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花追い  作者: 金木犀
花追い同好会活動1
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彼岸花3


3 安藤司


 妙な部活に入ったものだ。自分でも、なぜこんな意味の分からない出来立てほやほやの同好会に入ったのか分からない。…いや、人は無意識に自分の興味がある物を目に留める、という話を聞いたことがある。分からないなんてきっと嘘なのだ。心のどこかでは分かっている。でも、分かろうとしない。そういうものではないだろうか。まあぶっちゃけた話、人数が少なかったってのもこの同好会に入った理由の一つで、それは結構大きかったのだが。

 ともあれ、先輩方も手探りな中なのに、俺が進んで出来ることもなく、先輩に言われたことをするしかなかった。先輩方が初めにやったことは、クラス調査だった。調査なんて大げさに言うが、実際は各クラスを見て回り、異常があるクラスがないか、花がいそうなクラスはないか当たってみようというものだ。何も情報がない相手に、どう太刀打ちできるか考えた結果だったのだが、どちらかというとこういう方法しかやりようがなく、否応なしに決まったという感じだった。この高校は規模が比較的小さく、各学年五クラスずつしかない。三人いるので、俺は一年、タツさんは二年、日和先輩は三年を回ることになった。

 気乗りしない作業は、正直言って億劫だった。花というものを、俺はまず理解しないといけない。理解してもないのに、いきなり死ぬなんて冗談じゃない。しかし、入ってしまったのだから、文句は言えない。俺は集まった翌日、早速一年のクラスを見て回った。

 …正直、本当にこんな方法で大丈夫かと心配になるほど何もなかった。どのクラスでも、昨日先輩方と話した噂話しか出てこないし、異常のあるクラスなどない。二年や三年もそうだろうか、などと思っていたが、違った。

「二年四組にいる。」

 これが、タツさんと日和先輩が出した結論だ。その日の放課後に、三人で再び集まった時の話だ。

「タツ、どうだった?」

という日和先輩の問いに対して、ずっと言いたかったのだろう、タツさんが耳をふさぎたくなるような大声で報告した。

「絶対二年四組だ。四組の奴らで、噂のこと知ってる人が一人もいなかった。」

「知らない?」

知らない。

誰一人として。

不自然に。

異常に。

「花が…いるのかしら。」

「多分だけど。」

 その日は、報告の後、これからの方針を決めた。張り込み。結局それしかできないということになり、しかも俺は一年だから二年のフロアにいたら目立つという理由で、何もしなくてもよくなった。やれやれ。

 初めての日が落ちてからの下校だった。いったい何をして遅くなったと聞かれれば、部活動としか答えられないが、その部活動でいったい何をやっていたんだろうかと、自分に聞き返してしまうだろう。…いや、ほんとに、報告と方針決めで何でこんなに時間がかかってしまったのだろうか。

 学校の周りは意外と街灯がなく、こんなにも暗いのかと、どうでもいいことで感心した。学校の前には小さな国道が一本通っており、ここを通らなければ帰れない。俺は信号で止まった。大型トラックが物凄いスピードで通り過ぎていく。

 ふと、俺の目にある人物が飛び込んできた。街灯の明かりでは、横断歩道の向こう側にいる人の顔までははっきりと見ることはできない。信号の向こう側にいた男は、うつむいていた。

 俺は目が離せなくなった。何だ?俺はあいつを知っているのか?いや、覚えている限りでは、あれは俺の知り合いじゃない。一年生なのかも定かでない。俺はあいつを知らないのに、何でこんなに目が離せないんだ?

 不気味な空気を感じた。『不気味』。そう、この言葉がきっと当てはまる。横断歩道の向こう側にただ佇んでいるだけなのに、いや、佇んでいるなんて大げさなものでもなく、ただ信号を待っているだけなのに、こんなにも異様な空気を感じる。

 信号が青になった。感情のこもらない電子音の「とおりゃんせ」がそれと同時に流れ出す。信号の青を知らせる音楽に、とおりゃんせを選曲するのはどうかと思う。俺は歩き出した。しかし、自分の足が無くなってしまったように感覚がなく、気持ち悪かった。緊張しているのだ、と客観的に思った。向こう側の男も歩き出した。と、俺の後ろから自転車がやってきて、俺を追い越した。

 一瞬だった。俺から一メートルも離れていないところを、爆音とともに車が走り抜けた。耳鳴りがして、周りの音が何も聞こえなくなった後、やっと、今目の前で交通事故が起こったのだと理解した。一歩も進めない。車と自転車を見ることもできない。こんな状態なのに、向こう側から歩いてきた男は、そのまま俺を追い越し、どこかへ行ってしまった。


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