03.それに既視感を覚えて【Side彼】
ディルセア。
我ながらなかなか良い名前を思いついたと思う。
「何? ディ、ディル何?」
「ディルセア。ダークダイアモンドのことを魔族の言葉でディルセアって言うんだ」
「あたし、ダイアモンドって柄じゃ無いんだけど……」
そうか?
黒耀石の色の髪に黒真珠の瞳。かなり綺麗じゃん。
性格についてはあえて触れねぇけど。
「気にすんなよ。別にいいだろ?」
「いやそんなにあっさり決めないでよ!? どこがいいっていうの!?」
「なんだよ、何が気にくわねぇんだ?」
「全部に決まってんでしょーが!」
「はぁ? 全然いいじゃん。何が全部だよ、ありがたく思えよな?」
「思えるか! たかだかビスのくせに威張らないでよ!」
「ビス?」
は? 何だよ、ビスって。
聞き流しそうになったけど、思わず聞き返した。話の流れ的に言うと、かなりけなされているような言われ方だけど、まさかな。
「あなたの事。名前、たしかオルドビスでしょ? だから略してビス」
まあ、そんな気はしてたけど。
だからってビスはねぇだろビスはっ!
「勝手に人の名前縮めてんなよな! じゃあお前もディーで十分だ!」
「はあ!? 人の名前勝手に決めたやつが何言ってんのよ!?」
「てめぇが好きに呼べって言ったんだろーが! 自分の発言くらいちゃんと責任持てよな!!」
「だからって、あたしにだって拒否権くらいあるでしょ!?」
とかなんとかくだらない事で言い争ってる途中、体中から急に力が抜けた。
「んなこ……とっ!?」
「な、何? どうしたの!?」
ほら、あれだ。オーバーヒートってやつだ。
さっきでっかい魔法使うことになっちまったからなぁ……。まじでねみぃ。
心配そうに覗き込んでくるそいつの顔。流れ込んでくる不安。なんだ、結局は不安なんじゃねぇか。
「わりぃ……。ちょっと、休戦……な……」
「ちょっ、ねぇ。待ってよ!」
「すぐ起きっから……そこに……い………ろ……」
「待ってってば!! ねぇ、起きてよ! 説明くらいしてよ!?」
「後、でな…………ディー」
「ちょっと、ねぇ! ビスってば! 起きろこらっ!」
そんなディーの声もしだいに遠くなり、俺は意識を眠りの渦に身を委ねた。
ビスはなかなかロマンチストのようです。
「ディルセア!」とか呼ばれるたびに、「宝石ちゃん!」と呼ばれるのと同じと気付いたディーは、恥ずかしさに身悶えていれば良いと思います(笑)




