たいときに寝る。

 眠りたくなるまで走る。


 今はそれでいい。

 目的地を決めるのは歳くってから。


 今は道を見つけるべきなんだ。


 あいつが今日どこ向かったかは知らねぇがどうせまた山側に向かったに決まってる。

 いっつも山に行くんだあいつは。


 虫が苦手の癖に海側に行かない。

 そんなに錆が怖いかね。


 それなら身の丈にあったバイクに乗ればいいんだよ。

 もっと安いやつがあったろうに。


 もしかしてまた例の不気味な女とやらと遭遇したんじゃねぇか?

 高速乗り回して全国を走り回ってるとかいうネットでも噂の鈴菌美女だ。


 PAとSAでよく遭遇するっていうが、律のヤツ遭遇率が高すぎんだろ。


 実はわざと狙って週末に都心部近場のPAやSAにきてたりしてなHAHAHAHAHA。

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