side アイリス
「信志さん……。」
「こんばんは。えーと、アイリスでいい?」
夜。
なかなか寝付けなくて、外の風に当たっていた私のところへ、信志さんがやってきました。
「はい、好きなように呼んでください。それで、どうしたんですか?こんな時間に。」
「いや、なんか眠れなくて……さ。アイリスは?」
「実は、私もなんです。」
お互いの理由が似ているとわかると、なんだかおかしくなって二人で笑い合います。
「まさかボクが異世界に召喚されるなんて夢にも思わなかったよ。」
しかし、彼のそんな言葉で私の体は硬直します。
「それは……、すみません。」
そう、彼にも家族や元の生活があったはず。
それを、私たちの都合だけで一方的に呼び寄せてしまった。
罪悪感を感じないわけじゃない。でも。
「でも、私は信じているんです。信志さん達、勇者様達ならこの世界と私たちを守ってくださると。」
私の大事なモノのためには、信志さん達にお願いするしかない。
この時、私は身勝手にも、勇者である彼なら頷いてくれると信じていました。
「……ちょっと待って。ボクは嫌だよ、魔族と戦争するのは。」
「え?」
「え?」
「……。」
「……。」
お互いに驚いた後、しばし沈黙がその場を支配しました。
「ど、どうしてですか?さっきはああ言って……。」
くださったのに、と続けそうになって思い出します。
さっきの陣での会話。
力強く返事をしてくださったのは正輝さんだけ。
「あの、その、えっと……。」
そのことに言葉を詰まらせてしまいます。
「……どうしてもなにも、この国が本当に正しいのかボクにはわからないからね。」
「でも。でも、現に魔族は」
「攻めてくる、んだよね?実はそれもちょっと疑ってるんだ。」
申し訳なさそうに、信志さんは言います。
その顔に、私はついになにも言えなくなりました。
「そう、ですか。……すみません、私はここで。」
「うん、お休みなさい。」
そう言って信志さんの元を去ります。
そのまま部屋に入りベッドに横になるも、出歩く前より目が冴えてしまい、なかなか眠れません。
「アイリス様ー、起きてらっしゃいますか?」
結局、朝に侍女が部屋を訪ねてくるまで目は冴え続けていました。
あふぁ……、ねむ。
こんな時間ですがちょこっと投稿を。
まだまだタイトル詐欺は続きます。ですが次回はついに主人公達も就職する、かと。
が、頑張ります。
余談ですが、自分が異世界召喚されたら〜って妄想したことありますか?
Whoさんはあります。
でも、そこで急に力を身につけて勇者やれって言われると、色々理由付けて逃げてしまうと思うんですよ。
今回の主人公にもそんなところをちょこっと投影していたり……。
もちろん、主人公をWhoさんみたいなただのチキンにするつもりはありませんが、一緒に頑張っていければーと思います。
では、また。