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密室に男子と二人きり!? 人生初の壁ドンは人畜無害なおかっぱ少年ですの!?

「これはいったいどうゆうことですの!?」


 眠りから覚めたわたくし、鳳月(ほうづき)飛鳥(あすか)は思わず絶叫しましたわ。

 その場所はまるで身に覚えのない、壁や床、天井に至るまで真っ白なまるで箱のような空間だったのですから。


 お屋敷にこんな場所はありませんわ。どうゆう状況ですの? いいえ、こんな時こそ、落ち着いて。今こそ茶道で培ってきた精神統一、明鏡止水ですわ。

 

 服装は学校に行った時の着の身着のまま、白亜紅陵(はくあこうりょう)学園の制服姿。持ち物は何もなし。この四角い空間には出口はおろか小窓の一つもなし。

 そして傍らには……一人の男子生徒。


「う、うーん。あれ、ここは……」


「やっと気が付きましたのね」わたくしも目が醒めたばかりですけど。


「あれ、鳳月(ほうづき)さん? なんで僕が鳳月さんと一緒に?」


「わたくしにもわかりませんわ。なんで貴方と一緒にいるのか、そしてここがどこなのかも」


 彼の事は知っていますわ。名門、白亜紅陵学園にはわたくしのように名家の娘をはじめ、旧華族出身の者、官僚の子息、両親が医者で跡を継ぐ者など。錚々たる面々が顔を揃える中、彼、渡会(わたらい)(すぐる)君は一般の、それも母子家庭から超難関の入試を首席で突破して入学を果たした異色の存在。


 彼の努力と優秀さは認めざるを得ないところですけど、わたくしとしましては、白亜紅陵の格を考える上で、彼のようになんの地位も持たない人間を入学させたというのは、甚だ疑問でしたわ。


 とはいえ、彼自身も身分を弁えているのか、学園で他の生徒に声を掛けることはせず、専ら席に着いて勉学に勤しんでいるようですけど。

 

 わたくしの中での彼のイメージは、人畜無害なただのクラスメイト、ですわね。社交性もあまりなさそうですし、きっと人生の大半を学園生活でよく見かけるように、勉学に費やしてきたのでしょう。まあその結果、白亜紅陵に入学できたのですから、その一点に限っては賞賛に値しますわ。


 因みに容姿は、人畜無害を地で行っている見た目ですわね。年齢の割には幼い顔つきで背が低くて色白。強いて言えば大きなクリっとした瞳が印象的。自分で散髪してるのか、見事なまでのおかっぱ頭ですわ。


「そっか、鳳月さんも今がどういう状況なのかわからないんだね。困ったな」


「言っておきますけど、泣き叫んだりはしないでくださいましね。こんなどこに逃げ場もない空間で、殿方の喚き声など聞きたくありませんから」


 冷たく突き放すように言い捨ててやりましたわ。本当は泣きたいのはわたくしの方ですけど。一人だったら間違いなく泣き喚いていましたわ。だけど、渡会君がいるこの状況で弱さを見せることは、わたくしのプライドが許しません!


 徐ろに動き出した渡会君は、無礼にもわたくしの言葉を無視して、壁や床をコンコン叩いて確認しだしましたわ。


「ちょっと、聞いていらして?」ジロリと睨むとようやくわたくしの方を向き、慌てて謝りだす渡会君。


「あ、ごめんね。ここから出る方法ないかなと思って。話を聞いてなかったわけじゃないんだ。うん、泣かないようにするね」


 やたら落ち着いた余裕を孕んだ態度。内心不安で仕方ないわたくしのプライドを逆撫でしますわね。

 フン、と鼻を鳴らしどうでも良さそうな態度のまま「それで、何か手掛かりは見つかりましたの?」と訊いてやりますわ。


「いや、隅々まで調べても風の流れを感じる所もなければ、壁や床も叩いた反応がやたら重厚なんだ。ここは外界から念入りに閉ざされた空間みたいだよ」

 

 くっ、不安を煽る事をさらりと言ってくれますわね。今の貴方の台詞で、絶望感が増して、涙腺が一段階崩壊に向かいましてよ?


「それじゃあ、出られる方法はなくて?」思わず語尾が震えます。


「現状はそうだね。取り敢えず落ち着いて待つしかないね。あっ!」


「ひゃあぁ!?」


 勢いよくわたくしの背後の壁に片手を着く彼。

 な、こ、これが噂に聞く壁ドンですの!? か、壁ドンは殿方が女性を口説き落とす時に行う作法と聞いておりますわ。わ、渡会くん、もしかして、わたくしに告白する気ですの!?

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