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異世界×あたし  作者: 葉山
【第一章】こんにちは、異世界
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03.無意識と無自覚ほど性質の悪いものはない【Side彼】


「ん……。ん?」


 俺は眩しい光に目蓋を刺激されて、ふっと意識を覚醒させられた。重い体を起こして、ゆっくりと周りを見渡す。


「っこ、ここは……?」


 なんか、どっかの海岸っぽいけど……。俺の知ってるとこじゃねぇ。

 端っこ見えないし、後ろは鬱蒼としたジャングルだし、島……みてぇだな。


「ディー? おい。生きてっか?」


 再び空中キャッチしたディーの肩を揺さ振ってみる。が、まったく起きる気配がねぇ。

 軽く肩が上下しているから死んではいねぇとは思うけど……。大丈夫だよな?

 さんさんと降り注ぐ太陽の光に目を細めて、目元までフードを被りなおした。


「……変な場所じゃないといいけどな」


 今ここに人間がいなくて良かった……。いやマジで。

 魔族を毛嫌いしているやつの方が多いからな。

 なんかしてきたら魔法でも一発ぶちかましてやればいいんだけど、今手加減できねぇしな……。それだけで済まないってこともあるけど。

 ま、こうしていてもしょーがねぇな。


「おい、ディー。いい加減起きろよ」

「ん……」


 もぞりと寝返りをうったとき、白い首筋が露になった。

 そっか。そう言えばこいつ女だったっけ。なんやかんやで忘れてたな……。

 こうしてみると、ただの女の子って感じする。


「いやいやいや、違う違う違う。別に何が違うって訳でもねぇけど、まずは起こすのが先だ!」

「ぅ……。せん……せぃ…。数学だけは……。すぅ…がく……だけ……は…」

「せんせい? すうがく?」


 そりゃどんな寝言だよ? 揺さ振ってその寝言はねぇだろ……。

 ったく、面倒臭ぇなぁ。


「ディー。マジで起きろって」

「うっさぃなぁ……」

「寝てるのか起きてるのか位はっきりしろ……よ?」


 怪訝そうに、うるさそうに腕を振られたとき、違和感を覚えた。


 ディーじゃなくて、俺に。


 っ、あれ? 何か、身体、おかしい。

 こう、魔力が忙しなく蠢いて……制御、出来ないっ!


「ディー! ディルセア! あと、何て言う名前だったか忘れちまったけど、何でも良いからさっさと起きろっ!!」

「んん……」


 叫ぶだけ叫んでも……ダメだ。眠りの国から戻ってこねぇ。

 ぶるりと身体が震える。

 これは、苛立ち? それとも、怒り?

 感情が魔力をかき回して、勝手に魔法を発動させちまいそうだ。呪文を媒介にせずに、そのまま。


 押さえ、られない……っ!


 魔力が暴発しそうになるその時、一匹の猫がディーの元に擦り寄ってきた。

 色が紫ってのがめっちゃ気になるんだけど……。

 こんな時に近寄ってくるって、どんな神経してるんだよ、こいつはっ!


「みぁ~」


 その猫は何回かディーの頬を舐めた。

 ちょっ、緊張感持て! せめて空気読め!

 俺、今まさに魔法発動しちまいそうなんだけどっ!?


「みぁぁお」


 今度はその肉球でぺしぺし叩き始めた。

 だからぁ、今、踏張ってこうして苦労してんの。軽く魔法使いそうなの、わかる? って猫に分かる訳ねぇか……。


「おい。死にたくなかったら逃げろよ」


 その猫は俺の姿を認めると一度逃げたが、すぐに戻ってきた。

 戻ってくんなよ……。頑張ってる意味ねぇじゃん。


「いい加減起きろよ! 俺、後のこと知らねぇぞ!?」

「なぁぁご」


 頭良んだか悪いんだか……。またぺしぺし叩き始めてる。

 誰かの使い魔……な訳ねぇか。だったら一匹でここにいねぇだろうし。


「……くっそ」


 暴発させるよりはましだよな。水だったら、被害少なさそうだし……。

 俺は腹を括って、呪文を媒介として魔力による魔法を発動しようとした。


《生命の源である水よ聞け。オルドビ》

「フーッ!」


 ガブッ。


「いったあぁぁぁ!!」


 これには唱えてた呪文も途中で止まっちまった。

 呆気にとられて、あれほど荒れ狂ってた魔力でさえぴたりと止まった。

 何したと思う?

 あの猫、ディーの腕を噛みやがった!

 おかげでディーは一発で起きたんだけど……、後が恐いのは俺だけか……?


「いったぁ!! 何これ!? 痛いの痛くないの関係無しに本気で痛いんだけどっ!!」


 うわぁ、歯形の跡ついてる。

 幸い血は出てねぇけど、あの場所はいてぇよ。

 二の腕の内側って言うの? フツーにつねるだけでもいてぇのに……。


「ビス!」

「う、あ、はい!」


 こぇぇって。睨むな。

 思わず返事しちまった俺も俺だけど……。


「なんで噛んでるの!! つーか、どこ噛んでるか分かってんの!! マジで痛いんだけど!? どーしてくれんのよ!?」

「俺のせいかよ!? 元はと言えば起きねぇディーがわりぃんだろ!?」

「はぁ? そんなの知らないわよ!?」

「すうがくとかせんせいとか、変な寝言がめちゃめちゃ多かったぞ?」

「なっ!?」


 いや、マジで。

 あ、みるみる顔が赤くなってる。うっわ、茹でダコみてぇ。


「しかも、噛んだのは俺じゃなくてそこにいる猫」

「みゃぁぉ」


 これがまた良いタイミングで鳴いてくれるんだ。

 本当に俺の言葉が分かってるみてぇにな。


「うっわ、可愛い~。何? この猫どうしたの?」


 すいません。すっごく態度が違うんですけど……。

 しかも、アズラスに引き続き猫とも比べられても負けですか……。


「知らねぇ。だっていつの間にかいたんだぜ?」


 それに、ディーなかなか起きなかったし。


「ふぅん。でも、この肉球といい毛並みといい、すっごく良いわぁ……」

「なぁぁぅ」


 ディーはディーで猫にかまいっぱなしだし、猫は猫でゴロゴロ言っているし……。

 なんか気にくわねぇ……。疎外感。


「ちょっと周りの様子を見てくる」

「んー。いってらっしゃい」

「にゃぁぉ」


 だから、俺等の言葉がわかってんだろ?

 ……にしても、何でいきなり魔力が暴走して、唐突に消えたんだ?

 俺の意志とは、無関係ってのは、初めてだ。

 ……契約したから?

 何なんだろ。……分かんねぇや。

 俺は、なんか色々なもやもやを抱えて、砂を踏みしめながら、森の中へと向かった。




前回予告した通り、長くなりました。

長々と申し訳ないです。が、多分ちょくちょくこう、長い部分がはさまれると思います。


二つの視点から書いているものですから、足りない部分を補おうとすると、どうしてもこう、バランスが取れないんですよね。

未熟者です、精進します。

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