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初めての拒絶の衝撃波
彼は、まるで長年の重荷を下ろしたかのような、晴れやかな笑顔を浮かべていた。
私が署名した離婚届を大切そうに鞄にしまい、席を立とうとする。そのあまりに無邪気な様子に、かつての愛おしさが一瞬だけ胸をかすめた。私は愚かにも、指先で彼のマシュマロのような頬を、つんつんと突いた。
――その瞬間だった。
彼は、これまでの十年の歳月で一度も見せたことのない拒絶の仕草で、私の手を強く振り払った。
氷のような冷たさと、無機質な拒絶。
その手の感触が、私にすべてを理解させた。この十年の愛も、葛藤も、共に過ごした異国の夜も。すべては「東和パッケージ」という巨大組織が書き上げた脚本であり、彼はそれを忠実にこなした「配役」に過ぎなかったのだと。
私たちの地獄は、あのバブルの熱気に浮かされた御茶ノ水の、満開の桜の下から始まっていた――。




