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異世界×あたし  作者: 葉山
【第一章】こんにちは、異世界
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02.後にするから後悔と言う【Side彼女】


 地球に、帰る。


 がんと目が覚めた気がした。

 そうだ、あたし帰るんだった。帰るつもりで動き出そうとしていたのに、何やってんだあたしは!

 そうはっきり強く思うと、頭が冴えてきた。

 赤い揺らめきも気にならない。

 捕られたままの腕を放してもらおうにも、絶対放してもらえなさそうだから、あたしは思いっきり足を踵で踏んでやった。


「……だっ!!」

「放せ変態!!」


 なんかの痴漢撃退法で聞いたこと。

 腕捕まれたら全体重で足を踏んでやれと。後は痛がっているうちに、鞄を当てて逃げるべし。余裕があれば急所を狙え。

 いやまさかこんなところで役に立つとは思ってなかったけど。 無我夢中でその手を振りほどいて、あたしは慌てて逃げ出した。


「ディー!!」


 呼ばれるままにビスの後ろに隠れた。

 知らない変態よりは、お馬鹿でもビスの方がまだましだきっと!

 その背中に隠れて、その魔族の視界に入らないことをいいことに、あたしは思いっきり叫んだ。


「あたしはっ! お金持ちになりたいとか、綺麗になりたいとか永遠に生きたいとかよりもっ!! ただ家に帰りたいだけなのっ!!」


 絶対これ睨んでるよ。見たくないから見ないけど。


「そいつと契約するってこと? この俺を袖にして」


 あ、そっか。その状況はそうとれるような感じだ。しまった、そんなつもりはなかったんだけどな。

 でも、ここで否定しても状況は変わらない、よね。


「……少なくとも、あなたとは契約はしない」

「だから、そいつと契約するってことか!? ふざけんなよ!?」

「し、知らない知らない知らない!! やめてよ、あたしは何の関係も無い!!」

「どこが関係ないだ! いいから来い!!」

「待てよ。どう考えても、魔法使ったようなやつと契約なんかしたくはないだろーが、力尽くとか男として駄目だろ。常識的に考えて」


 ビスに常識なんてこと言われたくないと思うけど。

 ああ、でもこの一言にかなりあたしは救われる。

 だって、この人怖いんだ。だからこんなことを叫んでしまったのかもしれない。




「あ、あたしはあんたとは契約しない!! それくらいならビスと契約する!!」




 あたしの言葉にビスはかなり驚いたみたいで、その金朱の瞳を丸くしてあたしの方を向いた。


「……いいのか?」

「……き、期間限定でなら」


 後ろめたくて小声で言ったあたしに、ビスは忘れんな。と気持ちさっきよりやる気で魔族の方へと向かい直った。


「と、言うことで、てめぇはお呼びじゃねぇんだ。帰れ」


 ビスが擁護してくれるのをいいことに、あたしは調子いいことを言ってしまったかもしれない。

 なんて、そんなのいつも言ってから気付くから駄目なんだろうけど。


「はぁ? ふざけんな? 誰がこんな極上目の前にして逃げなきゃならねぇんだよ!」

「俺は先に忠告したからな、帰れって」


 こんなときにあれだけど、ビスはへたれたお馬鹿さんじゃなかったようです。

 ビスの言葉にかっとなったらしい魔族の人は、感情のままに殴り掛ってきた。拳を硬く硬く握り締めて、ぐっと奥歯をかみ締めて。

 あれ当たったら痛いだろうなぁ、なんて。足がすくんで動けないあたしを抱えて、ビスはビスはそれをなんなく避けた。

 地味にすごくないか、ビス。ちょっとだけ見直したよ。ちょっとだけだけど。


「ちょっと……だいぶ……やっぱりちょっとだけ離れてろ!!」

「どっち!?」

「危なくない程度に離れてろってことだよ!」

「よそ見してると綺麗な顔に傷がつくぜ!?」

「危ない!」


 なんとも適当な答えに後ずさりしていたけど、ナンパしてきた魔族の人がビスの顔めがけて拳を繰り出してくる。

 思わず叫んじゃったけど、ビスはパシッとその腕を掴んで右ストレート!

