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本当の娘が帰ってきたので養女の私は消えることにしました  作者: 佐藤真白


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高貴なるものの義務

私はとても恵まれている。

生まれも育ちも帝国貴族。

優しく慈しんでくれる両親。

私を溺愛と言って良いほどに甘やかす3人のお兄様。

健康な体。

貴族の中でも多めの聖力。

誉めそやされるような容姿。

教育や、教養も先生をつけてもらっている。

これらは何一つ当たり前などではない。全てが特別な事だと気付いたのはいつ頃だっただろうか。



「いいかい、スピカ。人は鏡だ。好意には好意、悪意には悪意が返ってくると思いなさい。だから自分のされて嫌な事は他の人にしてはいけないよ。そのかわり、自分がやってもらって嬉しかった事は沢山他の人にもしてあげようね。」

私を膝に乗せて語ってくれたのは父様だった。


そうなんだ。イヤだと思ったことは他の人にしてはいけないのね!でも、わたしイヤだと思ったことあったかしら…困ったことは何度かあったわね…

私は家族からもらう沢山のプレゼントを誰のを1番に開けるのか聞かれて困ったことや誰がプレゼントしたドレスを着るのかでケンカをする兄達を見ては困っていたことを思い出す。

頑張って、嫌だと思ったことを思い出してみると、フレット兄様のお友達兄妹が遊びに来た時に妹嬢に冷たくされた事を思い出す。初めから彼女は私にイライラしていたようだった。

「平民上がりの養女の分際で気安く話しかけないでくださいまし。」2人で遊んでおいでと言われやってきた自室でそう言われた時、確かに私は悲しくて嫌な気持ちになった。

自分は本当の家族じゃないと言われたような気がして悲しかったし、平民上がりではないのになんで嘘を言われるのか分からなくてとまどった。本当の両親の事は養父母である両親に人となりや自分がこの家に来たのは何故か聞いていただけにショックだった。何より初めてに近い拒絶に私はどうして良いか分からず泣いてしまったものだ。

きっと拒絶や嘘は「嫌な事」なのだ。嫌な事はしないようにしようと心に誓う。あんな悲しい思いを他の家族にして欲しくない。


今度は嬉しかった事を思い出してみる。こっちは沢山あった。お父様がこうやってお仕事中にこっそりお膝に乗せてくれるのはうれしかった。

お母様と衣裳室でお着替えをして「私の妖精さんは本当に可愛いわね」と褒められるのが嬉しかった。

カイン兄様に本を読んでもらうのも魔法を見せてもらうのも、アレク兄様のお歌やピアノも、お茶の席でフレットお兄様に最後のクッキーをもらった時もうれしかった。

私は家族に嬉しい事しかもらっていない。


「はい!お父様。わたくし、嫌な事はしないで嬉しかった事を沢山するようにします!」

これからは嬉しかった事を沢山みんなにしていこうと幼心にきめたのです。

その手始めにと「お父様、大好きです!」と抱きついてみた。

お父様は「これは間違っても他所の男にやっちゃダメだからな!」半泣きになりながら抱き返してくれた。




「貴方を産んでくれたお母様は素晴らしい人だったのよ。だから自分の事を卑下してはいけない。貴方が自分を下に見ると言う事は貴方を愛する家族を貶める事です。常に胸を張り正直に堂々と生きなさい。芯の強さにこそ本質は表れるのです。淑女の嗜みとして覚えておきなさい」

そう言われたのはお母様でした。



難しい言葉もありよくわかりませんでしたが、

「スピカがかなしいとみんな悲しいからダメってこと?」と聞いてみるとお母様は少し思案顔です。

「スピカが悲しいのは勿論ダメだけれど、ちょっと違うわね。もしもお母様が知らない人に『貴方は母親失格ね。』なんて言われてその通りだなんて思ってしょんぼりしてしまったらどう思うかしら?」

「そんなのイヤだわ!ウソだわ!私のお母様は世界で一番ステキなお母様だもの!」

私は反射的に即答していた。

「あら、ありがとう。そういうことなのよ。私は貴方達の最高のお母様でありたいし、貴方達は最高の子供達だと思っているわ。だからお互いに悲しくならないように『どうせ』とか『私なんか』なんて言葉を使って傷ついて欲しくないの。」

優しく私の頭を撫でながらお母様は言ってくれた。

「誇りのない貴族は貴族ではないわ。だからこそ貴方には気高くあって欲しいの。きっとこの先出自で何か言って貴方を傷つけようとする人が出てくるわ。でも貴方は私達家族の大切な宝物だという事を覚えておいて欲しいの。」

私はまだ全てを分かったわけではないけれど大きく頷きました。

「はい、お母様。私を産んでくれたお母様も育ててくれているお母様もどちらもステキなお母様だから、誰に何を言われてもそうお答えします。私の宝物も、お父様やお母様やお兄様達やエメンタールで暮らす皆んなだって胸を張って生きます!」

