里帰りならぬ森帰り
「今日なにしよ…」
フレンド欄を見る。凪。誰もいねぇ。
『Fantasy war』は戦争ゲーなのでメインストーリーの類いはない。強いて言うなら自陣営のNPCとの絡みからストーリーを繰り広げていく感じだ。
今は運営が用意する大戦イベントの準備期間で、過疎ってるとまでは言わないが熱心に争いが起きるわけでもない。
あと何より人間には食事や睡眠が必要だ。俺はデバイスをいじってるから大丈夫だが、何時間もぶっ通しでログインしてると警告が出るらしい。
つまり、今フレンドが一人もいないのはなんらおかしいことではない。ないが、始めてからずっと誰かいる状態だったからなんとなく手持ち無沙汰な気分だ。
どうしよ…
暇潰しにステータスを眺めてたら、称号の欄が目に入った。
──────
約定の悪魔の子
──────
そうだ、マルファナに会いに行こう。
※ ※ ※
「てなわけで会いに来た」
「ここが何もなくとも帰れる巣になったのは嬉しいものじゃのう。お帰り、我が子よ」
「うん、ただいま」
手順通り歩みを進めれば森は簡単に俺を迎え入れてくれた。顔のように縦に裂けた穴が三つある木が実らせた果物を俺の前に落としてくれた。もてなしの心がある森だな。
「それに合う茶を淹れてやろう。ポポムの実なら酒のが合うんじゃがな」
「あ、手土産と言っちゃなんだが…はい、豚鬼の肉とそこの集落で造られた酒」
「カカッ、律儀な孝行息子じゃのう」
舌を弾けさせるような笑い声。喜んでもらえたようで何よりだ。
「さて、何か悩み事があるようじゃの?」
「分かるのか」
「愛しい子のことじゃ。分からぬ親などおるまいよ」
そう、今日なんとなくモチベが上がらなかったのはフレンドがいない以外にも理由がある。
「人間ブチ殺してぇんだけど、そこに首突っ込むにはレベル足んなくてさぁ」
俺がこの世界に来たのは人間と戦ってブチ殺して悦に浸るためだが、ヒューマニティと魔族の争いはどこであっても"ガチ"。上級者がひしめく魔境。初心者がお遊び気分で行ったら初日のようになるのがオチだ。
「場数を踏んでいけば自ずとレベルは上がる…と悠長な助言がほしいわけではなさそうじゃの」
「うん」
「ならばヒューマニティとしてヒトの国に行ってみたらどうじゃ?」
「そんなことできんの!?」
「認識阻害の仮面を使い、全身をローブで覆えば小柄な人間として扱われるじゃろ」
「認識阻害の仮面?そんなアイテム見たことねぇけど」
「希少な物じゃからのう。じゃが、儂を誰だと思っておる?万年を生きる悪魔じゃ。<約定>の対価として受け取ったものがここにある」
「マジか、くれ!!」
「カカカ、素直なのは汝の美徳じゃ。もちろん、我が子への援助は惜しまぬよ」
「ありがとう!!!」
「本当に良い子じゃのう。じゃが、その内の魂は誰より悪魔らしい…。クカカカカッ、きっと愉しいことになるぞ。約定の名の下に、【約束】しよう」
親に甘えるのに慣れてるガレットと最近できた息子が可愛くてしゃーないマルファナ




