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 孤児院にたどり着いた時には、オーガが金棒を振り下ろそうとする所だった。抱えていたレイスを下ろし、更に足へ魔力を込める。

 腰に下げた短剣を抜き、魔力を注ぎ込む。光を放つ刃を、オーガの背中に突き刺した。

 そのまま力を込め、横へと切り裂く。ズシンと音を立てて崩れた巨体の向こう、タンドレーを抱きしめるオリヴィエの姿があった。

 ……二人とも、生きてるな。タンドレーは意識を失っているようだし、オリヴィエもかなり限界だったみたいだけど。


「遅れてごめん、オリヴィエ」


 ああ……間に合って良かった。もう少し遅れていたらと思うと気が気じゃない。

 さて、ここからは後片付けの時間だ。

 隣に並びたったみんなと共に武器を構える。


「覚悟しろよ」


 レイスが杖を振れば風の刃が魔物を切り裂き、リーファの炎の鞭が残った魔物を焼き払う。バタリバタリと倒れていく中、それでも残った魔物は俺が一体ずつ討ち取っていった。

 ケイトはオリヴィエとタンドレーにポーションを飲ませに行っている。あれで二人はある程度回復することだろう。

 数ばかりは多い魔物だが、こっちには広範囲に攻撃できる魔法使いが二人もいるんだ。一匹たりとも逃しはしない。


「これで終わりだッ!!」


 最後の一体の頭を矢が貫く。地面に伏したコボルトがぴくりとも動かなくなったのを確認してから弓を下ろした。

 よし、これで魔物は片付いた。問題はあの二人だ。オリヴィエとタンドレーの元へ急いで駆け寄る。


「オリヴィエ! 大丈夫か!?」

「は、はい。皆さんのおかげで……彼も、無事です」


 頷いたオリヴィエの腕の中で、タンドレーがぐったりとしていた。意識は失っているようだけど、怪我はポーションで治すことができたらしい。

 ああ……よかったあ。これでみんな無事だな? 無事なんだよな?


「孤児院の中に戻ろう。みんな心配してるだろうし」

「はい。えっと……その……」


 オリヴィエは眉を下げると、くしゃりと不器用な笑顔を浮かべた。


「すみません、中まで運んでくださいませんか? まだ立つのも難しくて……」

「ああ、もちろん。タンドレーは俺が連れていくよ。えっと、オリヴィエの方は……」


 みんなの方を見ると、リーファが「はいっ!」と手を挙げた。


「アタシが連れていくね! オリヴィエさん、掴まったら立てそう?」

「ええ、それならなんとか……」

「肩を貸すから、一緒にゆっくり行こうね」


 オリヴィエに近づいた彼女は、杖を背負って手を差し伸べた。手を掴んで立ち上がったオリヴィエは、彼女の肩に腕を回してゆっくりと歩いていく。

 俺もタンドレーを抱き上げ……おっと、中々に重たいな。身体強化っと。

 レイスは辺りを見回すと、杖を持って反対方向に歩き始めた。


「残党がいないか確認しておこう」

「ありがとう、レイス。頼むよ」


 確認か……どうするんだろう。探知魔法とか使えるのかな。

 孤児院の中に入ると、ワッと子供達が集まってきた。窓から様子を見ていたのだろう。みんなぐすぐすと泣きながらオリヴィエとタンドレーの元にやってきた。


「オリヴィエ姉ちゃん、よかったあああ!!」

「パパは? パパは大丈夫なの!?」

「大丈夫だよ、みんな。オリヴィエもタンドレーも疲れてるから、寝かせてあげないといけないんだ。心配なのは分かるけど、道を開けてくれるかな?」


 子供達は聞き分けよく、サッと道を開けた。目元を拭い、ズビズビと鼻水をすすりながら二人を見送る。

 二人の部屋……は、分からないな。案内してもらってもいいけど、様子は見ていたいからリビングに設置されてる簡易ベッドに寝てもらおう。

 この簡易ベッド、椅子とクッションで作っているらしい。普通のベッドと比べると寝心地は良くないだろうけど、そこは少し我慢してもらうとして。

 そっとタンドレーをベッドに寝かせ、オリヴィエにも横になってもらう。


「ふう、これでひとまずは安心だな。今、レイスが残党がいないか確認してくれてるから報告を待とう」

「はい。本当に……ありがとうございました。皆さんがいなければ、きっとわたくしもタンドレーも……そして避難していた皆さんも無事では済まなかったでしょう」

「こっちこそ、もっと早く到着していればタンドレーが怪我をすることも、オリヴィエがそんなに消耗することもなかったんだ。ごめんな」


 オリヴィエはゆっくりと首を横に振る。その口元には穏やかな笑みが乗せられていた。


「そんな、謝らないでください。わたくし達は皆さんに感謝しているのですから」

「そう、か。オリヴィエも、よく頑張ったな。持ち堪えてくれてありがとう」

「……はい」


 オリヴィエは目を閉じる。疲れが出たのだろう、ゆっくり休んでほしいところだ。


「オイラ、料理作ってくるよ。目が覚めたら、きっとお腹すいてるだろうから」

「わかった。俺とリーファで二人と子供達を見ておくよ」

「いつも通りのとびきり美味しい料理を作ってあげてね、ケイトちゃん」

「ああ、任せろっ」


 二人を起こさないように小声で、でもやる気満々に応えたケイトはキッチンへと向かった。

 落ち着いたら町中に転がってる魔物の死体も処理しないとな。まだまだやることはたくさんだ。

 でも、今ばかりは取り戻した安寧を味わおう。眠る二人の顔は、とても安らかだった。

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