お母様はあらあら大きくなってって言いながらまた頭を撫でて下さいました。





「いいかい、スピカ。『ありがとう』の言葉はしっかりと伝えるんだよ。感謝の気持ちというのは中々伝わらないものだからね。」

そう諭してくれたのはカイン兄様でした。


確かに、ありがとうの言葉は大切だわ。


「はい!お兄様!感謝を伝えたい時にはありがとうの言葉を皆んなにしっかりとお伝えしますわ。教えて頂きありがとうございます。」

兄様はニコニコの笑顔で私を抱え上げてお膝に乗せると「こちらこそ、私の妹になってくれてありがとう。」と言って額にキスを一つおとしました。

「スピカも、カイン兄様がお兄様でうれしいわ。お兄様になってくれてありがとうございます。」

お互いに感謝しあう麗しい兄妹を屋敷の従者やメイド達は暖かく見守っていた。


その後しばらく私は、使用人達に事細かに「ありがとう」を伝えるので、使用人達は困惑したり萎縮したりと大変だった。「感謝の気持ちを伝えたいだけなの。」と我儘をいって、お客様の前ではやらない事を両親とお約束して、ありがとうは今も伝え続けております。




「スピカ。ごめんなさいを素直に言えるのはとっても素敵なことだと僕は思うんだけれど、スピカはどう思う?」と問うてきたのはアレクお兄様でした。


「ごめんなさいは素敵なの?」私は謝ることがなぜ素敵なのかわかりませんでした。

「そうだよ。でもね、ただ謝るんじゃない。素直に自分の非を認められるのはその人の美徳なんだ。だから素敵なんだよ。自分は悪くないって思いながらするごめんなさいになんの意味もない。だから、感謝と謝罪は誠意をもって接するんだよ。」

お兄様の考え方は少し難しかったですがその通りだと思います。ごめんなさいって思っていないごめんなさいはごめんなさいじゃ無いです。私も素直に自分が悪いことをしたら直ぐに謝るようにしようと思いました。

「アレク兄様、私ごめんなさいが素直に言える素敵なレディーになるわ!」

そういうと、「楽しみにしているね」と言って私を高い高いしてくれました。


そしてやはり私はちょっとでも悪いと思ったら使用人だろうと謝ってしまうので、お客様の前ではしないお約束で今も続けているのです。





「いいか、スピカ!貴族たるもの弱いものいじめをしてはいけないんだぞ!」そう胸を張ったのはフレット兄様だった。


「いじめってなぁに?」

フレット兄様は視線を泳がせます。

「えぇっと、いじめっていうのは…イヤなことをたくさんしたり、言ったり、暴力を振るうこと…かな?俺達貴族には貴族の義務があって、弱い奴らは守ってやらなきゃいけないんだってさ。だから守らなきゃいけないやつらを傷つけるのはダメなんだぞ!」

多分兄様も誰かからの受け売りでしょう。

それでもその言葉には感銘をうけました。

「はい!フレット兄様!私弱いものには優しく致します。いじめなんて絶対にしませんわ!」

フレット兄様は「まぁ、スピカの事は俺が守ってやるから心配はすんなよな!」と言ってニカリと笑ってくださいました。

その日から弱いものは守らなければいけないのだと胸に刻みました。


私は家族から少しずつ貴族の在り方を教わって行きました。



後にしっかりとした家庭教師にかの在り方について教わりました。

高貴なるものの義務(ノブレスオブリージュ)


貴族を貴族たらしめる思想です。領地持ちの貴族は領地を運営し、徴税を許されているのは有事の際に平民や家門、ひいては国を守り助けるためである。有事が起これば率先して問題の解決に当たらなければならない。

領地のない貴族も皇帝に忠誠を示し国有事の際には私財をうってでも駆けつけ国民を守る事が課せられています。

私達貴族は自らの手で麦やミルクを作る訳ではない。平民を守る対価として税を取り、そのお金で暮らしているのです。だからいざという時に逃げてはならない。権利だけを甘受して義務を放棄した瞬間にそれは貴族ではないのだと教わりました。


私はこの考えに深く心酔致しました。

だから、決めたのです。

心清く清廉であろう。

偽りを述べる事はすまい。

感謝と謝罪は常に示そう。

弱者を助けて寄り添おう。

家族領民に恥じる事ない人になろう…と


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― 新着の感想 ―
今から読み始めたばかりだけど、昨今の量産型ざまぁに慣れすぎたせいか速くざまぁ展開になって気持ちよくなりたい!っていうのが多いかもしれないのかも 26話から胸糞ということだしそういうの向けの対策として…
下の方々の感想は恐らくですが、「あらすじ」と「1話」からこれから何が起こるのか(主人公が家族に見捨てられる)、それがなぜ起こるのか(本当の娘が帰ってきたため)全てわかっているので、この先何が起こるかわ…
死ぬほど読みづらいのでざっくり飛ばしてるけどまだ前振りが終わらない もう無理
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