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03.婚約破棄と借金


あれからもう2年が経ちました。

そう、お姉様が駆け落ちし、私が“自分のために生きる”と決意した日から、ちょうど2年が経過したのです。


(……時が経つのは早いものね。しかし、私ももう15歳。貴族としてはもう成人になる年齢。でも、この家に成人式を挙げる余裕なんてあるのかしら?)


(ひとまず、この家の状況をまとめなければ。2年前にも、家の状況をまとめたことがあったはず……。ちょうど2年が経過したこの日に、今の状況を振り返ってみるのもいいかもしれない。)


私は、机の上に羽根筆と羊皮紙を取り出し、思考を整理しながら、今の状況を書き始めた。


――半刻後(30分後)――――


「ふぅ……ようやく書き終わったわ」


でも、羽根筆と羊皮紙の質が明らかに落ちている。筆の滑りが悪くて、書きにくくて仕方ない。


(まぁ、今の我が家じゃ、高級な文具なんて贅沢よね……)


それでも、2年前の予想がほとんど的中しているのには驚かされる。改めて書き上げた内容を確認することにした。


――――――――――――――――――――――――

【今の状況】

1.父の思惑の失敗

・お姉様、シルフィーは護衛騎士と駆け落ちし、いまだ行方不明。何の手がかりもなし。

・父は必死に「私をグレイソン侯爵家次期当主の婚約者に」と交渉を続けたが、結局失敗。婚約は破棄され、得られていた支援や契約、人脈も全て失った。


2.グレイソン侯爵家の激怒

・彼らは家の面子を潰されたと激怒し、あらゆる影響力を駆使して、我が家を徹底的に孤立させた。

・その結果、これまで親交があった貴族家や商人たちからも、突然の断り(契約や取引の終了)を受けるようになった。


3.社交界での孤立

・侯爵家の圧力によって、社交界でも我が家は完全に孤立。長く続いていた貴族社会でのつながりも、急速に途絶えていった。もはや貴族との婚姻は望めない。


4.増え続ける借金

・お姉様にかけた莫大な養育費、失った支援、破綻した取引で、我が家の借金は膨らむばかり。


――――――――――――――――――――――――


(何度確認しても、状況は変わらない……むしろ、悪化しているわね)


ふと、心の中で冷たい笑みが浮かぶ。


(今の状況を一言で表すなら、“絶望”……かしら。さすがの女神様も、慈悲をかけてはくれなかったみたいね。)


(この家は名ばかりの子爵家――資産を生む商売もなければ、特産品もなし。頼るものが最初からなかったのだから、今の結果は当然なのかもしれないわ)


ローデン家は代々芸術を生業としてきた家系。絵画や彫刻を作り、貴族や商人たちに高く評価されてきた。


(でも、今ではその誇りも失われてしまったわね。侯爵家の圧力で、親しかった貴族も商人も離れていった。材料を仕入れる取引も断たれて、商売は完全に停滞……)


(フフッ、“ニホン”の言葉で言うなら、“ハッポウフサガリ(八方塞がり)”ってところね)


家が裕福だったことなど一度もない。それなのに、父は姉シルフィーを溺愛し、途方もない額の養育費をかけた。それが家を(むしば)んだのだ。


(お姉様にかけられた養育費……あの数字、今思い出しても目眩がするわ)


「まさか【9億2,200モリン】もかけたなんて……」


先日、父が留守の間に側近に頼んで養育費の内訳を見せてもらったとき、私はその現実を初めて知った。


(それに、失った支援や破綻した取引、事業失敗を補うために、借金はどんどん増えていって……この2年間でさらに2億モリン。ユリの世界の言葉でいうと、“ヒノクルマ”といったところかしら)


「さて……そろそろお父様から例のお話が来る頃ね。」


楽しみだわ、と思いながら、私は微笑んで羊皮紙を眺めた。


――――――――――――――――――――――


子爵家の次女、エミリー。彼女は、まるで何もかも見通しているかのような冷静な表情で、状況を見つめ続けているのだった。


この国の通貨は“”モリン”で、価値は“”日本の円”と同等だと考えてくださって構いません。


この借金の額は随時変更になるかもしれません。ご容赦を……<(_ _*)>


次の話で、養育費の詳しい内容について描きます。


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