婚約者嬢に、縋りたい
読みに来てくださって、ありがとうございます。
後編のギーニアス編です。
ギーニアスめ~ぺしぺしヽ(`Д´)ノプンプン
ギーニアスside
俺は、目の前の令嬢をよくよく見た。うん、令嬢にしか見えない。しかも、婚約者のロアンナに非常によく似た……
似てるか?似てるよな?いや、何となく似てるだけで。よく見たら、令嬢にしては、線が太いし、少年と言われれば、女装している少年に見えなくも無い。
「で、どうするんですか?あれ。私は、ちゃんと自己紹介しましたよね?しかも、姉と貴方の婚約式の時と、伯爵家で再会した折りに」
「いや、まさか、君が男だとは思わず。
君こそ、どうしてそんな格好を?」
「マーガレットの兄のシスコンぶりは、ご存知でしょう?」
「ま、まあ。同僚だし、仲は良いからな」
「ずーっと、婚約の話を持っていってるんですが、マーガレットのお兄さんに反対されてて。一度、お茶に呼ばれて行ったら、後でその事を知ったお兄さんにマーガレットが軟禁されちゃって。向こうのご両親との話し合いで、女友達の振りをして会いに行くことになったんです」
誰だ、そんな提案をしたのは?
「そしたら、貴方がマーガレットのお兄さんと共にやって来て、まあ、こうなっちゃった訳ですね。正直、私も焦っています。貴方は、段々スキンシップが激しくなってくるし。婚約したい恋人の前で、何で男に迫られなきゃならないんです!?マーガレットは、どんどん不機嫌になるし。
マーガレットのお兄さん、あれ、わざと、知ってて貴方を煽ってたんですよ?」
「あいつ、知ってたのか?俺に、君の顔をよく見ろ、ロアンナに似て美人で可愛いよな。とか、ロアンナの着る服に似てるよな。とか言っていたぞ」
「いや、それは、……気付けよ阿保。と言われてたんですよ……」
「君も、私のプレゼントした服を受け取ってくれたし」
「うちに送りつけたんで、ロアンナ姉様宛かと思って、姉様に、即、渡しましたよ。もう1つの問題は、今までに姉様にドレスをプレゼントした事が無かったって事ですよ」
俺は、焦った。そう言えば、これまでにロアンナには花だけしか贈ったことがない。だって、ロアンナは何だって持ってるじゃないか。婚約者なんて花を贈ってれば良い。と、思ってた。リアンダには、ドレスが必要だと思ったから、贈っただけで。大体、何を贈ったら良いのか見当も付かず。
あれ?何で俺は、リアンダに引かれたんだ?
ロアンナに似ていたからだ。
ロアンナの前では緊張して、手も握れないけど、リアン相手では緊張しないから、手を握って、髪を触り髪に口付け、肩を抱き
ロアンナの手や髪の感触は、こんなのだろうか。肩を抱いたらこんな感じだろうか?と
あれ?俺って。これ、全部ロアンナにしたかった事じゃないか。
で、挙げ句の果てに、リアンダに対するロアンナの態度に勝手に頭にきて、リアンダを抱き締め、挙げ句の果てに膝に座らせようとして
いや、莫迦だろう、俺。本人を目の前にして、代わりの人間に入れ揚げて。
で、ロアンナを糾弾して、ロアンナが怒って服を脱いで
ロアンナの美しい首筋、鎖骨、肩や胸元。胸は、結構大きくて、完全にはだけた腕。後ろを向いた時のうなじ。綺麗な背中。思い出して、頭と下半身に血が上った。
今、手の中に残った彼女の髪。彼女の匂い。
あの時は、気が付けば、剣を盗られ、その剣で彼女は自分の髪を切り、
「顔を赤くしたり、青くしたり、百面相に忙しそうですが、私は姉に謝ってきます。そして、服を着替えてマーガレットの家に行き、マーガレットのお兄さんと決着を付けてきます!じゃあ、お先に。ギーニアス様も、早く姉様に謝った方が良いですよ。もう、色々とムリかも知れませんが」
リアンダいやリアンが、服を翻して走っていった。
最後に、コルセットとアンダースコート姿でカーテシーをしたロアンナが頭を支配する。ニッコリ笑って泣くって。可愛すぎるだろう。
「悶えてないで、さっさとロアンナお嬢様に謝って頂けます?公爵令息様には、不敬かと思われますが、けじめだけは付けて頂かないと」
