異世界の労基ってなに?
異世界転生書いててもあんまりおもんないです。
毎日毎日、馬車馬の如く俺は働いた。
キリが良くなったPCのスクリーンから、ふとデスクの時計に目が移る。
「時間……」
01:11だった、辺りは暗くなり、俺が残っていてもオフィスの明かりは消灯されていた。
仕事を切り上げ終電が過ぎた平日の夜のオフィス街から自宅を目指す。
俺は来る日も来る日も、寝る間も惜しんで仕事に精を出して働いていたのに手取りは15万。
週の労働時間は8:00から6:00の実働8時間のはずだった、気づけば俺は毎朝6:00に出社して家路に着くのは24:00を過ぎ、休日なんて物はなかった。
新卒から三十路になるまで、昇給やボーナスなんて1度もなかった、責任ばかりが重くなり、休む間もない毎日に俺は心身共に疲弊しきっていた。
「毎日8時間の時間外労働とか馬鹿だろ…何の為に生きてんだろ……」
小声で本音を呟く、ふと我に返り独り言を言っている自分に気付く。
独り言ってストレス反応らしいよな…。
そんな事を考えながら、重い脚取りで酷く錆付いた階段を上がり、玄関を叩く。
「あぁ……もう待ってないんだっけ………」
半年前に2年同棲した彼女とも別れたのだ。
理由は…先が見えないから…だったろうか。
別れる前は毎日の様に喧嘩ばかりしていた。
俺はいつからか仕事で疲れ、帰宅して喧嘩に明け暮れる日々に嫌気が差し、話し合いを避けた。
その結果がこれだ。
鞄から鍵を取り出し、鍵穴に向きを間違えながらも差し込み鍵を開けた。
靴を脱ごうと屈んだ瞬間、強い胸痛が襲った。
「…………ッ!!」
声も出ない、苦しい。
本当に痛い時、人は蹲るばかりで叫ぶ事も出来ないらしい。
(このまま死ぬのか……)
そう思ったまま俺の目の前は瞬く間にブラックアウトしていった。
「………?」
混濁した意識の中、瞼の外に光を感じた、眩しいのだ。
目を細目に開き、光に目が慣れる様に少しづつ目を開くと、急にスーツに身を包んだ執事の様な姿の男が冷やかな眼差しで光を遮り視界に映る。
「田中 誠司様でお間違えございませんね。」
初めて見る彼の姿も良く見えず、何も分からないまま俺は名前を呼ばれた。
なんでこの男は俺の名前を知っているんだろうか。
そんなことを思いながら、俺は質問に質問を返してしまった。
「…ここはどこで…いきなり貴方は誰なんですか。」
漸く姿が見えた執事の様な男は40代程だろうか、綺麗な身嗜みをしている男が答える。
「失礼致しました…ここは生前の時間の生き方や、その対価が見合わなかった者に対して精算を行う場所…貴方の住んでいた地球の言葉で言うならば、閻魔堂の様な場所で私は小鬼の様な物でしょうか。」
話がいきなり過ぎてわからない、そもそも突拍子もない話で飲み込めるわけが無い、そんなに表情に出ていたのか、男が補足説明を始めた。
「まず、貴方は過労による心臓麻痺で亡くなりました。ここでは貴方の生前の活動に対する精算を行うのです、過不足があれば…天国か…地獄と言いましょうか。」
疲れました。