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21 冒険者ギルドに登録してみる

「な、ななな、なにをさせるんですか! あんなの脅迫じゃないですか! 逆らえないから言われるとおりにしましたけど、顔は引きつるし、足はがくがくしてたし、寿命が縮まりましたよ、マサヤさん!」

「うるさいな、サイズが違うんだから大声出すな。いいだろうが別に。先に不正をしてきたのは奴だしな」


 魔道具屋を出るなり凄い剣幕で俺に喰いかかってきたリアナの声は周囲から見れば小声の部類なのだろうが、俺にとっては大音声。顔をしかめて耳を塞ぎながらしれっと反論する。


「それは……そうですけど。報復とかされたらどうするんですか?」

「ふん、なんかやるにしたって、準備が整って襲ってくるのは夜だろう。だが俺たちの宿は最高級の宿だからな、夜討ち朝駆けはしにくい。そして俺たちは明日には街を出る。問題ないな、街の外で襲ってくるようなら返り討ちにすればいい。」


 リアナにはそう答えたが、俺の予想では襲撃はないと思っている。普通に考えて、高レベルの【鑑定】を持っていて、三千万エルネスという大金をぽんと出せるような相手にちょっかいを出すのは危険だと、普通の人間なら思うはずだ。

 確かに五千万エルネスの魔法鞄は手痛い損失だろうが、二百倍との差額は三千万だし、今までの詐欺でそれ以上の額を絶対に稼いでいる。俺が……というかリアナが衛兵に密告をするような素振りをしなければ、あえて火中の栗を拾うような真似はしないだろう。


「はあ……わかりました。じゃあ、次はどこに行きますか?」

「【無限収納】の魔物を先に処分したい。冒険者ギルドにいこう」

「そうですね、ギルドに登録すればその登録カードが身分証になるので街の出入りが楽になりますしね」

「あ、そうだ。リアナ手を出せ」

「はい? またなんか出すんですか」


 さすがに慣れてきたのか、躊躇いなく手のひらを出したリアナの手に最初に倒した大蟻を出す。


「きゃ!」


 手のひらの上にどんっと現れた大蟻に反射的に手を引くリアナ。首と胴体に分かれた大蟻は空しく地面に落ちる。


「な、なんですかマサヤさん! 嫌がらせですか? あんまり虫系は得意じゃないのでこういうことはやめてください。……それで、この大蟻がなにか?」

「こいつになにか使い途とかあるか?」

「森なんかにいる、ただの大きい蟻ですから特に使い途もなにもないです」


……く、やっぱりそうか。こいつをダンジョンボス級とかいって必死で戦っていた俺って……


◇ ◇ ◇


「では、これで登録は終わりです。身分を保証する代わりに、倒した魔物の素材はギルドの存在する街では必ずギルドに卸してください。買い取りした額は冒険者カードに蓄積されていきます。一定額を超えるとギルドから特典を受けられたりしますので、たくさんお持ちくださるのをお待ちしております」


 打ちひしがれる俺に首をかしげつつも、リアナはほどなくして冒険者ギルドに到着。さくさくと登録を済ませていた。といっても登録自体は難しいことじゃなく、名前と種族を書いて説明を受け、冒険者カードをもらうだけ。

 受付に座っている小さな鹿角を生やしたビジネスウーマン風の受付嬢が、リアナから見れば電車のICカードほどの大きさの登録証を差し出してくる。そのカードをこそっとのぞき込んでみると、どうやらリアナの名前と通算買い取り金額が表示されているらしい。当然現在はゼロだ。


「リアナ、ゴブリンとグラスウルフを買い取ってもらえるかどうか聞いてくれ」

(こく)

「あの、さっそくなんですが、ゴブリンとかグラスウルフは買い取ってもらえますか?」

「勿論です。ではここへ素材を出してください」

「あ、えっと……ここにはちょっと出せなくて、あの買い取ってもらえる素材がわからなかったので」

「はい?」


 怪訝そうな表情を見せる受付嬢。おそらく冒険者たちは買い取りしてもらえる部位だけ、もしくは最も高く買い取ってくれる部位だけを剥ぎとって持ってくるのだろう。外で狩った魔物を丸ごと担いで持って帰るのは疲れるし、俺ならやりたくない。


「リアナ、小声で魔法鞄があるから解体前の魔物をそのまま持ってきていると伝えろ。それでも出せと言われたら魔法鞄から出すフリ(・・)をしろ。その動きに合わせて俺が魔物を出す」

(こくこく)


 リアナが俺の指示通りに伝えると受付嬢は納得したのか、裏の作業場のほうへとリアナを連れていく。そこは土も剥き出しで壁と屋根があるだけの建物で、中には大きな作業台がいくつか置いてあった。


「おう、そいつか。魔物を揃いで持って来たってのは」

「はい、ここで出してもらうのでそのまま鑑定までお願いします。査定が出たら事務のほうへ連絡をお願いしますね」

「わぁってるよ。さ、いった。いった」


 作業場の中にいたのは見た目はドワーフっぽい感じの怪狸族(かいりぞく)で腕や顎なんかがうっすらと茶色い毛に覆われた丸顔のおっさんだった。



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