彼岸花6
6 安藤司
次の日の四時間目が終わり、昼休みになったところで、タツさんが俺のクラスにとんできた。
「司が言ったことが本当なら、きっとこいつが花だ!」
本当なら、と変に確信を持たれても困る。けれど、話を聞く必要はありそうだ。
「二年四組の火我元功。」
確かに、俺が言ったことに当てはまっている。でも、ヒガンバナの「ヒガ」だけしか入ってない…。
「本当にこの人なんですか?」
タツさんは、チッチッチーと指を振った。
「ここからが本番だ。聞いて驚くな。俺は元井と四組に行って気が付いたんだ。俺たち二人とも、張り込みの時にこいつに気づいてなかったんだ。」
不覚にも驚いてしまった。頭が空っぽそうなタツさんならまだしも、日和先輩まで気づかなかったなんてあるのだろうか。
「おい、今俺のこと馬鹿にしただろう。」
「え…全然全然。」
顔にでも書いてあったかな?タツさんは、そうか?と気を取り直した。
「でも、もっと信じられないのが、こいつ、クラスの誰からも話しかけられないんだ。」
「は?何言ってんですかタツさん。そりゃあ、頭空っぽだと思ってましたけど、いくらなんでもそれは」
「やっぱり馬鹿にしてただろ!」
しまった。声に出てしまった。俺はわざとらしく咳払いをして話題を変えた。
「で、どうするんですか。これから。」
タツさんは、そういわれると思っていたのか、前のようにはしぶらず、すぐに答えた。
「今日の六時間目が終わってから、元井が接触するって。」
「日和先輩が?危なくないですか?」
「俺もそういったんだけど、元井のやつ、『タツみたいな馬鹿そうな男子が行くより百倍ましよ。』とか何とかぬかしやがった。」
案外そうかもしれない。タツさんが行ったら、余計に事態がややこしくなりそうだ。
「てことで、帰りのホームルーム終わったら、すぐに二年のフロアに集合。急げよ。」
「タツさんには言われたくはないですよ。」
俺は軽く口をたたいた。