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ボッチ界のカリスマ(自称)


 どうも、読者のみなさん。ボッチ界のカリスマ(自称)、女川透です。自分で言っておいてなんだが、ボッチなのにカリスマとか意味が分からない。


 ボッチにカリスマがあったら、もはやソイツはボッチじゃ無いのではないのだろうか? 人が集まって来ないからボッチをやっている訳ですからね……。ああ、自分で言ってて悲しい……。


 まぁ、そんな事はさておき、そんなボッチの俺なのだが、なぜか高校に入ってから人と関わることが増えてしまった。俺としてはまったく(断じて)歩み寄ったりしている訳ではないのだが、なぜか、周りにリア充たちが集まってきてしまう。


 これも大体、有馬のせいである。最近、税金が上がったり、コンビニのスプーンやフォークが有料になったのも、最近、俺の寝つきが悪いのも大体有馬が悪いのである。おのれ、有馬……!


 いや、リア充が寄ってくる件に関しては、もしかしたら俺が何か、リア充を呼び寄せるフェロモンを出しているのかもしれない。だとしたら、凄い発見である。学会(なんの?)に提出せねば! いや、フェロモンを解析して商品化を目指すか? うーむ。


 学会に、俺が出すフェロモンについての研究論文を出そうかと考えていると、教室の中が騒がしいことに気づく。教室では口々に声を抑えて、ヒソヒソと話をしている。俺は少しだけ聞き耳を立てる。


「おい、あれ2年の高嶺先輩じゃないか?」


「成績優秀で眉目秀麗、だけど人と一切関わりを持たないことで有名な先輩が1年の教室に何の用があるんだ?」


 聞き耳を立てた結果、どうやら普段は一切、自分から動くことのない高嶺とか言う生徒が来たことでクラスメート達は騒いでいるらしいことが分かる。


 ん? ていうか高嶺ってこの前、俺が冤罪を晴らしてあげた人と同じ名前だなぁ。いや、高嶺なんて苗字はこの世にまだいくらでもいるだろう。あの時の人と同一人物なわけがない。ですよね、神様。


 しかし、俺の願いも空しく、クラスメートの一人が俺の名前を呼ぶ。どうやら俺の神は死んだようだ。今なら、ニーチェと気が合うかもしれない。


「おーい、女川君。高嶺先輩が君に用があるらしいよ。教室の外で待ってるから行ってあげなよ」


 ほらほら、また面倒事があっちから近づいてきましたよ。いつも来るのはあっちからだ。俺は自分から近づこうとなど一度として思ったことはないのだが、何故か面倒事の方からいつも近づいてくる。


 あれか、お前、俺のことが好きなのか? だとしたら、一生両想いになることはないから、諦めて欲しいのだが……。


 最近、俺が両想いになりたいのは孤独だけである。お願いだから振り向いてくれませんか?


「はいはーい」


 俺は心の中で面倒事に対して恨みつらみをぶつけながらも、呼ばれるがまま高嶺さんが居るという教室の外へ出ていく。当の本人の高嶺さんはすぐ見つかった。教室の外の壁に背中を預け、俺を待っていたようである。


 やはり、数日前、万引きの冤罪にあった高嶺さんで合っていたようである。ていうかこの人、先輩だったのか。スカーフの色を確認してなかったから知らなかったぜ。


 高嶺さんは俺に気がつくと、背中まで伸びる青みがかった黒髪を揺らし、近づいてくる。


「やっと、見つけたわ。私を助けてくれたヒーローさん。あの日からずっと探してたのよ?」


「そうなんですか? それは無駄な苦労をかけてしまってすいません。それで、俺に用ってのはなんでしょう?」


「ここじゃ話し辛いわ。今日の昼休みに校舎裏に来てくれない?」


 また、校舎裏か……。今年はやたら、校舎裏に呼ばれるなぁ。これだけ呼ばれちゃ、いつか俺のあだ名が校舎裏の住人となるのも時間の問題かもしれない。なんかナメクジとかと仲が良さそうだ。


「はい、分かりました。昼休みに校舎裏ですね」


「ええ、お願いね」


 言いたいことを言い切ったのか、話が終わるとすぐに2年の教室がある方へ去って行ってしまった。まぁ、なんかあの時のお礼がしたいとかそんなだろ。たぶん……。






ーーーーーーーーーー






 キンコンカンコーン。


 昼休みを告げるチャイムが鳴り、俺は高嶺さんとの約束通り、校舎裏に向かっていた。正直に言うと、ちょっと面倒くさいのだが、俺は経験上、こういう時に放置していると逆に悪化すると知っているのである。


 だから、俺は行く。未来の不幸を避けるためには、現在をどうにかしなければならないのだ。俺が5分ほど歩いた頃だろうか、程なく校舎裏にたどり着く。


 さぁて、高嶺さんはっと……おっ、いたいた。俺が気づくのに少し遅れて高嶺さんも俺に気付き、互いに互いの距離を潰していく。


「待たせてしまって申し訳ありません、高嶺さん。結構待ちましたか?」


「そんなに待ってないわ。それに呼び出したのは私の方だし、気にしなくていいわ」


「そうですか。ありがとうございます」


 ならお言葉に甘えて、存分に踏んぞり返らせてもらおう。俺は胸を限界まで張り、高嶺さんの前で踏ん反り返る。


「……何してるの?」


「踏ん反り返ってるんです」


「アハハハハ、君、想像以上に面白いね」


 なぜか高嶺さんに受けたようである。俺は至って真面目なのだが……なぜだ!?


「って、そんなことを言いに来たわけじゃないのよ」


 しばらくクスクスと笑っていた高嶺さんはハッとしたように口に当てていた手を戻す。俺はすかさず、用件を訊ねる。


「それでは何の用で?」


 俺の問いにしばしの間、口籠もっていた高嶺さんだったが、少しして覚悟を決めたように表情を固める。


「率直に言うわ、女川透君。私と付き合ってくれないかしら?」


 なるほど、そう来ましたか……。


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