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12. ギルド


 セントラル本部ギルド。

 そこには他国のギルドから要請される魔獣や魔族の討伐依頼からダンジョンの調査・攻略の情報をまとめる諜報機関などが足を踏み入れる場所であり、人類史上最古の冒険者が設立してあの勇者さえも通った事で有名な所である。

 そんな有名なギルドの地下に向かってせっせと走る中年の男性・・もとい、亜人ウサギ族のラビットが左腕に付けた時計の何度も確認させながら階段を降りて一室の扉を勢いよく開けた。


 「し、しししししし失礼致します部長ッ!! ご、ごごごごごごご連絡がありますッ!!」

 

 小さいウサギの身体でビシッと敬礼するラビットが見る先には、陰気な雰囲気で今日も終わらない残業をこなしている従業員の最善列のテーブルで葉巻を吸ってる1人の女性が座っていた。 

 

 「ブハァ~・・ラビット課長。 あんた一体いつになったら分かるんだい」


 部長と呼ばれた女性は目の下に真っ黒な隈でラビットを睨みつけ、立ち上がるのも辛そうな重い身体を小さい両足で支えながらのっしのっしと身体を震わせて汗を流すラビットに近づいていく。


 「この部署の長は誰なんだい」

 「は、はははははいッ! 部長です!!」

 「ちがぁぁあああああああああうッ!!!」


 まるで怪獣の咆哮のような声量でラビットの垂れた長い耳と汗は後ろに飛んで行った。


 「私の事は名前の通り女王(クイーン)とお呼びと何度言えば覚えるんだいアンタは! その長く大きな耳は飾りか何かなのかいッ!!!」

 「い、いいいいいいえッ! し、ししししし失礼いたしました! クイーン!」


 汗の代わりにクイーンの唾で全身がべたべたになったラビットは小さいハンカチで腕時計を磨く。


 「フン。 それで、クイーンであるワタシになんの用なんだい」

 「は、はははははははいッ! ご、ごごごごごご報告です! 今現在行われている勇者誕生祭ですが」

 「ァァァァァア嗚呼あああッ! 今そのイベントの話をするんじゃないよ!!」


 クイーンは小さい脚をドシンドシンと床を踏みつける。


 「今夜は年に一度の綺麗な花火が打ちあがる勇者誕生祭! そんなロマンチックな日にワタシは今日もこんな所で終わらない仕事の残業残業残業残業残業ッ!! 一体ワタシはいつになったらカッコいい恋人が出来るっていうんだいッ!!!」

 「お、おおおおおおお言葉ですがクイーン。 げ、げげげげ現在のギルドでは月に40時間以上の残業は禁止されていまして、現在我々含むクイーンの部署の残業時間は軽く100時間を超えていましてですね」

 「・・・はぁ? ラビット課長・・・今なんて言ったんだい?」

 「で、ででででですから残業時間が軽く100時間を超えて」

 「だぁっっっっったらワタシ達の代わりとなる人材とさっさと連れてくるように人事に掛け合いなッ!!!!」

 「ヒィッ!!」


 クイーンを両目を大きく開けて今にもラピット課長を噛み殺そうとしそうな大きな口で声を荒げる。


 「国の法律? 会社の方針? 知った事かいそんな事ッ!! だったら少しでも仕事を振り分ける新事業を始めるなり優秀な人材を多く派遣させてこいってんだッ! こっちは毎日毎日無理難題な仕事を振られて家も帰れない忙しさだってのにそれで残業は無くせ。 だけど仕事の期日は守れだって? バァカ言ってんじゃねぇよぁホンダラァッ!!!」

 「ススススススすみませんすみませんすみませんすみません~ッ!」


 一通り大きな声を出して落ち着いたのかクイーンは大粒な汗をかいて床には水溜まりが出来ていた。


 「まったく・・それで? ワタシに報告する事ってのは何なんだい・・って、ん?」


 バスタオルで汗を拭いて自分の席に着き、一息に葉巻に火をつけてからラピットがブクブクと泡を吹いて倒れている事に気付く。


 「ハァ~~~~~~・・・そこのお前、ラピット課長が持ってるファイルこっちに持ってきな」

 「あ、はい。 あの、課長はどうしましょ」

 「ほっときな。 しばらくしたら勝手に起きてくるよ。 それよりファイル!」


 クイーンはラピット課長の近くで書類整理していた若い従業員に指示をだして、ラピットのファイルを受け取る。

 気分を落ち着かせながら葉巻を吸い真っ白な煙が口と鼻から漏れ出ているがそんな事はお構いなしに綺麗にまとめられた報告書を読んでいく。

 そして読んでいく中でクイーンの両目は再び大きく広げ上がり、手に持つ葉巻は握り潰され粉々となって床に落ちた。


 「全員ッ! すぐにギルドの全職員を広場に集めなッ!!」

  

 重い身体を飛び跳ねてドシドシとラピット課長を取り飛ばして部屋を出たクイーンの後ろに、まるで訓練された兵隊のように従業員は最小限の道具を持ってついていく。


 「課長が持ってきた報告書に何が書いてあったのですか?」

 「んッ!?」


 押し付けられるように渡されたファイルを質問した従業員が目を通すと、ファイルは次から次に後ろの従業員へと渡されていく。


 「全員今日はもう帰れないと思っておきな! これから更に忙しくなるよッ!!」

 「「「 ハイッ 」」」


 授業員たちはそれから指示もされていないのに、まるであらかじめ聞いていたように綺麗にメンバーに分かれていき、それぞれの仕事へと向かっていった。


 (チッ。 一体なんだってこんな大事な日に――ッ)


 クイーンはその大きな身体には似合わない機敏な足運びで階段を昇っていく、最上階にある大きな扉を力強く開ける。


 「ご報告がございますッ!!!!!」

 

 その様子に驚いた人物は目を真ん丸にしてクイーンを見た。


 「ど、どうしたのかねクイーン。 キミがこの部屋まで来るなんて珍しい」

 「それほど緊急事態です! これをご覧くださいッ!!」


 バンッ!とテーブルの上に置かれたのは先ほどラピット課長が持ってきたファイルに入っていた一枚の紙。

 そこには結界術を管理・監視を行っている担当の魔術課からの報告書。


 「つい先ほど。ランクS級の魔獣が結界を押し切って侵入してきました! ギルド項目第18条に則り! S級、A級の冒険者の収集、および人民の避難警報の発令を要請しますッ!!」

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