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13日の金曜日


 月曜日、俺は学校に登校していた。学生のみならず、会社に通うサラリーマンたちも総じて一週間の中で一番嫌いな曜日である。


 おそらく、好きな人なんているのだろうか? いや、いない(断言)!


 今朝も死んだ魚の目をしていたサラリーマン達が電車の中で揺られていた。その様はまさに半魚人のようだった。目撃したアナタはSANチェック(0/1D6)です。


 是非、サラリーマン達にはクトゥルフ神話の世界に転生してもらいたい。インスマスあたりがいいと思います。


 いや一部、目を輝かせていた若いサラリーマンもいたか。ピッチリしたスーツや新品同様のカバンを見るに、彼らは新卒サラリーマンなのだろう。


 1年後も彼らがその目を輝かせているか楽しみである。グヘヘへへ(暗黒微笑)


 そんな学生・社会人にとっての13日の金曜日(俺談)、月曜日に登校した俺だったのだが、やはり、13日の金曜日(月曜日)の名前は伊達ではない。登校したばかりだというのに、さっそく災難が降りかかる。


「とっ、透……。話したいことがあるから……その……今日の放課後、校舎裏に来て欲しい……」


 そんな事を恥ずかしげもなくクラスメートの前で言ってのけるのは、つい、このあいだ、スポーツ大会の帰り道で偶然にも再会した幼馴染、白雪真代であった。


 頬を染めているところを見るに、羞恥心を失くした訳ではないらしい。


 あれ、俺このあいだ、金輪際近づかないって言ったよな? なのに、なんで本人の方から来るんだ? ……さっぱり分からん。それに話ってなんなんだ?


 何度考えてもまったく答えの出ない難問に頭を悩ましていると、白雪は再度、口を開く。


「そっ、それじゃあ待ってるから!」


 そう言うと、白雪はそそくさと早足で1-A組の教室から出ていく。


 かくゆう俺はといえば、ただただ口を開けてポカーンとしているだけである。おっと、あんまり大きく口を開けちゃ、顎関節症になっちまうな。


 ただでさえ、(友達がいなくて)喋ることが少なく、食べる以外でほとんど使っていない顎なんだ。しっかりケアをしないと顎関節症、まっしぐらである。


 将来的な顎関節症の心配をしていると、既に教室の中にいた有馬が話しかけてくる。なんだ、いたのかお前。陽キャの癖に影が薄いやつだな。


「おい、透! さっきのどういうことなんだよ!? 1-C組、屈指の美少女、白雪真代さんがなんでお前みたいな変人に話しかけるんだ!?」


 有馬、失礼なことを言うやつである。俺がボッチなのは認めるが、俺は断じて変人ではない! ただ、友達がいないだけである。


 そこの所、間違ってもらっては困る。あっ、イマジナリーフレンドなら2桁いますよ。


「別に、ただの幼馴染だよ」


「ただの幼馴染が、あんなしおらしくお前に話しかけるか?」


「さぁな。有馬、お前の変態的な視線を感じ取って、引いてたんじゃないのか?」


「んなわけないだろ!?」


「ふっ、お前が気付いてないだけで、実は女子はお前の視線にドン引きしていたのさ……」


「えっ、嘘だろ? 龍二、そんな事ないよな!」


 俺の言葉を真に受け、有馬は近くにいた池谷君にことの真相を訊ねる。


「うっ、うーん。確かに、お前、たまに男の俺でも恐くなるような熱心な視線を女子に送ってるよなぁ。もしかしたら、それに女子が引いていた可能性はあるかも……」


「なん……だと!」


 うーむ。適当に言っただけなのだが、本当に女子に引かれていたらしい。有馬……可哀想なヤツ! ここはしっかり慰めてあげないとな。


 俺は床に突っ伏し、落ち込んでいる有馬の肩に手を置く。


「有馬……お前は微妙にイケメンよりの微妙イケメンなんだから、少しぐらいキモくても誰か付き合ってくれるさ!」


 慰めの言葉を聞いた有馬は、なぜか再度、突っ伏してしまうのだった。なぜだ? 慰めたはずなのに?


 教室は完全に収拾がつかなくなっていたが、その後、入ってきた白石先生の登場でなんとか落ち着くのだった。シラセン、マジパネエッス。




ーーーーーーーーーー




《白雪真代視点》


 やった! やった! やっと一歩進めた! あの時から1度として踏み出せなかった一歩を私はついに踏み出せたんだ!


 でも、これだけで満足するわけにはいかない……! 私はまだスタートラインにも立っていないのだから。


 透に私の思いを伝え、お互いの関係性がリセットされてから、初めて私の2度目の恋が始まるのだ。あの時みたいな真似は絶対しない。


 もう透の気持ちからも、自分の気持ちからも逃げ出さない。透が極端に人を遠ざける様になってしまったのは私にも原因があるのだから。私だけの所為で透が変わったわけではない。


 しかし、最初に口火を切ったのは自分なのだ。私がほんの少しでも自分の気持ちに、彼の気持ちに向き合ってさえいれば、透はあそこまで壊れなかった。


 もしかしたら、何も変わらないかもしれない。でも、もう放っておくわけにはいかないのだ。心の奥から湧き立つこの気持ちを。わたしの恋心を……!


 私は私の弱さに負けない。しっかりと透と向き合うのよ、白雪真代。もう、他人に自分の気持ちを委ねるのはやめなさい。自分が決めた気持ちに従いなさい。


「待ってて、透……」


 そうよ。こんなにも私は、今でも透のことが好きなのだから。


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