 清々しいほどのクリーンヒット! わぁお。鼻血が綺麗な弧を描いてるよ。


「くっ、くそ!」


 無様に倒れた魔族の人は、すぐさま跳ね起き、ジャンピング・ニー・アタック!

 しかしそれも、避けた勢いのローリング・バックブローのカウンターでダウン!

 え? カタカナの意味が分からない?

 いや、詳しく言うよりは技の名前言ったほうが早いと思って。実際に見せられないのが残念だけど、格闘技見てる感じですごいよこれ。


《我に力を与えし》

「魔法で俺に勝てると思ってるのか?」


 俺様が魔法を使おうとしたけど、ビスがばっとお腹目掛けて蹴り上げた。ぐぅっと、ここまで声が聞こえたからまともに入ったみたい。


《我が身に力を与えるもの。オルドビスの名において、彼の者を弾き飛ばせ!》


 ごうっと風がうねりを上げてビスの元に集まってくる。


「わわっ!?」


 とっさに近くの木にしがみつかなかったら、きっとあたしも巻き込まれていたかもしれない。 だ、だいぶ腕がしんどいんだけどね。そんな弱音はいている場合じゃないみたいなんで。


《風魔法・突風襲来!》


 そう言って、ビスは魔族の人に向かって風の塊って言うのかな? 衝撃派みたいなものを打ち込んだ。

 なんだか鈍い音を立てて吹き飛ば……弾き飛ばされた魔族の人は、漫画でよくあるように星になってくれたと信じてる。空の彼方へ消えてった。


「ふぅ……って、何で木に抱きついてるんだ?」

「あんたのせいでしょ、このお馬鹿!」


 なんかものすごい風が荒れたからこうして必死に木にしがみついて耐えてたのに、なんて言いざまだこいつは! 誰のせいだと思ってるの本当に!?

 あまりにいらっとしたから、ビスの一つに結んだ髪を引っ張ってやった。……さらさらすぎて更にいらっとしたけど。


「ちょっ、痛っ!? いてぇよ!! 何で髪ひっぱんだよ!? あだだだ、禿げる禿げる!!」

「いっそ禿げれば配慮するってこと覚えるの!? 少しはあたしへの被害も考えてよ馬鹿あああああっ!!」

「被害って、今被害受けてんのは明らかに俺だろーがっ! 痛ぇっての!!」


 涙目で訴えてくるから、やり場の無い怒りを感じながらもあたしは手を放してあげた。

 本当にっ、助けてもらったはずなのになんだろうこの理不尽さはっ!!


「助けてやったのになんだよこの仕打ちは……」

「やり方ってものがあるでしょ馬鹿っ! 何? なんなの、御礼でも言って欲しいわけ?」

「そうゆう訳では無い訳では無い」

「どっち!?」


 イライラしながらの言葉に、逆ギレすることなく、いけしゃあしゃあとビスは言った。

 結局は感謝してほしいってこと?

 ま、確かに助けてもらったことは事実だし、ちょっとしゃくだけどこれは礼儀だもんね。ちゃんと、言葉にして感謝くらいはするか。


「……ありがと。助かった」

「おう」


 ぶっきらぼうな言葉にも、ビスはどこか得意そうに笑って答えた。

 これじゃあたしが悪者みたいだ、なんて。可愛くない態度をとったあたしも悪いんだけど。




軽い? 戦闘…いや、喧嘩描写がありますが、これくらいなら警告タグチェック付けなくてもいいかな、と。

もし不愉快な思いを去れた方がいらっしゃいましたら申し訳ないです。



ディーがツンデレっぽい(笑)

そしてビスが頑張った!

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