11. 別れ
「了解。 全員、リーダーから指示が出た。 装備を変えろ」
ラランから伝えられた指示を周囲の仲間へ連絡すると、全員そのセリフで個々の武器を整える為ゴブと距離を置いた。
(――! 攻撃が止まった?)
その一瞬の隙を見逃さなかったゴブは両足の力を一気に振り絞り、今日一番の速度で一直線に森を掻い潜っていく。
(このまま行けば結界の外枠に出るはず! 外に出ればあとはなんとななるはずだ!!)
結界の外枠とは人類が対魔族の為に張った最古の魔術結界である。
セントラルを中心に張られた結界はB級以上の魔獣、魔族を侵入した際に反応するセンサーの役目となっており、A級以上が結界に触れると自動的に撥ね退けるように仕組まれている。
この結界術のおかげで人類は魔族に滅ぼされる事もなく繁栄し続けてきた。
ひゅ~~~~~~~~・・・・ドンッ
遠くから花火が打ちあがった音が聞こえた。
去年は村の友人達が大人の目を盗んで人通りのない場所から一緒に花火を見ていた。
人生で初めて周囲を気にせずに見た花火はとても大きく、そして綺麗で今も目に焼き付けたあの光景が目に浮かぶ。
だけど今年はそれもできない。
ヘタをすれば来年も、そしてその次もこれから一生できないかも知れない。
(あのラランっていう冒険者、明らかにオイラが目的な感じだった)
本が燃え上がる一瞬、誰かに視られていた気配は感じていた。
すぐに消えた事ですぐに意識は燃えていく本へ向けていた為に意識から離れていたが、あの時に視られていた感覚とラランの視線は同じ感覚のものだった。
つまり、ラランはゴブを討伐に来たという事だ。
「・・冒険者が討伐に来たって事は、そういう事・・だよな」
冒険者が魔族の討伐に来た。
それはギルドへ誰かがゴブリンの討伐を依頼したという事。
村の誰かがゴブの存在をギルドへ報告してラランがそれを受理したからここまで来たのだ。
そうなると必然的にゴブは村へ戻る事はできない。
戻ればエルは怒って冒険者に盾突くだろう。
ドーワフはギルドへ講義する為にあらゆる手段を取るだろう。
お爺さんはゴブを守る為に村から一緒に出ようと提案するだろう。
最悪な事は、オイラを守ろうとして家族が国の法律に裁かれる事。
ただでさえゴブリンを育て一緒に暮らしているだけでも重罪になりかねないの、今度は魔族を守ろうと争う事になれば罪人扱いになるかもしれない。
それだけはダメだ。
自分の存在のせいで、家族が、友人が、村の人達が不幸になる事だけは避けなけらばならない。
だったら、このままセントラルから離れて別に国へ行こう。
セントラル以外の外の国では一部、魔族が暮らす小さい国があるという。
都市伝説のような話だが、物知りのお爺さんが一度も否定した事がなかった。
もしかしたら本当に実在するかもしれない。
そうであれば、このまま誰の邪魔になる事もなく姿を消せばいい。
ゴブリンであるオイラがいるから周囲を困らせる。
ゴブリンであるオイラがいるから誰かが不幸になる。
ゴブリンであるオイラがいるから襲われる可能性がある。
だったら、だったらオイラがこのまま村を離れれば全部解決する。
幸い、何故かさっきまで殺しにかかってきた冒険者達の攻撃はあれから一向に来ない。
このまま行けば結界の外に出て身を潜めて逃げ切れるかもしれない。
連続的に打ちあがれらる花火の音を背に、ゴブは結界の外枠の目の前にまでたどり着いた。
「皆、さようなら」
そうして、ゴブは結界の外へ足を踏み出した。




