06.つまりは成り行きって訳で【Side彼】
何を今更。
アズラスなんて丸分かりじゃん。あれが人間にできると思うか?
「何? 人間かと思ってたりした?」
「だって、どこからどう見ても人の姿してるじゃない!」
「人の姿してるからって人間だとは限らねぇぜ? アズラスのだって見ただろ?」
「見た、けどっ!」
あ、言葉につまってる。
見たけど信じられないって言ったところだな。どっかの頭が固い野郎みてぇ。
「何か聞きたい事があるようですね」
アズラスがやんわりと言った。
眼で、別にこれくらいは良いでしょう(断定気味)と言ってくる。
「まぁ、SSクラスの人間だしな。分かる範囲で良ければ答えてやるぜ?」
「その何とかクラスの人間って何? 希少種って、どういうこと?」
間発を入れずに言い切られた。なんでか目が据わってるんだけど。
つーか、始めの質問がそれ? 普通、あんた何者からだろ?
あえて避けやがったな……。
「……俺等の、人間のランク分けだ」
「どう言うこと?」
ったく、俺は説明とかあんまし得意じゃねぇんだけどな……。
「お前等には分からねぇだろうけど、人間には俺等の魔力を上げるような力があるらしい」
「え、何それ……」
「まぁ、あるらしいんだわ。深くは聞くなよ、俺分かんねぇから。そんで、D〜SSまでランクがあんだ。Dが一番低くて、SSが一番高い」
だいたいは感覚で適当なんだけど。
ここまででアズラスがツッコミを入れてこないから、きっと間違ってないはずだ。
「あ、ちなみにお前のランクはSSで、一番高いから希少種って言ったわけ」
「あ、あたしが!?」
あ、驚いてる驚いてる。
少しの間固まったかと思えば、急にぶんぶんと腕を振って大げさに否定し始めた。
「ちょ、ちょっと待って。あたしがそんな大層なもののはずないですから!」
「こればかりは、産まれ持っているものなので……。どうとも言えません」
そうゆうモノって軽く受け入れられねぇのかよ?
広い心とゆとりがねぇ奴。
「ちょ、まっ……。意味分かんない。全っ然、わけわかんないんですけどっ!!」
……混乱してらぁ。
まぁ、俺等の間でもハッキリしてないことを、人間の小娘が理解しようとしてるんだから当たり前だろうな。
ま、てめぇの都合は知らねぇけど。
「ほら、他は? 特に無かったら帰っぞ」
「あぁっ! 待って待って! ある! ありますっ! まだ質問があ〜る〜か〜ら〜!」
ちょ、おい! ローブを引っ張んな! 絞まる、絞まってる! 殺す気か!?
帰るとか冗談だったのに、本気出して引っ張るか普通。
「あなたたちは、どこの種族の者?」
「……ふぅん。何者とは聞かねぇんだ」
ちょっとは誉めてやるよ。
と言う俺の心遣いを、そいつは見事に砕いた。
「あのさ、薄々思ってたんだけど、本物のバカ? それともただ単に馬鹿な振りをしているだけ?」
「ちょ、おま」
「それを言うなら明らかに前者ですよ。振りをする必要も無いくらいに」
「あぁ、やっぱり」
「おい! なんで納得してんだよ!?」
と言うか、アズラスも少しくらいはフォローしてくれてもいいもんだと思うんだけど!?
俺の主張も、その女はたかがため息で一蹴しやがった。
「何者とか一々聞いてたらキリないでしょ。第一ここは異世界だし、どうせ変なのいっぱい居るような気がしてならないのは分かってるんだよお馬鹿さん」
「おい、最後のは明らかにいらねぇだろうが」
しかも変なのってなんだよ、変なのって。俺も変なの扱いかよ。
「あなたは、龍族ですよね?」
「えぇ、申し遅れました。私は竜人族のアズラスと申します。アズラスで結構ですよ」
「アズラス、さん……。なんか照れる」
お前が照れてどうすんだよ。照れるのは普通アズラスの方だろーが。
……なんか俺ん時とアズラスん時の態度違くねぇ?
しかも、アズラスの事一発でどの種族かわかってるし、変なの扱いしてないし。
「……差別反対」
「だって、あんたは別にどうでもいいし」
なんだよそれっ!? さっきのしおらしさはどこ消えたんだってくらいの突き放した言い方!!
ったく、なんだよ……軽く傷付いたぞ。
不貞腐れた俺を見て、アズラスがフォローを入れたんだろう。そいつのため息が聞こえる。
「……はぁ、わかったわかった。そこでいじけてるあなたは何族?」
……本当にどーでもいいみてぇだし。聞く気0じゃん。
「……聞いて驚くなよ」
あ、ちょっと偉そうに言ったのは聞いてくれて嬉しいからとかじゃねぇからな。勘違いすんじゃねぇぞ。
俺は、一応周りに人間がいないか確認してからフードをとった。
「俺は魔族だ」
はいっ、おばかさん認定されました〜
彼は初期設定にもぅおばかさんとありました。ちょっと残念な子です。でもあれ、ツンデレなんかじゃありません。もっと残念な子です(酷い言いよう)