第4話 「空間系魔法」 エリア:石切り場
「ここが石切り場か……」
「はい、50年前まで使われていました」
俺とルーシーはキメラに襲われた場所にあった洞窟を通り早朝、石切り場の入り口に辿り着いた。
入り口には石の扉があり、固く閉ざされていてる。
押したり引いたりしてみたが微動だにしない。
「ルーシー、中にはどうやって入るんだ?」
「空間系魔法でこじ開けます」
「空間系魔法?」
「はい。空間系魔法を用いれば空間に歪みを生み出し、物質を分子レベルまで分解することができます」
……訳がわからん。
空間に歪み?
物質を分解?
すみません、僕物理とか習ったことないんでまったくわかりません。
「……わかりやすい説明を求む」
「つまりこういう事です。まずは、空間座標X,Y,Zを選択します。そして、選択した座標の空間を魔力で歪めます。この時、使用魔力量が多いほど大きな歪みを生み出すことができます。ここまでは大丈夫ですか?」
正直よくわからない。
まず、空間座標とはなんぞや?
物理×数学みたいな感じなん?
余計にわからなくなってきた。
ここは……
「な、なんとか」
見栄を張ることにした。
なんか、空間座標わかりませんって言ったらルーシーに呆れられそうで怖い。
「本当に大丈夫ですか?」
ルーシーは俺の瞳の奥を見つめてくる。
ヤバイ、なんか恥ずかしくなってきた……
女の子に見つめられるって、こんなに恥ずかしいとこなんだな。
初めて知ったわ。
「本当に大丈夫、先に進めてくれ」
赤らめた顔を隠すように両手を降り、先に進めるように促す。
「はい。空間を歪めた際に近くに存在する物質は分子レベルまで分解されてしまいます。理由は歪められた空間が亜空間と繋がっているからです」
亜空間……確か、物理法則が通用しない世界だったな。
ここで1つの疑問が生まれる。
「でもなんで亜空間に繋がってるからって近くにある物質が分子レベルまで分解されるんだ?」
亜空間に繋がってるだけで何故物質が分子レベルまで分解することができるのか。
これの原理がわからない。
まあ、そもそも亜空間に繋がってること自体がおかしなことだとは思うけど。
「なんだか学校の授業みたいになってきましたね! ここまで来たら私もトコトン教えちゃいます!」
あ、あれ?
ルーシーさんのテンションが……
「まず、亜空間は無の空間で物質は存在しません。そのため、亜空間を開くと外部に存在する物質を取り込もうという働きが生まれます。これによって近くにある物質は亜空間へと飲み込まれてしまいます」
あれか、ドラ〇もんのどこで〇ドアで待ち構えて宇宙空間は開いちゃった時に空気とかが吸い込まれるあの現象みたいなやつか。
「ですが、亜空間に物質が存在しないのには理由があります。それは、物質という概念が無いからです。亜空間にあるのは情報概念のみだけです。ちなみに情報概念というのは簡単に言ってしまえばデータのことです」
理解できますた。
亜空間というのは大きなネットワークのことで、物質はネットワーク内ではデータとして扱われる。
そして、転移魔法は転移装置というコンピュータがある場所間での移動が可能ということ。
転移装置、すなわちコンピュータを使わずに亜空間を開いて近くにあった物質が中に吸い込まれた場合、移動先が見当たらないから亜空間内に無限に留まってしまう。
これは現実の世界から消失したことになる。
これが空間系魔法の原理ということだ。
……クソ難しいな。
完璧に理解したとは言えないが、とりあえず空間魔法について教えてくれたルーシーにはお礼を言わないとな。
「ルーシーのお陰で空間魔法について詳しくなった」
「そう言ってもらえると嬉しいです! さて、それでは空間系魔法を使って石切り場の中に入りましょうか!」
どうやらもう石切り場の中に入るらしい。
「さあ、さあ、いきますよ!!」
……なんかルーシー、無駄にイキイキしてるな。
「よろしく頼むよ」
「任せてください!」
ルーシーは固く閉ざされた石の扉に向かって空間系魔法を唱えた。