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罪の記憶14


 今すぐにも私は中に入ろうとした。しかし、中から聞こえた会話によって、立ち止まることになる。


「ほら、片桐。約束の報酬を渡しなさいよ」


「チッ! 本当にお前はガメツイ奴だな」


「けど、こんな私だからこそ、アンタもあの計画を私に持ちかけたんでしょ?」


「まぁな」


 片桐くんと初瀬さんはなにを話しているの?


 あの計画ってなに?


  片桐くんを見つけるなり、すぐに署名用紙の事を問いただすつもりだった。しかし、中で現在、為される会話に聞き入ってしまう。


 図書室で交わされる会話の意味はわからない。でも、何故かこの時、私はこの会話を聞かないと後悔するような気がしていた。


 なに一つとして根拠もない。ただの勘。それでも、私は中の会話に聞き耳を立て続ける。


「しかし、びっくりするほど上手くいったな」


「そうね」


 図書室の中では、私にとって理解のできない会話を2人が続ける。理解はできないが、私が聞く事を辞めることはない。ただただ、聞き入って廊下に立ち尽くす。


 そして、次の片桐くんの発言によって私は失意のドン底に沈むことになる。


「女川透がお前を襲おうとしたって冤罪を吹っ掛ける計画」


「ッ!!!」


 片桐くんの発言に私は呼吸も忘れて、地面に膝をつく。硬い床に膝をぶつけて痛みが走るが、それすら今の私にはどうでも良かった。


 なんて……なんて言ったの!?


 透に冤罪を吹っ掛ける?


 片桐くんが初瀬さんを利用して、透に罪を着せた?


 一緒に透を助けようと誓った片桐くんが透に……罪を着せた黒幕!?


 頭が理解するのを拒む。たしかに、私は署名用紙の件を片桐くんに問いただそうとしていた。


 片桐くんが透を陥れる原因になった可能性を感じていた。


 でも、心の底では署名用紙はなにかの間違いで盗まれて、誰かに利用されたのだと都合のいい想像をしたりもしていた。


 しかし、現実は私が思い描いていたよりも驚くほど残酷である。私の心を深く刺し貫き、傷口を抉る。


 最初から……片桐くん、いや片桐颯太が仕組んでいたことだったなんて……!


 じゃあ、私は間抜けにも透の敵に力を貸したピエロじゃない……!


 一番信じちゃいけない人を信じて、私が世界で一番大事にしたい人を傷付けるなんて……!


 私って、ほんとバカ……!


 透を裏切ったこと。


 片桐颯太を愚かにも信じてしまつたこと。


 透を一瞬でも疑ってしまったこと。


 私の罪は細かく挙げればキリがない。結局、透の助けになんてなれなくて、むしろ私が状況を悪化させてしまった。


 透への申し訳ない気持ちと、自分への自己嫌悪で胸がいっぱいになる。後から後から涙が溢れて、床へと吸い込まれていく。


 私は本当に愚かで、救いようがない。


 でも……。



 そんなバカな私にもまだやれることがある……!



「まあ、計画が成功したのも私の演技があってのものだけどね」


「わかってるよ。さすが、元子役だな。昔とった杵柄ってヤツだ」


「アレなら誰も私の方から押し倒したなんて思わないでしょ? アハハハハ!」


「まったく……恐ろしい女だな。お前が味方でよかったよ」


「酷い言い草ね。そんな私を利用しようってんだから、アンタもよっぽど酷いでしょうが!」


「ククク……確かにな」


 図書室で初瀬凛と片桐颯太が軽口を叩き合う。楽しげに会話する二人からは透に罪を着せた罪悪感を一切感じない。


 この2人……人を陥れる事をなんとも思っていない!


 私は生まれてから初めて、これっぽっちも同情のできない悪に染まった人間がこの世にいるということを認識する。


 しかし、こんな二人を学校では、片方を被害者として同情し、片方を犯行を止めたヒーローとして持て囃している。


 真実は、まるで違うというのに。


 悪が栄えて、善が失墜する。加害者が同情と称賛を受け、被害者が謂れのない誹りを受ける。そんなの絶対に間違っている。


 あるいは、自分たちが称賛の言葉を受けることも、二人の計算のうちだったのかもしれない。もし、そうなら二人の目論見は何もかも上手くいった事になる。



 そんなこと、許せるわけないッ!


 何もかも、アンタたちの思い通りになってたまるもんですか!



 怒りに身を任せ、勢いよく図書室の扉を開ける。図書室では、ちょうど初瀬凛にお金を渡す片桐颯太の姿があった。


「片桐颯太ッ! 初瀬凛ッ! アンタたちが何もかも仕組んだことだったのね!!!」


「「……ッ!」」


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胸糞すぎてこいつらマジで天罰くだってくれ
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