第四話.初めての喫茶店、初めての……
買い物と、ポ●モンの解説が一通り終わると、時間はすっかり昼。お腹も空きました。
私はポ●モンセンターを出たところでGBAの売買をし、『それでは、ごきげんよう』と言って帰ろうとも、思ったのですが、もう少し教えて欲しいと……。彼女の為に知識集めに必死なのかな。『では、お昼でも』と言う流れです。
なんかマンガの展開って言うより、ドラマみたい。
「喫茶店でいいですか? ちょっと値段するけど、長居しても追い出されないし」
「あ、はい、そうですね」
喫茶店ってそうなの? 恥ずかしい話、喫茶店って入ったことないんです。入るシチュエーションがなかったんです。でも、この歳で入ったことないってバレると恥ずかしいので、バレないよう、がんばります。
「いらっしゃいませ」
ああ、ドラマと同じだ。でも、ドラマより暗くて狭いかも。でっかい荷物を持った田辺さんについて奥に向かいます。
「あ、この辺でいい? この辺ならあまり周りの目、気にならないでしょ」
ええっ、田辺さん、どういうこと?!
「ここなら、ポ●モン、出しても大丈夫ですよね」
ええ。そうですよね、田辺さん。
私は、無言で笑顔で答えました。
店の人がオーダーを取りに来てくれた時も、田辺さんが対応してくれました。なんだ、ファミレスと同じじゃない。でも、結局、田辺さんと同じコーヒーとナポリタンにしちゃいました。
「そうそう。来る前にゲーム機、いいですか?」
「あ、そうそう。買って貰わないと、明日から食べられなくなっちゃう」
あ、いつもの調子でしゃべっちゃた。
「くすっ。りょーさん、いつもはそう言うしゃべりですね? いつも通りでいいですよ」
「はい、しゅみません」
私は舌をぺろっと出し、猫パンチで自分の頭をコツン。ああ、いつも通りなことやっているなぁ。ネットで『RYOさん、変な人でした』なんて書かれない程度にしないと。
「ホントに八千円でいいんですか?」
「はい、間違って買ったものなので買って貰って助かります」
「ありがとうございます」
そう言って田辺さんはペコリとお辞儀。
鞄からGBAの入った紙袋を取り出し、田辺さんの前に滑らせました。
「お納めください」
田辺さんも受け取る時、
「うむ……って感じですか?」
と、乗ってくれます。ああ、いい人だ。
その後、早速さっき買ったゲームのポ●モンを開始。田辺さんは『へー』って顔してオープニングデモを見ています。なんでも感心します。ポ●モンに関して無知なだけなんですが、純粋な人に見えました。
そうしているうち、コーヒーが来て、ナポリタンが来ました。
よく考えたらパスタなんてピンコシャンコ跳ねるじゃないですか。ああ、どうしよう。生まれて初めて男の人の前で食べる食事がナポリタンって方、居ますか?
田辺さんを見ると、ぎこちないですが、ちょっとずつフォークに巻いて小さいくるくるを作って食べてます。時間かかりそうだけど、なるほど、それなら飛ばない。がんばります。
たぶんいつもなら半分の時間で食べ終わっているんじゃないでしょうか。ゆっくり食べたので満腹中枢が反応。量が少ないと感じましたけど、満足です。この食べ方、いいかもですね。
その後、ポ●モンのゲーム指南です。私も自分のGBAを出して、ゲームを起動です。田辺さんに譲ったGBAと同じカラーのやつです。
「あ、お揃いになりますね」
「そですね」
なんか田辺さんの言い方、丁寧って言うか、かわいいって言うか……。最初、お向かいに座ってゲームしていましたが、逆さだとわかりにくいと言うことで、田辺さんは私の横に移動してきました。
さりげない移動。意図的かな、ほんとに画面が見づらいからだけかな、汗くさくないかな、大丈夫かな。そんなことを考えちゃいました。そんなこと考えるとは、なんか普通の女の子みたいじゃのう。
「なるほど、こうやって成長させて、進化させていくんですね。ははー。プログラムは単純かも知れないけど、データがよく出来ているんだなぁ」
田辺さんは変な関心の仕方をしてます。
「よし、次までに成長させておきますね。是非真剣勝負をお願いします」
「う、うむ。胸を借りるつもりでかかってらっしゃい」
あれ、ちょっと使い方がおかしい?! あ、やっぱり。田辺さんが笑っている。
「あははは。りょーさん、おもしろいですね」
そのコロコロ変わる横顔は見ていて飽きなかったです。
「あ、そうだ。すみません、1つ、聞いていいですか?」
田辺さんが私を見て改まって聞いてきました。
「あ、はいな」
ああ、いつも通りすぎる返事。ま、いいか。
「りょーさん、返事遅かったですよね。最近掲示板にも書き込まれていないようですし」
あれ? 私の心配?
「実はPCが起動しなくなっちゃって……あ、そう言えば、田辺さんパソコン関係のお仕事でしたっけ? 原因わかります?」
「見ましょうか?」
「はい」
そう言って私たちは当たり前のようにゲームをしまい、荷物をまとめ、会計に向かいます。
「あ、いいです。今日はいろいろ教えて貰ったし、出しますよ」
「あ、でも」
「お願いします、出させてください」
田辺さんがそこまでおっしゃるなら……。
「ハイ、ごちになります」
初めての男の人のおごりで、こんな挨拶。あーあ、と思いながらもいいんです。だってこれが私なんですから。
大きな『ミス』をしたことに気が付いたのは、駅で切符を買う時でした。
「りょーさん、いくらの買えばいいですか?」
「あれ、田辺さん、今時スイカ、持ってないんですか?」
ちょっと鼻で笑っちゃたかもしれません。
「いや、忘れちゃって」
後頭部をかきながら恥ずかしそうに笑います。
「210円です」
「了解」
「あ、荷物持ちます」
「ありがとう」
「お礼なんて……ほとんど私の荷物ですよ」
田辺さんは小銭を出し、券売機へ。切符を買うところを久々に見ました。
切符を買った後は、また荷物は田辺さんが持ってくれました。ぬいぐるみなどでかさばる荷物ですが、昼過ぎ、夕方前なので、まだ電車内は空いていてよかったです。
三人掛けシートを二人と荷物で占拠して、外を眺めている時、やっと、『ミス』に気が付きました。
あれ? PC見て貰うってことは、私の部屋に入るって事じゃん!!!!!!!!
たぶん、二人とも深く考えて行動しないタイプだった……?!




