7 武器と魔法を確認してみる
装備品では最後になる武器を【無限収納】から取り出して、俺が手に握ったのは重厚感のある無骨な黒い鞘に収まった長剣だった。
「地球では、いずれ家を買ったときに日本刀でも飾ろうと思っていたが……まさか実際に戦うための剣を持つことになるとはな【鑑定】」
天破の剣:G(神級)
物理攻撃:SSS 魔法適性:SS
重量軽減-中/腕力補正-大/体力補正-大/魔力補正-大
世界を創造した神の力で作られた神器。所有者の意思に合わせてその形状を変えることができる。
おお、伝説超えたよ。もう普通に神器とか書いてあるし……創造神が作ったってことはあの駄女神のお手製か? 【鑑定】結果は申し分ないけど大丈夫なんだろうな。
目の前に掲げた鞘からゆっくりと剣を引き抜く……当然そこには銀色の輝きを想像していたんだが、防具と同じようなメタリックに輝く黄色がかった色の剣身があった。
いまの俺の力なら刃部分が1メートル以上ある長剣を片手で持っても余裕で振り回せる。しかも【武神】スキルMAXで武器の扱いも極めているから、振り回した剣の速度があり得ないくらいの速さになっている。
凄いな……剣なんか持ったこともなかったのにスキルがあるだけで、どうやって剣を振ればいいのかがわかる。こいつも盾と同じで形状変化ができるみたいだから、大剣や細剣、刀や曲刀、ついでにソードブレイカーなんかにも変化させてみたが、どれを握ってもその武器に最適な動きができる。
ただし変化のほうは剣にカテゴライズされるようなものにしか変化はできないらしい。斧や弓、槍のようなまったく違う武器には変化させることはできなかった。
試してみた限りでは剣身の長さは伸ばせるようなので中距離戦も戦えそうだ。もし、遠距離の攻撃手段が欲しくなったら街で弓でも買えばいい。金はあるからそれなりにいい弓が買えるだろう。
とりあえず鎧の腰部に剣をぶら下げる為のベルトがあるから、そこに鞘ごと天破の剣を装着しておく。
「これで魔物がきてもなんとかなりそうだな。魔法のほうは……」
手のひらを上に向けて『火球』と念じると、あっさりバスケットボール程度の火の球が出た。投げる前に魔力を多く込めてみたりもしたがほとんど大きさは変わらない。駄女神のいう通り魔法に関しては魔力の過多で効果はあまり変わらないらしい。とりあえず火球は地面に投げつけておこう。迂闊に投げて火事になっても困るからな、どうせ俺には火属性無効だから関係ないが、煙は怖い。
それでも念のため、ちょっと先の木のないところへ。
……着弾して多少地面を削っただけか。初級魔法ならそんなもんか。
次は……『風刃』。
お、進行方向にあった緑の木がすぱっと斬れていった。風にそよぐくらいだから柔らかいとは思っていたが、やっぱりだったな。
次は『水球』。
うん、水の球だなこれがあたってダメージになるのかは疑問だが。とりあえずさっき火球を投げたあたりに投げておこう。
うお! なんだか凄い勢いで蒸気になっているけど大丈夫か? 思ったより『火球』の温度が高かったらしいな……まあ、火事じゃなければいいか。
最後は……『土壁』。
ま、想像通りか。地面が盛り上がって壁になるってね。まあ、足止めや防御で使う機会もあるかも知れないけどな。
総評としては、やっぱり魔法はしょぼいな。自分の力で魔法が使えるという事実にはちょっと感動したが、どれも初歩の魔法ってことで威力はたいしたことない。
敵にもよるが、現段階で魔法メインの戦いは避けたほうがよさそうだな。となると街を見つけて、いい魔法を買うまでは近距離での肉弾戦闘がメインか。
それでも、装備とスキルのチートがあれば近接戦闘でも問題ないだろう。となれば最後の問題は、地球育ちの俺に魔物が殺せるのかどうかだが……そればかりはやってみなくちゃわからない。
命の危険があるなら躊躇する気はないが、最初のころはなるべく人型は避けて欲しいもんだ。
ガサガサガサ!
そんなことを言っていたらフラグが立ったか? 緑の木々が大きく揺れている。なにかくる!
「だが、なんでだ? 俺の【完全察知】には反応がないのに……よし、困ったときは【鑑定】」
【完全察知】
あらゆる人と魔物の存在を感知する。効果範囲はレベルと魔力量によって変わる。
これなら、俺の索敵範囲に入ってないわけがないんだが……っと、考えるのはあとだな。魔物が出てきやがった。
俺の目の前の木をかき分けて出てきたのは巨大な顎と複眼を持ち、固い被殻と高い生命力を誇り、群体で移動し獲物を運ぶもの。
俺の異世界最初の相手はお前か! そこにいたのは蟻の魔物だった。
今日はお昼にもう一話投稿します。




