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11 ファーストコンタクトをしてみる

すみません。寝落ちして投稿遅れました^^;

 移動しながら女に確認したところ、ここから街まではまだ数日かかかるらしい。こいつの足で数日だったら、方角すらわからない俺だけだったらやばいことになっていたな。


「よし、この辺なら周囲に危険な魔物はいない。今日はここで野営する」

「え、えぇ! こ、この森の中で野営なんて無理です! 夜のうちに食べられちゃいます!」

「うるさい! 大声を出すな、いまから俺が出す魔法の天幕なら結界機能がついているから大丈夫だ。それにいい加減、自己紹介くらいしないと落ち着かないだろう。お互いに」


 結局、落ち着いて話ができる状況になってからということで、俺はこいつにまだ姿を見せていない。変に騒がれたり、逃げ出されても厄介だし、せっかく見つけた案内人、ポンコツだろうと手放すつもりはない。

 そこで魔法の天幕だ。こいつの結界機能を使えば、魔物を寄せ付けないだけでなく、俺の意思で中の人間を外に出さないこともできる。ただ、そこまで結界を強固にしてしまうと空気すら通さなくなるから諸刃の剣だけどな。


「そ、そうですね。さすがに声しか聞こえないのは不気味なので……」

 

 短い付き合いだが、こいつはかなりのビビり。しかもレベルも低い。本来ならこんな森の中にひとりでいるような女じゃない。なんかしらの面倒な事情を抱えているんだろうが、そんなのは俺には関係ない。この世界の知識のない俺のためにとりあえず街までは強制的に連行させてもらおう。ま、どうせこいつの目的地も街みたいだから問題はないだろうがな。


「とりあえず天幕(テント)を出すから中に入れ。入ったらすぐ靴は脱げよ」

「ひゃい? 靴を脱ぐんですか?」

「そうだ」

「わ、わかりました」


 異世界で土足禁止もどうかと思うが、天幕内にいればよほどのことがなければ魔物に襲われることもないから、常時靴を履いている必要はない。現状、天幕の床布の上に寝ていることを考えれば、土足で汚されるのも困る。本当なら外で脱いでから入ってもらいたいくらいだが、天幕の結界がどこまでが範囲なのかがわからない。外で脱いで靴だけ紛失されても、それはそれで今後の移動に支障がでるからな。


 いまひとつ納得はしていないようだが、それはまあ別にいい。俺は無限収納から魔法の天幕を取り出すとこいつが四、五人入っても余裕があるくらいのサイズをイメージしながら地面に天幕を放り投げる。

 俺の手のひらサイズまで縮小されていた天幕は地面に達するまでにみるみる巨大化して、地面に音もなく設置された。


「うわっ! きゅ、急に天幕が出てきました! どどどどこから?」

「ん? これだとこいつ一人分くらいのサイズじゃねぇのか?」


 いきなり現れた天幕に驚く女はとりあえず放っておいて、見た目のサイズが想定よりも小さく見えたので先に中をのぞいてみる。


「なるほどな……無限収納があるんだから、こういうのもありか。見た目は一人用でも中の空間が広いのか」


 確かにこのほうが目立たないな。街道に馬鹿でかい天幕があったら、それだけで怪しすぎるからな。


「よし! 早く入れ」

「ひゃい! お、お邪魔いたします」


 顔を赤くしながらぎくしゃくと天幕に入ってくるは緊張しているのか? ……あぁ、男女一緒に天幕の中でふたりっきりになるとなれば、そういうことを想像するか。期待しているんだか、怯えているんだかは知らないが、どっちにしろ不要な心配だ。


 女は言われた通り入口で靴を脱ぎ、天幕の真ん中あたりで正座して固まっている。改めて女を見てみると、荷物は小さな背負い袋ひとつ。武器は紛失、服装も粗末な布の服とズボン。靴もちょっと穴の開いた革靴……とても森の中をひとりで歩き回るかっこうじゃない。

 見た目は……整った顔立ち、汚れてはいるが肌も白そうだし、多少ぼさついた感はあるが長い髪も白い、体も比率的に見てなかなかの胸、くびれた腰、しなやかですらりと伸びた手足。一応美少女? 美女というにはまだちょっと落ち着きが足りないか。


 ……おっと、まあいい。いまはその辺は置いておく。まずは顔合わせが先だ。


「いいか、これから姿を見せる。驚くのは勝手だが、パニックにならずちゃんと最後まで話を聞け。いいな」

「は、はい!」


 背筋を伸ばしているのは殊勝な態度で結構だが、そんなに畏まられてもな……ま、どっちにしたってやることは変わらないんだが。


「さっきと同じように手の平を上に向けて前に出せ」

「はい!」


 地面と水平にピンと伸ばされた女の両手、その先にある手の平に跳ぶ(・・)


「……」

「……」

「俺が見えるな」

「……え、っと……あの、はい」


 思ったより落ち着いているようでなにより。というか驚きすぎてまともに反応できていないだけな気もするが、それならそれでこのままなし崩しに顔合わせを済ませてしまえばいい。


「俺は訳あってこんな(・・・)だが、この世界に似たような種族はいるか?」

「いえ……小人族と呼ばれる最小の種族でも、私たちの腿から腰くらいまではあります。この大きさだと……物語の中では聞いたことはありますけど」


 ほう……物語や伝承には似たようなのが出てくるものもあるのか。それはどんな話なのかを調べる必要があるな。物語や伝承を作り話と決めつけてしまうのは危険だ。現代日本のように妄想力豊かな人間がポコポコ生み出すファンタジーとは違って、剣や魔法で戦うような世界の伝承は元となる何かがあったから生み出された可能性が高い。どうせまだ目的もない状態だ、調べておけばなにかの指針にはなるかも知れないしな。


 とりあえず俺の当面の目的は、この世界の人間と同じ(・・)になる方法を探すこと。魔法、薬、伝承、関係ありそうな知識はなんでも欲しい。


「そうか、そのあたりの話はあとで詳しく聞かせてくれ。まずはお互いに自己紹介といこうじゃないか」


 俺は女の手の平の上で腕を組んで仁王立ちをしながら尊大に胸を張る。


 つまり……まあ、そういうことだ。緑の木だと思っていたものはただの雑草で、茶色の岩壁だと思っていたものが樹木だった。どうやら俺は、あの駄女神のせいであまりにも規格(・・)の違う世界へと放り込まれたらしい。


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