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26 リアナに魔法を覚えさせてみる



「とりあえず、それには触らないようにしろ」


 残りの魔法を片っ端から覚えながらリアナにそう告げると、適当に浮かせていた光球を全部天井付近まで移動させる。魔法発動後も動かせるのは、いい仕様だ。全部をばらばらに動かすのにはちょっとコツがいりそうだが、訓練しておく価値はあるな。


「は、はい! 触りません!」


 元気よく答えたリアナは、俺が魔法を覚えていく作業が面白いのか、ベッド上で作業している俺の近くにきて上から覗きこんでくる。


「……なにしているんだ? そんなところに突っ立ってないでどこかに座れ。仕方がないとはいえ、見下ろされるのは気に入らないし……見たくもないのに覗いたとか言われるのも癪だからな」

「へ? ……あぁ!」


 リアナが慌ててワンピースの裾を押さえて座り込む。膝ぐらいまでの丈しかない服で、ローベッドの上で作業している俺の近くに立てば見える(・・・)状況になるのは当たり前だ。別に見る気はないから見上げなかったが、顔を上げれば服の中を下から覗けただろう。


「うぅ……マサヤさん、えっちです」

「知るか! 見てないって言ってんだろうが。それより、お前もこの魔術書(スクロール)を見てみろ」


 俺がすでに覚えている四種類の魔法が書かれた初級のスクロールを、顔を赤くしながら俺を睨んでいるリアナに示す。


「えっと……獣人の私には無理だと思います。狼牙族の中にも稀に魔法が使えるような人がいますけど、私の代の子供たちは十五歳で受ける『見究めの儀』で全員魔法関係のスキルはありませんでしたから」

「ふん、昔のことは知らん。別に覚えられなくても魔術書が使えなくなるわけじゃない。駄目なら売り払えばいい。いいからやってみろ」

「えっと……わ、わかりました。やってみます」


 リアナはまず【水球】の魔術書を手に取って紐をほどくと、巻物を開きおそるおそる中を覗きこむ。


「…………え? あれ、なんかこれ……できるかもです」


 しばらくマジマジと魔術書を見ていたリアナが、ポツリと呟く。すでに魔術書の魔法式は消えているので、無事に魔法を覚えたのは間違いないだろう。

 となると、やはりリアナが俺に『奉名』したことで、俺のスキルの効果がリアナに及んでいるという仮説は正しかったということになるな。

 おそらく【魔法適性(全属性)】【無詠唱】【並列起動】【魔力増大MAX】【魔力回復MAX】【連続魔法MAX】、このあたりの魔法系スキルの恩恵を僅かだが受けている。だが僅かとは言っても俺のチートスキルの数々からの恩恵だ。初級魔法くらいは問題なく使えるレベルらしい。


『名前:ナシャリアナ(奉名=真田雅哉)

 種族:白狼族

 年齢:17歳

 レベル:13

 スキル:脚力強化3/長駆2/嗅術3/剣術2/水魔法:水球』


【鑑定】で確認してみてもしっかりと魔法を修得している。どのていどまで使えるのかは調べてみないとわからないが、この世界の『魔法を使う獣人はほとんどいない』という先入観は魔法を覚えたリアナにとっては大きな武器になるはずだ。


「えっと……【水球】?」

「な! 馬鹿!」


 俺が止める間もなく、リアナが発動した魔法で生みだされた水球は部屋の壁に衝突して盛大に破裂した。


「あわわわ……本当に出ました! 凄いですよマサヤさん! この私が本当に魔法を……う、嬉しいです! あ、冷たい!」


 魔法を使えたことによる感動で、現状を認識できていないリアナの額に【水球】を十連発で叩きつけて頭を強制的に冷やさせる。


「この馬鹿! 室内で魔法を使う奴がどこにいる! 見ろ、部屋の中が水浸しだろうが!」

「あ………………ど、どうしましょうか、マサヤさん」

「知るか! 幸いベッドは無事だから俺はもう寝る。お前は部屋を掃除してから勝手に寝ろ。ベッドを使うのはいいが、俺を潰すなよ。それとお前が脱いだあのボロ服は四つくらいに細長く斬り裂いておいてくれ。間違っても雑巾代わりにしたり、捨てたりするなよ。あと、残りの三つの魔法も覚えておけ。今度は間違っても室内で使うなよ」


 そんなぁ、手伝ってくださいよぉ! とか泣き言が聞こえるが、俺の大きさで手伝ったところでなんの役にもたたん。完全に無視を決め込んでベッドの端っこのほうで布団に潜り込む。この体じゃ、いまひとつベッドのありがたみもよくわからんが、この世界に来て初めての室内での睡眠だ。ゆっくりと寝かせてもらおう。


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