第二話.会うメールを出しました
『RYO様。返信遅れてすみません。まだ、他の方へ譲渡されていませんでしょうか? 気が変わっていませんでしょうか? こちらはぜひにお譲りしていただきたいと思っております。受け渡し方法ですが、もし近ければ、直接交換いたしませんか? こちらは、千葉県XX市です。東京に出るのも容易です。 TTB』
TTBさんのメールはこんなのでした。TTBさんはの返信は次の日の朝ですから、ぜんぜん遅くないですよ。
実はあれからパソコンの調子が悪くなり、3日ほどメールが見れなかったのです。もちろん掲示板の書き込みもしばらくお休み。実は会社からこっそりアクセスしてみたけど、見られたらヤバイって感じでほとんど出来ませんでした。
昔、ショップに組み立てて貰ったPCなのですが、そのショップはすでに廃業。どこに聞いていいかわからず、適当に分解して組み立てての日々でした。
それで、今日、たまたま起動しました。うれしかったですね。急いでメールだけ受信して、急いで返信を書きます。だっていつ止まるか、次、いつ起動できるか……。
そんな風に慌てていたからミスをしてしまったんです。ミス? 普通に考えるとミスですよ。
『TTB様へ こんばんは、RYOです。こちらこそ遅くなり大変申し訳ありませんでした。実はPCの調子が良くなく、最近起動すら出来ずにいました。今日、たまたま起動出来たので、こうしてメールさせていただいています。取り急ぎ、受け渡しですが、私、今度の日曜日、東京のポ●モンセンターに見参予定です。限定の色違いのポ●モンフィギュアが発売されるんです。朝から並んでいますので、もしよければお待ちしています。髪の毛がちょっと赤なのでわかると思います』
そんなメールを返しちゃいました。
二度と起動しないかも知れない、と言う恐怖でその日はPCの電源を切らずに寝ました。
幸い、次の日の朝も動いていました。もう、切らない。
◇
「るりこ~。今度の日曜、買い物行かない~、服~」
ちょっと暇になると、なこは私に声をかけてくれる、性格は普通の子です。
「おはよー。ナコ~。今度の日曜は、ちょっと用事が……」
「お? 彼氏?」
「いやいや、いない、いないでござるよ」
「ほんとに?」
当たり前じゃないですか。こんな150のチビで……ぽっちゃりの……腐女子ではないと思うけど……、オタクっ娘を……誰が彼女にするのって。最近はコスプレの関係でダイエット成功しましたけどね。なので、未経験なのに妊娠線が出来ちゃってます。
「ホント。ちょっとお家のPCの調子が悪いので、何とかしないと」
「自分のPC持っているの? すごーい」
ごめん、ナコ。ホントはポ●モン限定品も買いに行かなきゃならないの。服よりポ●モンですよ。
そんな小さい嘘をついたからでしょうか。その頃、私のお家のあたりに雷が落ちたらしいです。はい。停電です。
結局それから日曜の朝まで、PCは起動しませんでした。
◇
日曜日。天気良し。
その日の朝、久々に服装で悩みました。ポ●モンセンターに行くだけなら、普通の格好でいいのですが、一応一瞬とは言え、男の人に会うわけだから……。あ、男の人に会うんだ!!
「うわ、なんか怖くなってきた」
そうです、いとも簡単に見知らぬ男の人と会うメールを昨日送ってしまったのです。すごいミスだと思いませんか? 年齢も聞いていない……。
正直、男の人と話すのも高校の時以来になるかも……。
行かないほうがいいか? でも、限定品が……。しかし……。
はい、限定品の勝ち。夜、会うわけじゃないですし、ポ●モンセンターには子供もお店の人もいるし、彼女のためにGBAを手に入れようとしているわけだし。
はい、答えは、Eさんでした。
◇
「一応、私なりに女子力マックス装備!!!」
そう自分でも言いながら、私は真新しい下着を開封。服装も一番まともなものをチョイス。ナコと一緒に買い物した時に買っていたもの。ナコの私服センスはかわいいと思う。バンドやめたらいいのに。でも、それはそれでモテているみたいです。
一応シャワー浴びて、真新しい下着を着て……
「こんなの履いていたら、なんか期待していると勘違いされるかな。いえいえ見ないところからおしゃれは始まっているのだ」
ニヤニヤして、妙な妄想をして、なぜかガッツポーズ。妄想は個人の自由です。二次元でも三次元でも自由でしょ。基本、私は二次元ですが……。あれ? それって腐女子になるの?!
【1】しかなかった女子力を【2】にしたところで、なんてことはない。いつも通り、いざ出陣よ!
部屋を出て5分ほどで駅ですが、途中で引き返しました。すみません、売るGBAを忘れてきました。余裕を持って出たので時間的にはぜんぜん大丈夫なんですが、やっぱり心にぜんぜん余裕がないようです……。
「ただ、GBAを買ってもらうだけじゃん」
二回目に部屋を出るとき、玄関にある鏡の自分の座った目を見て言い聞かせました。
◇
「わ、もう並んでる!」
私が東京のポ●モンセンターに着くと既にシャッターの閉まった店の前に人が並んでいました。
「みんな早いなー。開店1時間前だぞ。そんなにしてまで手に入れたいのかね」
そう呟きながら列に近づきます。はい、私もその一人なんですけどね。
並んでいるのは20人ほどなので、限定数的には問題ありません。列に並んで一息ついた時、ハッとしました。
「ももも、もしかしたら、TTBさん、もう居るのではないか?」
メールや書き込みを見る限り、まだ、ポ●モンに詳しい感じではありません。多分普通の男の人。列には大人の男の人は居ません。しかし、通りかかる男の人がみんなTTBさんに見えはじめて、プチパニック開始です。年齢も分からないので、おじいちゃんが通りかかってもドキドキです。
来なきゃ良かったかな、と、この時は思いました。
周りを見ていると気が疲れちゃうので、壁に向いて自分のGBAでゲームすることにしました。もちろんポ●モン。プチ引きこもり開始です。他にも一人で来て並んでいる人は同じようにゲームをやっています。
どれくらいゲームをやっていたのでしょうか。ちょっとTTBさんのことを忘れかけていた時、突然声をかけられました。
「すみません」
ビクッとなって、体が飛び跳ねたのが自分でもわかりました。それがまた恥ずかしくて。
極力、笑顔で恐る恐る声のほうを振り向くと、そこには、なんと中学生ぐらいの丸刈りの男の子が立っていました。
え? そういうパターンの奴~~~っ!?
私は心の奥で叫びます。このパターンは思いつかないですよ。ゲームでこんな展開、マウス投げるんじゃない?! ライトノベルでも、この先の展開を現実世界じゃ、話、進められないでしょ。この子が魔王だったり、触ると異世界に連れて行ってくれるとか……。ショタコンならこの展開もあり? 残念ながら私はノーマルに美男子のほうが……。
いろいろ考えながら、いろんな意味でがっかりしながら、私は鞄の中のGBAの入った紙袋に手をかけた時です。
「ここが最後尾ですか?」
「……は・い、そ・う・で・す」
かなりの棒読みだったに違いありません。
物の売買で異性の知らない人に会う約束した事のある人、他にいらっしゃいますかね!?




