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不良天使
少しの街灯が辺りを照らす夜半、一人の人間が歩いていた。
その人間に、おかしなところは全くない。
その、後ろにいるモノがおかしかった。
古代ギリシャのような装いをし、白銀の長髪を無造作に束ねたヒト型のナニカ。それを人間と言うことができないのは、純白の翼が背にあるためでもなく、宙に浮いているためでもなく、不釣り合いな禍々しい剣を手に持っているためでもなく──
──狂気に満ちた、邪悪で純粋な笑みのためだった。
「死にさらせぇええええええええッッ!!!」
清く美しい容貌にそぐわないドスの効いた声で人間に斬りかかる…が、その剣は空ぶった。
しかし、狙いを外したわけではない。むしろ、剣の軌跡は人間の中心をきれいに通った。
「だぁっ!!クッソ、これでもダメかよ!!?」
ならば、なぜその人間は無事なのか。その原因をそれは良く知っていた。
「もうマジで何だよ!!!!天使が人間攻撃できねぇクソ設定っっ!!!!!せっかく悪魔から魔剣調達してきたのに…!」
彼の名はフィガレット。天使一の変わり者であり──悪行に快楽を感じるクソ野郎である。