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10 魔物と戦闘させてみる

 とりあえず、細かいことはあとだ。俺たちを追ってくるあいつらを倒してから考えよう。まずは【鑑定】。


 追ってきているのは細マッチョで浅黒い肉体に腰布を巻きつけただけの恰好で、棍棒を振りかざした小鬼のような魔物。


『ゴブリン レベル11 性別:♂ スキル:異種族交配2』

 

 他、四名様。こいつ以外のレベルは一桁だが……五体いればそこそこ脅威か?


「おまえ!」

「はい!」

「立ち止まって奴らを迎え撃て」

「でも、武器が……」

「いいから信じろ。立ち止まったら手のひらを上に向けて肩の前に上げろ」

「わ、わかりました」


 ゴブリンたちとはまだ少し距離がある、武器を渡す時間くらいはある。こいつも逃げ続けていてもいずれは追いつかれるとわかっているのか、覚悟を決めたように立ち止まって振り向くと右手の平を上に向けて肩まで上げた。

 俺はその手に天破の剣を置く。


「自分の使いやすい形の剣を想像しろ!」

「はい! ……きゃ!」


 威勢のいい返事と同時に手の平の上に細身の長剣が現れ、それに驚いたこいつはその剣を落とす。


「馬鹿! すぐに拾え! 来るぞ」

「は、はい!」

「それがあれば勝てる。さくっと倒せ」


 慌てて剣を拾ったそいつに完璧な指示(笑)を出すと成り行きを見守る。五匹のゴブリンは『ウギャウギャ』叫びながら俺たちを取り囲み、粗末な腰布に覆われた股間は不自然な盛り上がりを見せている。戦闘の興奮と、こいつが女だからという興奮で猛っているのだろう。正直見苦しくて仕方がない。


「ひ! ……そんな、む、無理です」

「やりたいことがあるんだろうが! 覚悟を決めろ。それに、その剣を持ってから変わったことはないか?」

「へ? ……あ、そういえば力が湧いてきて……疲れもなくなっている?」


【腕力補正】と【体力補正】が【大】だからな、そりゃそうだろう。


「できるな?」

「……できそうな気がしてきました」

「あぶなくなったらちょっとだけ助けてやるから、さっさとあの見苦しい粗チ○を切り取ってこい!」

「あわわわ! あ、あんなもの斬りたくはないです!」

「馬鹿! もののたとえだ!」


 そんな馬鹿なやりとりをしているうちに、我慢できなくなったゴブリンが一匹走りこんできて棍棒を振り下ろそうと襲いかかってくる。


「ほら、きたぞ」

「ひゃい!」


 女は完全なへっぴり腰で天破の剣を横向きに構えて、振り下ろされる棍棒を受け止めようとしている。そして、目論見どおりゴブリンの棍棒は天破の剣に振り下ろされる。


「へ?」

「ウギャ?」


 棍棒は確かに天破の剣と接触したのだが、双方が予想したような衝撃は欠片もなかった。棍棒は真っ二つに断ち割られ、予想していた衝撃がなかったゴブリンは前のめりに体勢を崩して地面に転がっている。


「ほら! まず一匹、とどめ!」

「は、はい!」


 地面にダイブしていたゴブリンの首筋に振り下ろされた天破の剣は、さした抵抗も感じさせずにゴブリンの首を斬り落とした。


「す、すごい……これなら本当に勝てるかも」


 その斬れ味に驚愕しつつも剣の力を実感した女は、ようやく落ち着いたのかさっきよりは幾分ましな構えでゴブリンたちを待ち構える。


「いいか、正面の奴が一番強い。隣の奴に向かうと見せかけて途中で進路を変えてあいつを斬れ。あいつさえ倒せば万が一にも負けることはない」

「は、はい!」


 女は言われたとおりに一番強い奴の隣に向かって走る。ほう、瞬発力はなかなか。


「えい! で、こっちを、やあ!」

 

 いちいち行動を起こすたびになにか叫んでたら相手に動きを読まれるだけだと思うんだが……まあいいか。ゴブリンくらいならそんなに危ないこともないだろう。実際、リーダー格のゴブリンは袈裟斬りにされて死んでいるしな。


『ギャ! ギャア! ギャア!』


 リーダー格が倒されて急に逃げ腰になりつつあるゴブリン三匹。逃がして仲間でも呼ばれたら厄介だ、ここは逃がさず仕留めにいくべきだろう。


「おい! 逃がすな。ここで仕留めろ」

「え? あ、はい!」


 一匹倒して肩で息をしていた女に発破をかけるとゴブリンたちを追いかけさせ、二匹を討伐させる。その間に三匹目が逆方向へ逃げていくので、『風刃』の魔法を二十発、並列起動して後ろから首を(・・)斬り刻んでやった。

 どうやら、一発の威力は上げられなくても魔法を重ねることで、ゴブリンくらいなら急所を狙えば倒せるらしい。


 ゴブリンたちが死んでいるのを目視で確認して、安堵の息を漏らす。やっぱり生物を殺すのは、あんまり気分のいいもんじゃないな。地球じゃないんだから敵や魔物を殺すことを躊躇するつもりはないけどな。さて、あとはこいつを……


 女を見るとあの程度の戦いなら天破の剣の効果で疲れていないはずなのに、息を切らし地面に座り込んでいるらしい。


「おい、立て。こんなところで休んでいると血の臭いを嗅ぎつけて、また変なのがきたりするんじゃないのか?」

「ひぃ! わ、わかりました。すぐ移動します」

「ちょっと待て」

「ひゃい!」


 おいおい、走るか止まるかの二択しかないのかこいつ? 即座に立ち上がって走り出そうとする女を溜息まじりに引き留める。


「倒したゴブリンはどっかで金になったりしないのか?」

「あ……えっと……ごめんなさい。わかりません」


 ち、せっかく案内役(ガイド)を見つけたと思ったのに思った以上に使えないな、こいつ。


「わかった、とりあえず持っていくから死体のところまで行け」  

「え? いや、私、あんなの触りたくありません」

「別に持たなくていいから全部の死体のところまでいけ」

「……は、はい」


 ゴブリンの死体のところまで歩かせ、ゴブリンを【無限収納】にしまう。


「え? し、死体が消えた! どうして?」

「あとで説明する、いいからどんどん歩け」


 驚く女を追い立てるようにしてすべてのゴブリンを回収すると、俺たちはひとまずこの場を離れた。 


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