冒険者見習い・『ビギナーダンジョン』
我がランクライド王国では、10歳〜15歳まで職業見習いに就くのが一般的である、
家業を継ぐ場合は自分の親に、
親の職業以外は各ギルドの見習い制度を利用する。
「母さん僕、冒険者見習いに今日登録しにいくね」
「アルトも冒険者見習いね、今日は久しぶりにみんなで冒険者ギルドへ行きますか!」
久しぶりに家族みなで冒険者ギルドへ歩く、
正面から入って両親と別れて俺は見習い登録窓口へ、
受付のお姉さんは若い緑髪のショートヘアの人である
「いらっしゃいませ、本日は見習い登録でございますか?」
どうやら子供相手にもキチンと対応してくれるらしい、
「はい」と元気よく返事をし次を待つ
「こちらに名前の記入と取得クラス、初等学校卒業証書を提示して下さい」
名前を記入し取得クラスを剣兵・武道家・水術師・地術師と記入する、
実は暗殺者の初級スキルで偽装があり自分のステータスをごまかす事ができる、
俺はステータスの中でレベルを15に偽装、
所持クラスも所持スキルも偽装した、
正式な冒険者登録をする時は鑑定レベルの高い人がキチンと鑑定するのだが、
見習いの登録はギルド職員の中でも見習いの人が担当するため偽装レベル1でも大丈夫だと考えたのだ、
更に両親にそれとなく探りをいれて俺を鑑定する人間は俺と同い年の人が鑑定する日を選んで見習い登録しにきたのである。
「ありがとうございます、それでは奥の部屋で鑑定をしますのであちらへどうぞ」
俺は受付のお姉さんに案内され個室にはいる、
中には椅子に座った同い年の子が居て俺を鑑定する子のようだ、
受付のお姉さんは部屋から退出していった。
「今回の鑑定を担当しますクリスです、よろしくお願いします」
行儀よく椅子から立ち上がって挨拶をしてまた着席した、
「よろしく」
と俺も挨拶をしてクリスの反対側に座った、
クリスの指示に従い机の上に置いてある水晶に手を置くと、
その水晶を見ながらクリスがミニ黒板に鑑定の結果を記入しているようだ。
「終わりました、この布で黒板を隠して先ほどの受付までお願いします」
「分かりました」
俺は再度見習い受付まで戻り黒板を提出、
受付嬢はしばらく受付で何かを操作して俺に向かい笑顔で
「見習い登録が完了しました。あちらで見習い講習をしますのでご参加して下さい」
と案内された、
なんとかごまかせたらしい。
俺は見習い講習と書かれた教室に入り適当な椅子に座り授業の開始を待った、
授業の内容は初等学校の簡単なおさらいとギルド内の練習施設の利用方法、
そしてこの町の見習い冒険者が唯一探索できるビギナーダンジョン内の出現モンスターの説明である、
一通り説明を受けこのまま町の各店に行き、
装備を整えてからダンジョンに行く事にした、学校では貸し出し装備だったがこれからは自前で買い揃えて行く事になる。
予算は今までスクールダンジョン内で貯めたお金と親からのお小遣いを銀行からひきだす、
因みにこの世界にも普通に銀行が存在している。
まずは武器、
初心者用の安い武器はどこもそう変わらないので、
ナイフ・ショートソード・グローブ・大盾・を購入。
次に防具、
革の鎧・革のマント・丈夫な服・を購入、
冒険者用の服はかなり大事で、
簡単に破れたりせず汗を良く吸いすぐ乾く高性能な服が今回の買い物で一番高かった。
次は道具屋、
ポーションは以外と安い粉末状の物で水に溶かして飲む、
味は不味いがHPを即回復出来る優れもの、
丈夫な袋と水筒、
今日の買い物しめて金貨4枚貯金が全部吹っ飛んだ、
明日はいよいよダンジョン探索だ今からドキドキする。
翌朝母親に作って貰った弁当を袋に詰め出発、
南門から町の外にでる、
初めての町の外は新鮮に感じた、
町の外周はレンガっぽい高い壁で囲われておりモンスターの侵入を防いでいる、
道なりに進むと途中から3つに分かれており、
今日から行く『ビギナーダンジョン』は南の森にあるのでその方角へ。
道に使われている石には魔物除けの効果のある素材が使われており、
滅多なことではモンスターに遭遇しないので道からはなるべく離れないで下さいと講師がいっていた。
既に他の見習い冒険者達はダンジョンの前で順番待ちしており、
俺は最後尾らしい、
町の外が珍しくゆっくり観察しながら歩いていたので他の人より遅くなってしまった。
『ビギナーダンジョン』の出入り口は大きな岩で、
見習い冒険者達はパーティー単位で順番に入り口に消えて行く、
「君の番だね、この水晶に触れて」
「はい」
と返事をして水晶に触れる、
水晶は青く光りギルド職員さんがOKの指示、
この水晶は『ビギナーダンジョン』に入る資格が有るかどうかを調べる為にあり、
資格が無い場合中には入れない。
俺は当然大丈夫なので、ダンジョン内に入って行く、
ダンジョンの中は洞窟のようで壁が淡く光っているおかげで視界は悪くない、
一階層を歩きスライム・ホワイトラビット・ゴブリンを狩りまくる、
『スクールダンジョン』よりモンスターの湧きが早いので現状だと1階層が限界かもしれない。
昼時になり一旦地上に戻る、
フロアの移動は各フロア内にある赤の魔法陣で出入り口へ、
青の魔法陣で次の階層へ、
黄の魔法陣で一つ前のフロアへとなっている、
俺は赤の魔法陣で出入り口に戻った。
ダンジョンの出入り口から少し離れて昼食を食べようとした時、
森の茂みが少し揺れたのでちょっと覗いてみたら、
脚を怪我した子供のグレーウルフを見つけた。
ダンジョン外で生息するモンスターは倒しても消滅したりせず、
ナイフなどで魔石等の素材を剥がないとならないのだが……めんどくさいので手当てをしてやり、
昼飯を与えてやった、
決して可哀想だと思った訳では無い。
午後からまた『ビギナーダンジョン』に入って夕方まで潜り夕日を見ながら町へ、
冒険者ギルド魔石買取カウンターへ向かう、
本日の稼ぎは銅貨3枚、
冒険者見習いとはいえこの世界で初めて自分でキチンと稼いだ金である、少し感動している……今日は良い夢が見れそうな気がする。