過去の捜索
時は高嶺冷音に告白された日の翌日の朝。昨日の事を思い出すと、モヤモヤと感情が曇る。しかし、終わった事は切り替えるに限る。
ふーっ……参ったぜ、また嘘告されちまうなんて。高嶺さんは良い人だと思っていたので、すっかり騙されちまった。うーん、偶然出会った人でもこれからは油断しちゃダメだな。
俺に関わる女性の行動は全部演技! それぐらいに思っていないと、また騙されてしまうかもしれない。よーし、修正だ、修正!
俺は自分の頭に言い聞かせる。言い聞かせ始めると最初は、キリキリと頭痛が走ったが、繰り返し言い聞かせる内に程なく治まった。まぁ、いつもの事だな。
自分の体の脆弱さに嫌気が差すぜ。ちょっと頭に強く言い聞かせただけで頭痛が走るんだから、これには医者も苦笑するしかないだろう。
おっと、こんな事をやっている場合じゃない。こんな気分が乗らない日でも、変わらず学校の登校日はやって来るのだ。本音を言えば、行きたくはないが、行かない訳にもいかないだろう。
これ以上、妹や母さんに迷惑を掛けるわけにはいかない。俺は高校にいる間は、大人しくすると自分で誓っているのだ。高校が終われば、自分で働いてお金を稼げるようになる。
そうすれば、俺なんかと毎日顔を合わせる必要が無くなるのだ。妹も母親も喜ぶに違いない。なんせ、邪魔者が消えるのだ。これで平穏な生活ができると喜んでくれるに決まっている。
俺は妹と母親が喜ぶ姿を想像しながら、気怠い体に鞭を打つと、足早に家の玄関を出るのだった。
ーーーーーーーーーー
《高嶺冷音視点》
「というわけなんで、俺はアイツのことはそんなに知らないんですよ」
「そう……。ありがとう、話を聞かせてくれて感謝するわ」
そう言うと、私が呼び出した1人の男子生徒が去っていく。私が呼び出した男子は女川透君の中学時代の同級生という人物だった。
女川君に振られて以来、私は彼の過去にどんな事があったのかを調べるため、色んな人に聞き込みを行っていた。あの時の女川君からは尋常ならざる女性への拒絶を感じた。何か理由があるはずだと思い、女川君の過去について調べ始めた。
しかし、今のところ目ぼしい情報は無く、少し行き詰まっていた。焦りが私の体を襲う。
「中学時代の同級生は何も知らない……。ということは、もし女川君に何かがあったとしたら、それは小学生の時?」
目ぼしい情報は得られなかったが、現在の状況を鑑みて、私は女川君の小学生時代に何かがあったのだと推察する。だとすると……。
次は小学生時代の同級生に話を聞かなきゃいけないわね……。この学校で見つかると良いんだけど。最悪の場合は他校の人間にも聞く必要があるかもしれないわね。
その後、私は女川君の小学生時代の同級生を探すために色んな人に聞き込みを行い、同級生探しに終始していた。しかし、それも難航しており、いよいよ他校に乗り込もうと思っていた矢先、私にある情報が入ってくる。
それは、女川君の小学生時代の同級生がこの学校にいるという情報であった。やっと女川君の小学生時代の同級生を見つけた私は、すぐにその人物を呼び出し、話を聞くことにした。
そして今、私はその人物が来るのを歴史研究部の部室で待っている。しばしの間、待っていると、私が呼び出したくだんの人物が部屋に入ってくる。
来た! もしかしたら、今回の聞き込みで女川君の過去について知れるかもしれない!
「よく来てくれたわね。何か飲み物でもいるかしら?」
「いいえ、結構です。それより、透の過去について聞きたいって何なんですか……?」
そう言って、若干の敵意を向けながら、女川君の小学生時代の同級生、白雪真代は私に訊ねる。




