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再会

 合間合間で魔法やスクロール制作の練習をしつつナーダの森にまでやってきた。あ、ちなみに作ろうとしてるスクロールは鑑定のものだ。作れるようになったら便利だからってレイスが俺用に魔法陣を考えてくれた。

 ちなみにレイスの方はまだスクロールの作成に成功していないみたいだ。正確には簡単な物なら作れるけど、大規模な魔法のスクロールは作れてないってだけ。利き手じゃないのにあれだけ書けるなんて凄いよなあ。

 さて、次に向かうのはダンジョン街の一つ、フレイユールだけど……。


「心境ノ鏡館なあ……正直あまりいい思い出ないよな」

「そうですか? わたくしにとっては皆さんと出会えた思い出の地ですよ」

「突然出てきて倒れたから何かと思ったら腹空かせてたんだよな。オイラしっかり覚えてるぞ」

「うう、お恥ずかしい……」


 オリヴィエは両手で顔を覆った。耳が赤くなっている。あの時は平気そうだったのに……思い返すと恥ずかしかったんだな。彼女の感情がちゃんと動いてて良かった。

 どうやら自然に笑っていたらしい。オリヴィエはとても弱々しい声で「笑わないでください……」と呟いた。ごめんごめん。


「お、馬車だ」


 向こうから馬車が走ってくるのを見て、道の端に寄る。

 ん? あの御者、なんか見たことあるな。


「おや、追憶ノ探求者の皆さんじゃありませんか」


 馬車を停めた御者はにこやかに会釈した。

 一つにまとめられた薄紫の長い髪に、濃い紫の瞳。腰に巻かれた布は目を引く鮮やかな赤で、黄色く縁取りされた赤い腕章をつけている。

 名前はたしか……。


「久しぶりだな、オルグ」

「ふふ、名前を覚えていただけているとは。貴方がたの活躍は耳にしております。プリュームを救い、獣王国までも救ったそうですね? お仲間も増えたようで……いやはや、なんと素晴らしい戦闘力」

「あんまり褒めるなって、みんながいてくれたおかげだ」

「そう謙遜なさらずに。どうです、私と共にフォワクールへ行きませんか?」


 うーん、フォワクールかあ。寄る予定はないんだよなあ。


「悪いけど、用があるのはフレイユールなんだ。オルグはなんで獣王国に? 亜人保護課の仕事か?」

「ええ、そうですよ。保護を求める亜人の皆さんを迎えに行くところです」

「そうか、大変だな。ああ、それと……ちゃんと護衛は雇った方がいいぞ。なんだったら俺達が護衛につこうか? 途中までになるけどさ」

「ご忠告どうも。大丈夫ですよ、今回迎えに行くのは腕自慢の方々なんです」


 んー、なら大丈夫……なのか? さすがに同じやらかしをするバカじゃないだろうし大丈夫か。


「それでは、私はこれで。またお会いしましょう」

「おう、またな」


 去っていく馬車の背を見送る。結構な頻度でピュルテ皇国とソシエゴ獣王国を往復してるんだろうか。大変そうだな、あの人。

 そういえば、あの時出会った白ヤギの獣人……テルヌーラは元気にしているだろうか? 皇都フォワクールでいろいろ学びたいって言ってたな。随分とおっとりしてる感じのやつだったけど、上手くやれてるといいな。

 さてと、改めて進むか。あ、そうだ。せっかくだからあの場所に寄って行こう。獣王国が魔物に襲われた時、大量の魔物がこの森を通ったんだろうし……心配なんだよな。

 道を逸れ、記憶を頼りに森の中を進んでいく。


「あの、どこに行くのですか?」

「墓参り、かな」

「お墓……ですか?」


 暫くして開けた場所に出る。相変わらずの何もない風景……かと思ったら、あちこちから緑が顔を覗かせていた。


「あっ、みんなで蒔いた種! 芽が出てるよ!」

「ほんとだ! おっきく育てよ〜」


 リーファとケイトがしゃがみこんだ。指先でそっと双葉に触れている。中には結構育ってるのもあるなあ。開けてるおかげで日当たりもいいし、植物にとってはいい土地なんだろう。きっと。


「オリヴィエとレイスは知らないよな。ここは……ケイトのお姉さんと……いろんな人が眠ってる場所なんだ」

「今はないけどね、前はおっきなテントがあったんだよ。赤と白の!」

「ダンジョンみたいになってたんだぞ」

「そうなのですか……」


 話を聞いたオリヴィエは目を閉じると祈りを捧げ始めた。俺達もそれに倣って目を閉じる。

 ここが無事で良かったよ。本当に。


「姉ちゃん、それにマオ。オイラ達、行ってくるからな」


 ぽつりと呟いたケイトは笑顔で振り返ると、両腕を頭の後ろで組んだ。


「さ、行こうぜ」

「ああ」


 再び森の中を歩いていく。その道中、ずっと考え事をしているらしかったレイスが口を開いた。


「今の場所……ダンジョンのようなテントがあったと言っていたな」

「ああ。本当にダンジョンみたいでさ……外からも中からも、入り口の向こうが見えなかったんだ」

「……一度、新規でダンジョンが生み出された事例を見たことがある。古い文献だがな」


 ってことは、あれって結構レアな現象なのか?


「それらは本当にダンジョンだったのでしょうか? ダンジョンを作れるのは大賢者様だけのはずです」

「……赤い衣を着た、奇抜な髪色の男。その文献に記述されている、重要と思われる人物だ。まるで大賢者だとは思わないか」

「それは……いえ、でも……」


 オリヴィエは難しい顔をして黙り込んだ。

 にしても大賢者かあ。赤い衣に奇抜な髪……赤? あ、そういえば。


「ココ……テントの主も言ってたな。赤い人が色々と教えてくれたって」

「言ってたぞ! なあ、もしかしてその赤い人っていうのが大賢者なのか?」

「いやあ、さすがにないんじゃないか? だって大賢者って大昔の人なんだろ?」

「……いずれにせよ、頭の片隅には置いておくといいだろう。ダンジョンのようなものを生み出す存在など、明らかに異質だ」


 たしかに、それはそうだ。実際、あのサーカスだって迷い込んだ人間を殺して仲間にしていたわけだからな。

 お、そろそろ森を抜けそうだ。空は赤くなってきたけど……野営は森を抜けてからにしよう。

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