ロアンナの乳姉妹だと名乗った侍女に追いたてられ、俺は、ロアンナの部屋の前まできて、必死で謝ったが
「ムリ」
の一言で、ロアンナに切って捨てられた。
「『明日、用があるので貴方の職場に行くから』とのご伝言です」
土下座して、縋りついてでも許しを得たかったが、ムリだった。とりあえず、ロアンナの部屋の前で、事の次第の言い訳と、土下座だけは、しておいた。出て来るまで土下座していようかと思っていたが
「鬱陶しいから、帰れ!」
と、ロアンナに怒鳴られた。
翌日の夕方、騎士団の俺の執務室に、乗馬服を着たロアンナがやって来て、書類を出して見せた。
乗馬服に肩までの短い髪が良く映える。可愛すぎ。俺は、胸を押さえた。ここには、ロアンナの髪が1房しまってある。
「明日より、騎士団見習いとして、急遽、王命にて第2騎士団副団長補佐に何故か任命されました。宜しくお願いします」
何て、幸運だ。何と言う僥倖。ちょっと、帰りに教会に寄付して来ようかな。
いや、昨日、恥を忍んで事情を話して、幻の酒と呼ばれる我が家の家宝の1本を友人の王弟殿下に手渡した成果か。
婚約解消の書類の受理の拒否を頼んだが、こんなオマケまで、付けてくれるとは。もう1本、届けに行こう。
咄嗟に、ロアンナを抱き締めてしまい、彼女に部屋の隅まで投げ飛ばされたが、無視されるより、ずっといい。
一緒の部屋で執務をしている今回の事情を知る第2騎士団団長は、黙って見ていた。
「私は、ただの騎士団の見習いになる筈だったのに、何でこんな所にいきなり赴任になってるのよ。手を回したわね。恥を知りなさい!」
踏みつけられても、無視されるより、ずっといい。
「まあ、いいわ。第2騎士団副団長補佐として、貴方を見張って、ビシバシ仕事をさせますから、そのおつもりで」
王都の悪人を退治し、噂を聞きつけ群がってきた奴らからの数多の彼女の縁談を退治し(勿論、婚約したままなので)、ついでに、隣国の密輸団や他の隣国と結託した貴族達の陰謀も阻止して、ようやく、何百回目かのプロポーズと、国王の後押しもあって、結婚に漕ぎ着けた。
そして、俺は、騎士団長に就任した。
何せ、ロアンナと結婚するまでは、騎士団長にならない。と国王陛下に公言してたので、自動就任させられた。
「5年で結婚出来たなんて、奇跡だ」
「まあ、弟のリアンとマーガレットも結婚して子供も生まれたから、潮時かなと思って。まあ、半分はリアンのお陰だと思いなさい。いや、原因の1つは、あいつだから、マーガレットのお陰かしら。
最初の1、2年はムカついてたけど、後は、結構楽しめたわ。お陰で、騎士にもなれたし、騎士としての自分に誇りも持てたわ。
貴方も、数多あるハニートラップにも引っ掛からず、酒による失敗もなく、女達の誘惑にも負けず、数々の事件を解決して
まあ、飽きもせずにプロポーズしてくれた敢闘賞かしら、ね」
多分、一生、ロアンナには頭が上がらないだろうし、リアンダの件は、こと有る毎に言われ続けるだろうが、俺は、これからもロアンナを愛し続けるだろう。
あ、すいません。絶対、愛し続けますから、見捨てないで。
「いつでも、何処でも、私達ロアンナ様ファンクラブが兄を見張っていますので、お任せください」
いつの間にか、ロアンナのファンクラブの会長になっていた俺の妹が、チャチャを入れた。どの騎士より侠気があって、男らしく、美しいロアンナは、王都でも人気者だ。姿絵も数多く売られていて、男共にも……ちょっと、回収してきた方が良いかもしれない。
「いいから、結婚式に遅れるわよ」
そして、俺達は、心の広い、同性同士だろうがなんだろうが結婚式を挙げてくれる神父の教会で結婚した。
「くどいようだが、絶対、君しか愛してないからな、ロアンナ」
「はい、はい」
fine.
ここまで、走りました~\(^-^)/グリコ~やった~!
頑張ったので、ちょっと間食を。夕飯の前ですが。
誤字報告、ありがとうございました。