彼らの名前は……?
短いです。残酷な描写があります。
暗がりの中で目を覚ます。
周囲を見回すと兄弟たちもちょうど起き上がってきたところだ。
親父と共に皆で朝飯を囲み食う。
少し新鮮味が落ち旨味がなくなってしまっている。
それは親父も同じだったようで今日は皆で狩りに出かけることになった。
狩りに出て暫くすると首尾良く獲物を見つけることができた。
身を隠し静かに気配を殺す。
獲物に気づかれないよう慎重に近づく。
十分に距離を詰めたところで兄弟たちと共に一斉に襲い掛かる。
こちらに気づいた獲物は必死で逃げようとするが逃がしはしない。
数の暴力で一気に仕留める。
他の獲物も皆が仕留めることができたようだ。
今日の狩りは上手くいった。
今夜はご馳走だ。親父の機嫌も良い。
上手く生け捕りにすることができた獲物もいくつか。
今日は実に良い日だ。
なにやら騒がしい。
どうやら略奪者がやってきたらしい。
せっかく皆でご馳走を食べて気持ちよく眠っていたというのに。
彼らは突然襲ってきては、俺たちが頑張って狩った獲物を奪っていく血も涙もない略奪者だ。
さらに彼らは獲物だけではなく俺たちの命をも奪っていく。
その殺戮は生きるための狩りではなく殺すための殺しだ。
そのうえ狂気に満ちた彼らは俺達の死体から耳を削ぎ戦勝品のように持ち帰るのだ。
戦わねば――生きるために。
兄弟たちと共に略奪者に立ち向かう。
俺たちの倍はある身の丈、硬い外殻、さらには刃物を扱う知恵まである奴らは強敵だ。
皆で力を合わせ動きを封じ、外殻の隙間から中身を切りつける。
奴らの中には火を吐く者もおり、そういった奴は喉を切りつける。
体は小さめだがすばしっこい奴もいる。そんな奴は足を狙う。
どうにかこうにか今日の略奪者たちを仕留めることができた。
だが、兄弟たちが幾人も犠牲になってしまった。
悲しいことだ。
略奪者たちの持ち物を漁る。
切れ味の良さそうなナイフがあった。
せっかくなので貰っておこう。
それと肉は奥へと運ぶ。
おそらく明日の朝飯になるだろう。
――捕えた獲物を使って新しい子供を作るためにもしっかりと精をつけねば。
時折ふと思うことがある。
あの略奪者たちはいったい何という名前なのだろう?
彼らの鳴き声は酷く聞き取りにくいが、襲ってくる彼らがいつも必ず口にする言葉が耳に残っている。
『ゴブリン』――ひょっとしたらそれが彼らの名前なのかもしれない。
外殻=鎧